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これは使える判例紹介-支店不明な銀行預金差押方法2

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平成24年 2月 7日(火):初稿 平成25年 5月14日(火):更新
○「これは使える判例紹介-支店不明な銀行預金差押方法1」を続けます。
取扱支店名不明のまま「預金額最大店舗指定方式」と呼ばれる方法で債権差押申立に対する却下決定に対する抗告を受けた平成23年10月26日東京高裁決定(判時2130号4頁)は、「全店一括順位付け方式」では債権特定は認められないが、「預金額最大店舗指定方式」では、債権特定に欠けることはないとして、債権差押を認めました。その理由は以下の通りです。

※残念ながらこの判例は、「これは使えない判例紹介-支店不明な銀行預金差押方法4」記載の通り、平成25年1月17日最高裁決定(判タ1386号182頁、判時2176号29頁)で否定されました。

①「預金額最大店舗指定方式」も、大規模な金融機関である各第三債務者のすべての店舗を対象に含むものではあるが、預金債権額合計の最も大きな店舗(ただし、これが複数あるときは、そのうち支店番号が最も若い店舗)が決まりさえすれば、その後の処理は、第三債務者の複数の店舗のうちの一つをその名称により個別具体的に特定して表示した場合(以下、これを「支店名個別特定方式」という。)と同様になる。

②預金額最大店舗指定方式における第三債務者とされた金融機関の負担は、支店名個別特定方式(これが執行実務において一般的に採用されているものであることは、当裁判所に顕著である。)による場合に比し、当該金融機関の店舗の中で預金債権額合計の最も大きな店舗を特定する作業(ただし、これが複数あるときは、そのうち支店番号が最も若い店舗を特定する作業が加わる。)及び第三債務者の本店に送達された債権差押命令の写しを当該店舗にファクシミリ等により転送する作業が加わるだけであって、全店一括順位付け方式のように、先順位の店舗の預金債権のすべてについて、その存否及び先行の差押え又は仮差押えの有無、定期預金、普通預金等の種別、差押命令送達時点での残高等を調査して、差押えの効力が生じる預金債権の総額を把握する作業が完了しない限り、後順位の店舗の預金債権に差押えの効力が生じるか否かが判明せず、それまでの間第三債務者が不安定な状態に置かれることはない。

③そうすると、預金額最大店舗指定方式における差押債権が特定を欠くかどうかは、上記作業のために第三債務者がどの程度の時間及び労力を要するかにより判断されることになり、この点を認定するための的確な証拠は本件に現れていないが、預金額最大店舗指定方式は、全店一括順位付け方式による場合と比較すると、事柄の性質上、第三債務者の負担が格段に小さいものであることは明らかと解される。

④本件の第三債務者らのような我が国を代表する金融機関においては、すべての店舗を通じて預金口座の有無及び残高等の顧客情報を管理するシステムが確立していると一応認められることに照らすと、預金額最大店舗指定方式は、「債権差押命令の送達を受けた第三債務者において、直ちにとはいえないまでも、差押えの効力が上記送達の時点で生じることにそぐわない事態とならない程度に速やかに、かつ、確実に、差し押さえられた債権を識別することができるもの」と解するのが相当である。

⑤第三債務者らにおいて、これができないというのであれば、本決定に対する抗告をし、上記の作業にどの程度の時間及び労力を要するかを具体的に主張立証することにより、本決定の取消しを求めることが可能である。


○ここで重要な指摘は、「預金債権を差し押さえようとする債権者としては、債務者名義の預金の有無及び取扱店舗、種類、口座番号等を調査するために、弁護士に依頼した上で、弁護士会を通じ、金融機関に対して弁護士法23条の2に基づく照会をすることが可能である。この照会は法令に基づくものであるから、金融機関はこれに回答すべき公法上の義務を負い、また、回答に当たりあらかじめ預金者本人の同意を得なければならないものではない(個人情報の保護に関する法律23条1項1号参照)。」と言う点です。現実は、この照会を拒む銀行が多く、本件での銀行も拒んでいました。

○しかし、個人情報保護法第23条(第三者提供の制限)
「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
1.法令に基づく場合」

との規定によれば、弁護士法第23条の2(報告の請求)
「弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」

との法令に基づく場合に該当して拒絶できないはずです。

○前記高裁決定事案は、この弁護士法照会手続を経由して、第三債務者の銀行がこれを拒否したことが、差押を命ずる理由の一つになっています。弁護士法照会手続は弁護士でないと出来ず、かつ、1回5000円の手数料がかかりますが、先ずはこの手続を踏んで、回答拒否を受けて、「預金額最大店舗指定方式」により債権差押の申立をするのが手順となります。

以上:2,170文字

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