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時間外割増賃金と歩合給に関する最高裁判例全文紹介2

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平成24年 1月31日(火):初稿
○「時間外割増賃金と歩合給に関する最高裁判例全文紹介」の続きです。
今回は、この判決が横書きで漢数字の記述はなかなか読みづらいため漢数字を算数字(アラビア数字)に変換する作業をしました。「時間外割増賃金と歩合給に関する最高裁判例全文紹介」の記述を一つ一つ漢数字を算数字に置き換える作業は面倒で10年以上前、桐指導を頂いていた倉敷の宮城有道さんにご教示頂いていた各種数字変換イベントを利用して、漢数字を算数字に変換したものを紹介します。
この漢数字→算数字変換の需要は多く、現在、【多遊】さんにより簡明なイベント作成をお願いしているところです(^^;)。

主文
 原判決を破棄する。
 第一審判決主文第一項を次のとおり変更する。
 被上告人は、上告人らに対し、別紙請求認容額一覧表の合計欄に記載の各金員並びに同表の未払割増賃金欄に記載の各金員に対する昭和63年1月22日から完済に至るまで年5分の割合による各金員及び同表の付加金欄に記載の各金員に対する本判決確定の日の翌日から完済に至るまで年5分の割合による各金員をそれぞれ支払え。
 上告人らのその余の請求をいずれも棄却する。
 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 
 
理由
 上告代理人戸田隆俊の上告理由について
一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 被上告人は、タクシー業を営む会社であり、上告人A及びBは昭和60年6月1日より前から、上告人Cは同年6月17日から、上告人Dは同年8月23日から、いずれも被上告人にタクシー乗務員として雇用され、昭和62年2月28日まで勤務してきた。ただし、上告人Bは昭和61年9月14日から同年11月5日までの期間、上告人Cは同年9月8日から同年11月28日までの期間、上告人Dは同年11月27日から同年12月25日までの期間は、それぞれ稼働していない。

2 上告人らの勤務体制は、全員が隔日勤務であり、労働時間は、午前8時から翌日午前2時まで(そのうち2時間は休憩時間)である。上告人らに対する賃金は、毎月1日から末日までの間の稼働によるタクシー料金の月間水揚高に一定の歩合を乗じた金額を翌月の5日に支払うということになっており、各上告人の歩合の率は、第一審判決の別表に記載のとおりである。なお、上告人らが労働基準法(以下「法」という。)37条(平成5年法律第79号による改正前のもの。以下同じ。)の時間外及び深夜の労働を行った場合にも、これ以外の賃金は支給されておらず、右の歩合給のうちで、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできない。

3 上告人らの昭和60年6月1日から昭和62年2月28日までの間(以下、この期間を「本件請求期間」という。)における勤務実績は、これを昭和61年12月から昭和62年2月までの3箇月間(ただし、上告人Dについては昭和62年2月の1箇月間。以下、この期間を「本件推計基礎期間」という。)における上告人らの勤務実績から推計することができるものというべきところ、この期間における上告人らの月間水揚高、総労働時間、時間外の労働時間、深夜労働時間等は、第一審判決の別紙2ないし5記載のとおりである。

二 上告人らは、右の事実関係に基づいて、上告人らに対しては本件請求期間における時間外及び深夜の割増賃金が支払われておらず、この間に上告人らに支払われるべき割増賃金の月額は、本件推計基礎期間の割増賃金額の平均月額を基に推計した金額を下回ることはないとして、本訴において、被上告人に対し、前記の午前2時以後の時間外労働及び午後10時から翌日午前5時までの深夜労働に対する割増賃金等の支払を求めている。これに対し、被上告人は、前記の歩合給には、時間外及び深夜の割増賃金に当たる分も含まれているから、上告人らの請求に係る割増賃金は既に支払済みであるとしている。

 この上告人らの請求について、原審は、上告人らに対する本件請求期間の割増賃金が支払済みであるとすることはできないとしたものの、午前2時から午前8時までの時間については、上告人らが就労する法的根拠を欠き、上告人らがこの時間に就労しても何ら賃金請求権は発生しないとした上で、本件推計基礎期間における前記の勤務実績を基に同期間における割増賃金の平均月額を計算し、これによって本件請求期間における午後10時から翌日午前2時までの勤務に対する割増賃金額を推計して、上告人らの請求を一部認容したが、その余を棄却すべきものと判断した。

三 しかしながら、原審における当事者双方の主張からすれば、上告人らの午前2時以後の就労についても、それが上告人らと被上告人との間の労働契約に基づく労務の提供として行われたものであること自体は、当事者間で争いのない事実となっていることが明らかである。しだかって、この時間帯における上告人らの就労を、法的根拠を欠くもの、すなわち右の労働契約に基づくものではないとした原審の認定判断は、弁論主義に反するものであり、この違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかなものというべきである。

 そうすると、弁論主義違背をいう論旨は理由があり、原判決は、その余の論旨について判断するまでもなく、破棄を免れない。

四 そこで、上告人らの本訴請求について判断するに、本件請求期間に上告人らに支給された前記の歩合給の額が、上告人らが時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして、この歩合給の支給によって、上告人らに対して法37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべきであり、被上告人は、上告人らに対し、本件請求期間における上告人らの時間外及び深夜の労働について、法37条及び労働基準法施行規則19条1項6号の規定に従って計算した額の割増賃金を支払う義務があることになる。

 そして、本件請求期間における上告人らの時間外及び深夜の労働時間等の勤務実績は、本件推計基礎期間のそれを下回るものでなかったと考えられるから、上告人らに支払われるべき本件請求期間の割増賃金の月額は、本件推計基礎期間におけるその平均月額に基づいて推計した金額を下回るものでなく、その合計額は、第一審判決の別紙2ないし5記載のとおりとなるものと考えられる。したがって、これと同額の割増賃金及びこれに対する弁済期の後の昭和63年1月22日から完済に至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める上告人らの各請求は、いずれも理由がある。

 また、上告人らは、法114条(昭和62年法律第99号による改正前のもの)の規定に基づき、右の各割増賃金額と同額の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から完済に至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めているが、本件訴えをもって上告人らが右の請求をした昭和62年12月25日には、本件請求期間における右の割増賃金に関する付加金のうち昭和60年11月分以前のものについては、既に同条ただし書の2年の期間が経過していることになるから、この部分の請求は失当であり、その余の部分に限って右の請求を認容すべきである。

以上説示したところにより、上告人らの本訴請求をすべて認容した第一審判決は、右の限度でこれを変更すべきである。

よって、民訴法408条1号、396条、384条、386条、96条、92条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官木崎良平 裁判官中島敏次郎 裁判官大西勝也 裁判官根岸重治) 

(別紙)請求認容額一覧表
上告人氏名未払割増賃金付加金合計
37万7367円27万3141円65万0508円
36万9926円25万8477円62万8403円
24万7517円20万0999円44万8516円
64万5132円44万5896円109万1028円

以上:3,292文字

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