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実在しない人物名義登記の所有権移転登記請求

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平成23年12月 6日:初稿
○「甲野太郎外○名との共有名義土地に権利登記する方法2」に続けて不動産登記に関する判例を紹介します。
甲野太郎外○名との共有名義土地に権利登記する方法2」記載の通り、わが国の不動産公示制度は、昭和25年までは不動産の権利関係のみを公示する登記簿と、税務署が課税のための不動産の現況を明らかにする土地台帳と家屋台帳があり、昭和25年からは土地台帳も登記所に移管され、昭和35年までは土地台帳と登記簿が登記所が併存管理し、昭和35年に土地台帳と廃止し、登記簿に一元化することとなり、昭和41年までに一元化作業が終了し、以降、公示制度は登記簿に一本化され、旧土地台帳は昭和35年以前の権利関係の確認等のためにだけ利用されるようになりました。

○この登記簿と旧土地台帳の併存時代はその管理は現在と比較して相当いい加減なところもあったようで、実在しない人物が登記簿に記載されることもあり、この実在しない人物名義に登記された登記簿の所有名義の変更の相談を受けたことがありました。その実在しない登記名義人は表題登記だけに記載されて権利登記はありませんでした。この場合、その名義人相手に所有権確認判決を取れば不動産登記法第74条2項で権利登記が出来ます。

○このように実在しない相手に対する訴えを提起することが出来るかと言う問題について、ハタと悩み、色々判例を調べた結果、結論として公示送達によって判決を得ることとし、訴えを提起しました。これに対し裁判所は、事前交渉で、実在しない人物に対する訴え提起は認められないので却下する意向を示したので、名義は実在しなくても登記手続を行った人間が居ることは間違いなく、この場合公示送達を認めてくれた判例もあると力説し、なんとか公示送達による判決を認めて頂きました。そのとき裁判所に示した判例が以下のものです。

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昭和41年9月22日津地裁判決 昭和41年(レ)第5号所有権移転登記手続請求控訴事件

   主  文

 原判決を取消す。
 本件を桑名簡易裁判所に差戻す。

   事  実

 控訴代理人らは、「原判決を取消す、被控訴人は控訴人に対し桑名市○○278番宅地5坪及び同所275番の1宅地10坪につき所有権移転登記手続をせよ、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

 控訴人の事実上の主張及び証拠の提出、援用は次に付加する外原判決事実摘示のとおりであるからここにこれを引用する。(但し原判決中請求の原因四の「被告は実在しない人物であつて住所が不明なものではない」との部分を除外する。)

 甲第1号証及び同第2号証によると被控訴人は自己のために本件不動産につき保存登記をなしていることは明らかでそのことからしても被控訴人は実在していたが所在不明になつているに過ぎない。原審第五回口頭弁論調書には「被告は始めから存在しない人間で行方不明になつたものではない」と記載されているのは控訴人の主張が誤記されたものである。
 被控訴人は公示送達による呼出を受けたが原審および当審における口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。

   理  由

 先ず職権を以つて本訴請求の適否につき判断するに、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第1号証、同第2号証及び本件記録編綴の桑名市長回答書、桑名警察署長の回答書、桑名市役所の照会回答書、川治三郎作成の証明書、近藤作成の回答書、津地方法務局桑名出張所に対する電話聴取書、同所の照会回答書並びに原審における控訴人本人尋問の結果を綜合すると、

 本件土地の登記簿は昭和20年7月17日戦災により焼失したので法務大臣は不動産登記法第23条により回復登記の申請期間を昭和20年10月1日より同22年3月31日までとしたこと、本件土地についてはいずれも津地方法務局桑名出張所昭和22年3月31日受付第○○○○号をもつて桑名市大字○○134番屋敷甲野太郎名義で回復登記がなされておるところ、その当時右登記申請に際しては申請人の印鑑証明書、住民票は添附の必要がなく、右回復登記の申請書並びに添附書類は廃棄されて現存しないこと、本件不動産登記簿に記されている住所に「甲野太郎」の本籍、寄留、住民登録の事実はなく同地に「甲野太郎」は居住していたことはないこと、本件不動産登記簿に記されている住所には「甲野二郎」が居住していたが同人の弟三郎はその子である「甲野四郎」をつれて桑名市○○351番地に分家し、大正11年7月28日右「甲野四郎」が甲野三郎の死亡により家督相続をしたが、同人も昭和36年11月21日死亡していること、右甲野二郎、三郎ないし四郎が甲野太郎の名義を冒用して右回復登記をなした形跡は存しないこと以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

 ところで民事訴訟において当事者の実在は訴訟要件の一として裁判所は職権をもつてこれを調査し、当事者が実在しない場合には訴を不適法として却下すべきことはいうまでもないが、これを本件についてみるに右認定事実からすれば本件不動産登記簿に記されている住所に「甲野太郎」なる人物は実在しないけれども本件土地につき回復登記が適法になされている以上、「甲野太郎」名義をもつて右登記申請をなした者が実在したことは明白であつて、控訴人としては本件不動産登記簿上の所有権者として表示されている「甲野太郎」なる名義を使用したものを被告として本訴を堤起していると解するのが相当であるから被控訴人が虚無人であるということは到底できないから、この点において訴訟要件に欠けるところはなく、そして右自称甲野太郎、言いかえれば甲野太郎こと某はその住所その他送達場所が不明であるから原審ならびに当審における公示送達は、いずれも適法で有効であるというべきである。

 そうだとすると控訴人の本訴請求は適法であるのでこれを不適法として却下した原判決は取消を免れない。
 よつて民事訴訟法第三八六条、第三八八条に則り主文のとおり判決する。
 (裁判官 松本武 杉山忠雄 青山高一)

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