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震災直前に売買した建物が津波で流された場合2

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平成23年 4月17日:初稿
○「震災直前に売買した建物が津波で流された場合1」を続けます。
 事案は、「AがBから中古土地建物を、代金5000万円(内訳は土地4000万円、建物1000万円)で買い受け、平成23年2月1日売買契約書を交わして、手付金1000万円を支払い、2ヶ月後の同年4月1日に、残代金4000万円支払・引渡と同時に所有権移転登記をする段取りとなっていたところ、同年3月11日発生地震で建物全部が流されて消失してしまい、且つ土地も地盤沈下して価値が大幅に下落しました。」と言うものです。
 契約が「履行着手前」であれば手付金1000万円を放棄して解除し、残代金4000万円の支払を免れることが出来ますが、この1000万円の放棄も大問題です。そこで特約がない場合の危険負担を債務者売主が負担するとの理屈を検討します。

○民法第534条1項では、不動産売買の約束が成立しただけで、買主はその引渡も移転登記も受けておらずその不動産に何ら支配がない時点でも天災等による不動産の滅失・毀損について全て責任を負わなければならなくなると言う結論です。これは常識的に見ても不公平ではないかと言うことで学説は、以下の通りこぞってその適用制限解釈を展開してきました。
我妻説;目的物の引渡か登記がなされた場合にだけ買主への危険移転を認めるべき
川村説;買主への危険移転は引渡時と読み込むべき
広中説;売買による所有権移転時期は引渡・移転登記・代金支払のいずれかがなされたとき、その後始めて危険移転
小野説;民法第534条の物的危険の移転を示すもので契約履行後に負う負担であり、買主は引渡後に危険を負う
いずれも学説も引渡等目的不動産についての支配が移転しないと危険も移転しないと説いています。

○問題は判例の立場です。一般的には、学説は上記の通り、目的不動産への支配が移転しない限りは、債権者主義が適用にならないとするが、判例は、民法の規定通り、売買契約が成立すれば危険は債権者に移るとして理解され、その判例として昭和24年5月31日最高裁判決(民集3巻2号226頁)が上げられています。その要旨は「特定物の売買において、その物が引渡前に空襲によって焼失したとしても、売主の代金債権は消滅しない」とされて、債権者危険負担を維持していると解説される例が多くありました。

○その判例を私の判例データベースで探すも残念ながら掲載されていませんでした。従って判決全文を確認出来ませんでしたが、「裁判実務体系震災関係訴訟法」471頁では次のように解説されています。
この判決の事案は、買主が、当時買主が保管中であった売主の蚊取り線香を買い受け、その代金として約束手形を振り出したが、空襲によってこの蚊取り線香が焼失し、手形の満期後これを取得した者が手形金請求をしたというものであり、「引渡」前とはいえない事案であり、この判決を以て、判例が物の引渡前にその物が滅失した場合にも債権者主義を採用したと評価することは出来ない。
○基本法コンメンタール債権各論Ⅰ45頁では、
判例には、特定物売買の目的物が空襲で焼失した事案に関し、本条(民法第534条)により、代金債務が消滅しないとしたものがある(最判昭24.5.31)が、そのように目的物が滅失しているのに売主が代金を請求してくる事例が少ないためか(加藤一郎・民法教室債権編227頁)、事例に乏しく、その態度はそれほど明確とはいえない。
とされています。

○ですから、上記設例のようなケースで売主が残代金4000万円をそのまま支払えと請求してくることは、先ず無いとは思いますが、万が一、請求してきた場合は、学説はこぞって不動産に対する実質支配取得以前の債権者主義適用を制限しており、且つ、判例も引渡前に明確に債権者主義適用を認めたものはないと強力に主張して目的物滅失で履行不能による売買契約解除終了による手付金1000万円の返還を求めても良いのではと思っております。

以上:1,614文字

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