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転送義務違反での請求額全部認容判例紹介-判決理由2

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平成24年10月 4日:初稿
○「転送義務違反での請求額全部認容判例紹介-判決理由1」の続きです。

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第二 被告病院での診療経過について 
 請求原因一、同二(2)(3)の事実は当事者間に争いがなく、その争いがない事実、前記認定事実、《証拠省略》によれば、次の事実が認められる。 

 被告病院には、PCIをするための医療設備及び医療スタッフが存在しないから、被告病院においてPCIが必要とされれば、近隣の専門病院に転送することになるが、そのような病院として、高砂市民病院、神鋼加古川病院及び姫路循環器センターがあった。救急搬送により、患者が被告病院から、高砂市民病院又は神鋼加古川病院のCCUに運び込まれるまでに要する時間は、20分程度である。 

 A医師(昭和○年《省略》生)は、平成10年3月、a大学医学部を卒業後、同大学病院で研修するなどした後、平成13年6月から1年間、被告病院の内科に常勤として勤めたことがある。A医師は、消化器内科を専門としている。A医師は、その後a大学医学部大学院に在籍していたが、平成15年3月30日は、臨時に(いわゆるアルバイトとして)被告病院の日曜日の日直医(9時から17時まで)として勤務した。 

 被告病院の前夜の当直医は、平成15年3月30日1時30分に来院した患者を心筋梗塞であると疑い、神鋼加古川病院に転送要請したが、神鋼加古川病院は、知らされた症状や所見からは、その患者が心筋梗塞であるとは認めず、受入れを断った。 

 この患者には、心電図上「Ⅱ、Ⅲ、aVf」での軽度のST波上昇がみられたものの、心筋梗塞に典型的な心電図所見はみられなかった。また、この患者は、呼吸困難を訴えていたが、持続的で強い胸痛という心筋梗塞に典型的な症状を訴えていたのでもなかった。同当直医は、同患者に対し、ミリスロールの点滴を続けたが、呼吸困難の症状は改善されず、結局、同日4時30分ころ、姫路循環器センターに転送要請して了承を得、同患者を救急車により搬送した。 

 平成15年3月30日の被告病院の日直医は四名であり、うち内科担当はA医師だけであり、内科の外来担当の看護師は2名であった。
 A医師は、同日、内科における約100名の入院患者と緊急外来患者の診療を担当しており、多忙であった。 

 Bは、平成15年3月30日11時30分ころ、急性心筋梗塞を発症し、自宅二階居室において、胸に手を当てて息苦しそうにしていた。原告X1は、その様子をみて被告病院に電話をし、Bの症状を伝えたところ、電話に応対した看護師から、すぐに連れてくるよう言われたため、直ちにBを車に乗せて被告病院に連れていき、Bは、12時15分ころ、被告病院に到着した。 

 Bは、被告病院において諸検査を受け、血圧が142/110、脈拍64で不整脈はなし、体温は34・7度との結果が得られた。 
 その後、12時30分ころまでに心電図検査(5~6分位)がされ、Bについては、心電図上「Ⅱ、Ⅲ、aVf」にST波の上昇が見られた。また、そのころ、A医師は、Bを問診し、11時30分ころから胸部の圧迫痛を感じ始め、それが持続しているとの説明を聞き、12時39分、血液検査の指示を出した。A医師は、Bが心筋梗塞であると判断したが、直ちに上記一の3病院のひとつにBを転送するための行動は何らとらず、12時45分ころ、ソリタT3500ミリリットルを右前腕部に点滴をして静脈路を確保し、13時03分には、前夜の当直医と同様、ミリスロールの点滴を開始した。このとき、Bの血圧は150/96で、胸部圧迫痛は持続していた。 

 A医師は、13時10分を過ぎたころ、既に指示していた血液検査とは別に、自ら簡易の血液検査であるトロポニン検査を実施したところ、心筋梗塞陰性との結果を得た。13時40分には、指示していた血液検査の結果が出て、それも心筋梗塞陰性であった。A医師は、ミリスロールの点滴の実施にもかかわらず、心筋梗塞の症状が軽減しないことから、PCIが可能な専門病院にBを転送することにし、13時50分ころ、高砂市民病院に転送要請をした。 

 高砂市民病院は、14時15分ころ、被告病院に転送の受入れを了承する旨伝え、被告病院は、14時21分、救急車の出動を要請し、救急車は14時25分、被告病院に到着した。 

 救急隊員が到着した時点で、Bは、内科処置室内の被告病院のストレッチャーの上で横になって点滴を受けており、意識は清明であった。救急隊員は直ちにBを救急車のストレッチャーに移そうとしたが、移す直前に容態が急変し、意識喪失状態となって呼吸が不安定となり、ストレッチャーに移された直後、除脳硬直(いわゆる「えび反り」となる全身の硬直)がみられた。 

 救急車のストレッチャーに移し替えようとした時点では、Bにモニターは装着されていなかったし、容態急変の直後にもモニターは装着されていない。 

一〇 A医師は、Bの容態をみて、脳梗塞を合併したと疑い、救急隊にCT室に運ぶよう指示したが(理由は不明である)
、CT室に着く前にBの自発呼吸まで消失してしまい、蘇生術を行うためBを処置室に戻した。そして、A医師は、14時47分、蘇生のためエピネフリン(エピクイック)を投与し、援助を求められたC医師が14時48分、気管挿管をした。その後、Bは、蘇生のための措置としてエピネフリン、ドブトレックス及びプレドパの投薬を受けるなどしたが、15時36分、死亡が確認された。死亡までの間、除細動器による電気的除細動は一度も行われていない。 

第三 モニター装着の有無について 
 被告は、A医師はB問診後、継続的なモニタリングをしていたと主張し、A医師の証言(陳述書によるものも含む。以下も同じ。)、診療録の記述及び診療報酬請求書にも、その主張に沿う部分がある。 

 しかしながら、上記診療報酬請求書の記載によると、3時間21分モニター(呼吸心拍監視装置)を装着していたこととなっているが、これはBの来院時間(12時15分)から死亡時間(15時36分)までの時間すべてに相当するものであって、実際に装着していた時間を記録したものとは考えにくく、後になって、来院した時刻と死亡した時刻をもとに算定した時間を記録したものとみられ、その間継続的にモニター装着がされていたとの事実を裏付ける証拠としての証明力は低いものといわざるを得ない。 

 また、診療録の記録をみても、A医師が行った処置やBの容態を記載した部分には、モニターを装着したことやモニターから得られた結果は記載されていない。診療録には、A医師がBの死亡後、家族に対し、モニターを装着していたが安定状態であった旨の説明をしたとの記載があるだけで、モニター装着の有無及び時間を直接示す書証は見当たらない。 

 さらに、本当に継続的にモニタリングがされていたなら、容態急変時にモニターを再装着することは極めて簡単な作業であったと思われるし、急性心筋梗塞の患者が突然意識を失う場合、心室細動がもっとも疑われるのであるから、心室細動の有無を確かめるためにもモニター再装着は不可欠であったと思われる。 

 ところが、本件では、モニターの再装着は一度も行われていないのであって、この点からも継続的なモニタリングがされていたという点には疑問が生じるところである。 

 こうしてみると、証拠によって、いつからいつまでモニター装着がされていたのかを認定することは困難であって、前記認定の事実経過では、その点の事実を認定していない。
 

以上:3,132文字

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