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転送義務に関する平成13年10月16日東京高裁判決紹介2

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平成24年 4月23日:初稿
○「転送義務に関する平成13年10月16日東京高裁判決紹介1」を続けます。

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3 救命の可能性について
(1)転院の可能性について

 一審被告は、転院先として附属病院を選択したのであるが、証拠(乙24、25の〈1〉、〈2〉)によれば、附属病院においては、平成3年11月27日、28日、29日、30日当時、緊急入院を受け入れることも緊急手術を行うこともできなかったことが認められる。しかし、証拠(乙21の〈1〉~〈4〉)によれば、Yメディカルセンター病院(以下「メディカルセンター」という。)においては、当時、緊急入院を受け入れ緊急手術を行うことが可能であったことが認められ、実際にも、11月30日にEが脳ヘルニアを起こして心停止・呼吸停止となった後、直ちにメディカルセンターへの転送がされていることからすると、平成3年11月27日当時、一審被告において、転院が緊急を要すると判断していれば、附属病院以外の腫瘍摘出手術のできる病院への転送は可能であったということができる。

(2)転院先における緊急手術実施の可能性について
 J証言によれば、メディカルセンターにおいては、受け入れ後1、2日のうちに手術前の諸検査を経て腫瘍摘出手術を実施することが可能であったことが認められる。

(3)腫瘍摘出手術について
ア 腫瘍摘出手術の困難性について

 G意見書、J証言、F証言及びI鑑定によれば、Eの病態についての最終的な最善の治療法は腫瘍全摘出手術であるが、Eの脳腫瘍は脳幹に近い部位に存在する巨大な腫瘍で、腫瘍内部及び表面には脳幹部に繋がっていると考えられる豊富な血管があるため、その摘出手術に際しては、脳神経、脳幹部や主要な血管を損傷しないように細心の注意を払う必要があり、長時間を要し、しかも、腫瘍摘出のみならず右小脳半球の約3分の1以上の切除(内減圧)を併せて行わないと手術の目的を達成できないため、仮に脳内圧のコントロールにより脳ヘルニアの急変が起こらないうちに腫瘍全摘出手術を実施し得たとしても、これによりEを救命し得る可能性は低いこと、他方、脳内圧のコントロールにより脳ヘルニアの急変が起こらないうちに腫瘍摘出手術を実施することができれば、一部摘出にとどめた場合を含め、いわゆる延命を図れる相当程度の可能性はあったことが認められる。

 なお、上記証拠及び証人Kの証言によれば、本件では組織学的検査は行われなかったため、Eの腫瘍がいわゆる悪性か良性かの正確な判定はできないが、実際にEの診察又は手術を担当した一審被告、当直のK医師、J医師ら及びG意見書は、良性の腫瘍であった可能性が高いと判断している(一審被告は、本件訴訟においては悪性腫瘍であると主張しているが、診察時においては、良性であるとの判断をしていたことは明らかである。)のに対し、F意見書及びI鑑定は悪性の腫瘍であった可能性が高いと判断していること、仮に良性の腫瘍であった場合には、脳内圧のコントロールにより脳ヘルニアの急変が起こらないようにしたうえ、摘出手術を実施し、腫瘍を全部摘出することができれば、原則として再発を防ぐことができるのに対し、悪性の場合には、再発を防ぐことは困難であるため、同様に摘出手術を実施するものの一部摘出にとどめ、腫瘍の量を減らすことによって、他の症状を防ぎ、放射線治療を併用するなどして、いわゆる延命を図るという余地もあったことが認められる。

イ 脳内圧のコントロールにより脳ヘルニアの急変を防ぎながら腫瘍摘出手術を実施し得た可能性について
 Eは、グリセオールの投与にもかかわらず、脳内圧の亢進により3日のうちに脳ヘルニアを起こしている。したがって、他の方法により脳内圧をコントロールし、脳ヘルニアの急変が起こらないようにして、腫瘍摘出手術を実施し得たか否かが問題となる。
 F意見書、G意見書、J証言、F証言及びI鑑定書によれば、Eが平成3年11月27日の時点で緊急検査及びこれに引き続く緊急腫瘍摘出手術を行うことができる病院に転入院していれば、同病院において、腫瘍摘出のための開頭手術前に脳室ドレーンを脳室内に挿入し、上向性脳ヘルニアが起きないように、排出する髄液を微妙にコントロールしながら脳内圧を下げ(脳室ドレナージ)、緊急腫瘍摘出手術を実施できた可能性があること、しかし、この脳室ドレナージを行う場合には、脳室ドレナージ自体によって上向性脳ヘルニアが起こる危険性が高いため、細心の注意が必要であることが認められる。
 上記認定事実によれば、脳内圧のコントロールにより脳ヘルニアの急変を防ぎながら腫瘍摘出手術を実施し得た可能性を否定できないものの、その可能性は高いとはいえない。

(4)一審被告の過失とEの死亡との間の相当因果関係の有無
 前記(3) の腫瘍摘出手術の困難性及び脳内圧のコントロールにより脳ヘルニアの急変を防ぎながら腫瘍摘出手術を実施し得た可能性が高くないことからすると、脳ヘルニアを起こす危険性についての判断に関する一審被告の前記2の過失がなく、Eが平成3年11月27日の時点で直ちに腫瘍摘出手術を行うことができる病院に転送されたとしても、同病院において、脳室ドレナージによって脳内圧を適切にコントロールして脳ヘルニアの急変を防ぎながら腫瘍摘出手術を実施してこれを成功させ、Eを救命し得た高度の蓋然性は認めることはできないというべきである。したがって、一審被告の前記2の過失とEの死亡との間に相当因果関係の存在を認めることはできない。

(5)延命の可能性について
 しかしながら、前記(1) 、(2) 、(3) の検討結果によれば、一審被告の前記2の過失がなく、Eが平成3年11月27日の時点で直ちに腫瘍摘出手術を行うことができる病院に転送されていれば、同病院において、脳室ドレナージによって脳内圧を適切にコントロールして脳ヘルニアの急変を防ぎながら腫瘍の一部摘出手術を実施し、Eの延命を図り得た相当程度の可能性はあったというべきである。
以上:2,504文字

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