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無断録音された録音テープの証拠能力-緩やかな判例紹介1

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平成24年 3月11日(日):初稿
○「無断録音された録音テープの証拠能力-厳しい判例紹介」で昭和46年11月8日大分地裁判決(判時656号82頁)全文を紹介しました。今回は、昭和52年7月15日東京高裁判決(判例時報867号60頁、判タ362号241頁)全文を2回に分けて紹介します。
事案概要は、各種の宣伝広告を目的とする株式会社X(原告・控訴人)が、テレビ映画の製作を企画し、これを有力スポンサーに持込んで映画を製作・放映させてその取扱手数料等を得る目的で、医薬品製造販売等を目的とする株式会社Y(被告・被控訴人)にテレビ映画の製作放映に関する契約を成立させたいと積極的に働らきかけたが、その後Xは、Yとの間で右放映契約が成立したにもかかわらず、Yが右放送契約上の債務を履行しなかったとし、それにより生じた損害の賠償を請求したものです。

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主文
   本件控訴を棄却する。
   控訴人の当審で拡張した請求を棄却する。
   控訴費用は控訴人の負担とする。 
 
事実《省略》 
 
理由
一 被控訴人が医薬品の製造販売等を目的とする株式会社であること、訴外Bが被控訴会社宣伝課広告係長であつたこと、は当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、控訴人は各種の宣伝広告を目的とする株式会社である事実が認められ、これに反する証拠はない。

二 そこで、控訴人と被控訴人との間で、「自由化旋風」と題するテレビ映画を控訴人主張のような内容で製作放映する旨の契約が成立したかどうかについて検討することとする。

(一)〈証拠〉を総合すると、次の事実を認めることができる。すなわち
1 控訴会社代表者Aは、昭和37年ころからシナリオライターをする傍ら広告宣伝等の仕事をはじめ、昭和39年1月ころ控訴会社を設立してその代表者となり、数名の社員とともに広告宣伝関係の業務に従事していたこと

2 右Aは、昭和40年4月ころから「自由化旋風」なる題名でテレビ映画の製作を企画し、これを有力スポンサーに持込んで映画製作のうえ放映させてその仲介手数料等を得ようと考え、自らその台本執筆にとりかかると共に、訴外日野自動車株式会社、同東洋工業株式会社、同日本ハム株式会社等に相次いで右企画を持ち込み、その採用方を申入れていたがいずれも思わしく進展しないため、同年8月ころ被控訴会社宣伝課広告係長であつた訴外Bのもとにも右企画を持ち込み、被控訴会社においてこれを採用してくれるように申込み、そのころまでに出来上がつていた「自由化旋風」なるテレビドラマ数話分のシナリオ原稿を渡してその検討方を申入れたこと

3 そして、右Aは、このように主要スポンサーを探がす努力を重ねる一方、これが採用される場合を予想してそのころ訴外日本テレビ株式会社に右企画の大要を話して放映の可能性を打診したところ、同訴外会社の営業担当者である訴外Cからスポンサーがつけば放映時間帯のやりくりは可能であるとの回答を得られたので、さらに訴外日活株式会社テレビ映画製作課長である訴外Dや同訴外会社テレビ企画営業課長の訴外Eらにも接触して右企画によるテレビ映画の主役に長門裕之らを宛て、製作費を一話130万円で製作したい旨の希望を申出、同訴外会社においても製作を実施するときには引受けても良いとの方針であつたこと、

4 被控訴会社のBは、右Aからの申出に基づき一応シナリオ原稿の検討を約しておいたところ、その後再三にわたつてAから採否の回答を求められたが確答せず、また右映画の主役として前記長門裕之を起用し得るとの申出があつたが、被控訴会社としてはコマーシヤルタレントとして右長門を使い得るのであれば好都合である旨をAに伝え、さらにAがあくまで「自由化旋風」の企画を採用することに固執していたので、一話分程度のパイロツトフイルムを製作して試写を見せて貰えれば採否が決定できる旨を申入れておいたこと、

5 しかしAはその後も被控訴会社の右Bとの間で執拗に接触をつづけるとともに、放映等の契約を成立させるためには広告代理店による媒介を必要とするため、広告代理業を営む訴外第一インターナシヨナル広告株式会社に右企画を持ち込み、同訴外会社営業課長Fらにも協力させ、同訴外会社に企画書の作成を依頼して右Fらをも交えてさらに被控訴会社に右企画の採用方の促進を図り、また前記日活株式会社との間でも製作の具体化をすすめようとし、一方Bは、昭和40年9月ころから翌41年8月ころまでの間に、Aと共に来訪した第一インターナシヨナル広告株式会社、日活株式会社大映株式会社等の担当者に応接し、或いは本件テレビ映画製作に関する打合会に出席するなどしたが、これらはいずれも被控訴会社との間の右テレビ映画放映契約を成立させたいと積極的に働らきかけてくるAに求められ、右契約申込を承諾するかどうかについて未だ上司の決裁を得ないで行つていたものに過ぎないものであり、結局Bとしては、被控訴会社の企画採用に関する明確な回答をしないままであつたこと
 以上の各事実が認められる。

(二)〈証拠〉を総合すると次の事実を認めることができる。すなわち
1 テレビ電波を利用して行う広告放送は、広告依頼者であるスポンサーと、放送機関であるテレビ局との間に広告代理店が介在し、その媒介によつて成立する広告放送契約に基づいて行われるのを例としており、その方法は、通常、テレビ局において番組を企画製作したうえ広告代理店を通じてスポンサーを探がし、その媒介のもとに一定の放送料金(電波料、ネツト料、製作費等)で特定の時間に放映することを約して行われる場合と、広告代理店において番組を企画立案したうえでスポンサーに売込み特定の時間を希望してテレビ局に申込み、電波料、ネツト料等の放送料金の支払いを約して行われる場合(いわゆる持込み企画、或いは買取り番組)とに大別されるが、いずれの場合にあつてもテレビ局とスポンサー、或いは広告代理店間において、右放送契約の成立を証する契約書等の書面を作成することはしないままに放送されることが通例であること、

2 このように、広告放送契約において契約書等の契約成立を証する書面を作成しないのは、テレビ局等の放送機関は、その公共的性格から広告よりも報道に関する編成権が優先し、特定の時間を特定スポンサーが買い切るような形式をとると、突発的なニユース放送等の報道ができなくなるおそれの生ずることを慮り、相互の当事者間の高度の信頼関係に依存して放送を行うとの慣行によるものであると共に、放送番組の視聴率等による変更(予定より長期間放送し或いは短期間で放送を中止する等。)に対する配慮からであること、

3 広告代理店の企画立案にかかる持込み企画にあつては、広告代理店において予めテレビ局に特定の時間帯の買取りを申込みその了承を得たうえ、製作者を選定し、その間で製作番組の上映権・販売権・リピート権・興業権・外国販売権・商品化権・出版権・音楽権・原作権・著作権・脚本権・監督権等の主要な権利の帰属者を定めて製作を依頼し、同番組のスポンサーを探して売り込みを行つてはじめて広告放送契約締結の運びとなること、

4 広告代理店がスポンサーとテレビ局を媒介して広告放送契約を成立させる際には、一般に放送料金が高額であるうえ、前記のように書面による契約の方式をとらないため、スポンサー側も広告代理店側も、それぞれ担当者のみではなく、それぞれ代表し得るような地位にある者との間で契約の締結を確認する慣例となつていること、

5 控訴人が被控訴会社に採用方を申入れていた本件テレビ番組は、いわゆる持込み企画として控訴人の創案にかかるものであつたが、広告代理店としてその間に入つた第一インターナシヨナル広告株式会社或いは控訴会社と被控訴会社間においてかような確認まで行われなかつたたこと、

6 被控訴会社においては、昭和40年ころテレビ番組の放映を行う際は、予め担当課である宣伝課において番組内容、時間帯等を検討選定し、関係部課長、担当者等と協議し更に常務取締役会の承認を得た後稟議書を作成して社長の決裁を得てはじめて放映を決定し、事前又は事後に広告代理店に宛てた広告申込書を差入れ、広告代理店は広告申込請書を被控訴会社に差入れると共にテレビ局に放送連絡票を交付して所定番組の放映が行われる取扱いとなつており、控訴人から申込まれた「自由化旋風」なる番組の企画についてはこのような手続が行われなかつたこと、
 以上の各事実が認められる。


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