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転送義務違反での請求額全部認容判例紹介-過失等

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平成24年10月 3日:初稿
○急性心筋梗塞の患者が転送措置の途中で心室細動により死亡した場合,転送措置の開始が約70分遅延したとして転送義務違反の責任が認められ、死亡による損害約4000万円の賠償請求が、請求額全部が認容された珍しい事案を紹介します。平成19年4月10日神戸地裁判決(判タ1295号295頁、判時2031号92頁)です。

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主文
一 被告は、原告X1に対し、1954万6219円及びこれに対する平成15年3月30日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告X2に対し、651万5406円及びこれに対する平成15年3月30日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
三 被告は、原告X3に対し、651万5406円円及びこれに対する平成15年3月30日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
四 被告は、原告X4に対し、651万5406円円及びこれに対する平成15年3月30日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
五 訴訟費用は、被告の負担とする。
六 この判決は、主文一ないし四項に限り、仮に執行することができる。

事実
第一 当事者の求める裁判

一 請求の趣旨
主文と同旨

二 請求の趣旨に対する答弁
(1)原告らの請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は、原告らの負担とする。

第二 当事者の主張
【請求原因】
一 当事者等

(1)被告は、《住所省略》において、加古川市民病院を開設している(以下、同病院を「被告病院」という。)。
 被告病院には、経皮的冠動脈再建術(カテーテルにより冠動脈に必要な処置を行う手術。以下「PCI」という。また、PCIなどの冠動脈疾患に対する治療を行うための集中治療室を「CCU」という。)をするための医療設備及び医療スタッフが存在せず、PCIを実施することはできない。

 A医師(以下「A医師」という。)は、平成15年3月30日(日曜日)当時、被告病院に常勤する医師ではなかったが、同日、被告病院の日直勤務に当たっていた。

(2)B(以下「B」という。)は、昭和13年《省略》生まれの男性であるが、後記の医療事故により、平成15年3月30日、満64歳で死亡した。Bは、平成6年2月から、軽度の肝機能障害、痛風、高脂血症及び糖尿病などの診療のため、半年に一回程度、被告病院に通院し、いわゆる「かかりつけ医」として利用していた。

(3)原告X1(以下「原告X1」という。)はBの妻であり、原告X2、原告X3及び原告X4は、いずれもBと原告X1の子である。

二 医療事故の発生
(1)Bは、平成15年3月30日12時ころ(以下の時刻の表記はすべて午前午後を通じた24時間方式である。)、自宅二階居室において、胸に手を当て息苦しそうにし、顔色は悪く冷汗をかき、嘔吐の症状を示していた。原告X1は、その様子をみて被告病院に電話をし、Bの症状を伝えたところ、電話に応対した看護師は「心筋梗塞と思われるので、すぐに来るように」と指示した。
 原告X1は、直ちにBを車に乗せて被告病院に連れていき、Bは、12時15分ころ、車を降りて被告病院の玄関から診察室まで歩いていった。

(2)A医師は、Bを診察し、心電図をみて「Ⅱ、Ⅲ、aVf」にST波上昇がみられることを認め、急性心筋梗塞を強く疑った。そして、採血オーダーを出し、12時45分、ソリタT3500ミリリットルを右前腕部に点滴して静脈路を確保し、13時03分、ミリスロール(ニトログリセリンであり、血管拡張薬である。)の点滴を開始した。
 その後、A医師は、高砂市民病院に転送することを決定し、13時50分、同病院に転送の受入れを要請した。被告病院は、14時15分ころ、高砂市民病院から受入れを了承する旨の連絡を受け、14時21分、救急車の出動を要請し、救急車は14時25分に被告病院に到着した。

(3)Bは、14時30分、救急隊によってストレッチャーに移されようとしたとき、容態が悪化し、心停止に陥り、15時36分、死亡が確認された(以下、診察開始からB死亡までの出来事を「本件事故」という。)。

(4)Bは、急性心筋梗塞発症後、心室期外収縮を発症し、これが引き金となって、心室細動を発症し、これを直接の原因として死亡したものである。

三 被告病院の過失
(1)転送義務の懈怠

 急性心筋梗塞は、突然死に至る危険性がある疾患であって、最善の治療法は、PCIであり、これは早期に行えば行うほど救命可能性が高い。そこで、医師は、患者が急性心筋梗塞を発症していると診断した場合には、速やかにPCIを実施する手配をしなければならず、自らの病院でPCIを実施することができない場合には、直ちにPCIの実施が可能な医療機関(以下「専門病院」という。)に転送しなければならない。

 A医師が心電図検査の結果を得たのは12時35分ころであり、そのとき、Bが急性心筋梗塞であると診断し、直ちに近隣の専門病院である高砂市民病院又は神鋼加古川病院に転送すべき義務があった(以下、心筋梗塞患者を専門病院に転送すべく行動する義務を総称して「転送義務」という。)。

 ところが、A医師は、13時50分になって、ようやく高砂市民病院に転送の受入れを要請したにすぎず、しかも、その後の転送の手配も極めて緩慢であったため、14時25分に救急車が到着するに至ったのであって、A医師には、転送義務を怠った過失がある。

(2)不整脈管理義務の懈怠

 急性心筋梗塞を発症した患者は、合併症として、心室性期外収縮及びこれが引き金となって起こる心室細動を発症し死に至る危険があるから、担当医師は、この危険に対処するため、心電図モニター(以下、単に「モニター」という。)による持続的な不整脈監視(以下、単に「モニタリング」という。)又はCCUに準じた看護師による持続的な血行動態の監視をし、心室期外収縮が発生すれば、心室細動の誘発予防として抗不整脈薬(リドカイン)を静注しなければならず、心室細動が生じるに至った場合には、直ちにそれを除去するため、電気的除細動をしなければならない。

 そして、心筋梗塞患者は、いつ致死的不整脈が起きてもおかしくないから、患者をストレッチャーに乗せて移動したり、救急隊のストレッチャーに移し替えるときでも、とぎれなく監視をしておく必要がある。
 A医師は、上記のとおりの不整脈管理義務を負っていたが、モニタリングをせず、そのために心室期外収縮の発生を見落としただけでなく、心室細動の予防のための抗不整脈薬の投与などの処置をせず、Bが14時30分に心室細動に陥ったときには、その診断ができず電気的除細動をすることもなかったのであって、不整脈管理義務を怠った過失がある。


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