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ある遺言無効確認事件の顛末-筆跡鑑定あれこれ4

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平成21年 4月12日:初稿
「ある遺言無効確認事件の顛末-筆跡鑑定あれこれ3」を続けます。
 遺言者祖父の生前の文字と問題の遺言書の文字の「筆跡は同じ」とするA・D鑑定および「筆跡は異なる」とするB・C鑑定の各論点毎の比較表、更に「筆跡は異なる」とするB・C鑑定についての、各鑑定対象文字毎の、特に検査すべき箇所である起筆位置、送筆部、入筆部、収筆部、点画等分析および批判一覧を各鑑定書を熟読して作成している内に「筆跡は同じ」とするA・D鑑定の合理性が確信出来るようになってきました。

○そこでこれらの一覧表完成後、これを別紙として添付し、この別紙一覧表を解説する形式で、準備書面を作成し始めました。
 先ず総論として、筆跡鑑定解説書である吉田浩一著「ポイント解説筆跡・印章鑑定の実務」と、魚住和晃著「筆跡鑑定ハンドブック」で懸命に勉強した成果を披露しました。
 以下、長くなりますが,ご参考に掲載します。

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一 筆跡鑑定とは
 筆跡鑑定には検査体系があって、鑑定資料についての検査は検査体系に沿って進められる。筆者の異同識別はすべての検査成績を総合的に検討し、考察を加えて結論する。文字の中の部分についての異同は、その部分の検査結果にすぎず、鑑定結果とは言えない(乙25P7~9、P187~190)。
異なるという鑑定であれば検査の過程で検出される類似性、同じであるとする鑑定であれば検出される相違性がなぜ排除できるのかの点については客観的、かつ、明確にその理由を示すことが必要である(同P190)
 また吉田公一著「ポイント解説筆跡・印章鑑定の実務」によれば、『過去の鑑定には、鑑定の対照となる筆跡の中から一致又は類似、あるいは相違する部分を抽出し、抽出されたもののみについて判断しているものが少なく、筆者識別の結果は、文字の形態や構成に関する検査をはじめ、計測的検査、表記方法など、筆跡の検査体系に含まれる様々な検査成績を総合し、検討、考察を加えた上で得られるものであるから、公共性を欠く判断や視野の狭い方法で行われる鑑定は信頼性が薄いといいかねない』とある(同P115、P116)。

上記を踏まえた上で、今一度筆跡とは何か、通常筆跡鑑定はどのような検査が行われるか整理してみる。

1 筆跡の構成
 筆跡を構成する三大要素は以下のとおりである(乙25P61)。
 筆跡とは、運筆という行動があって字画が書かれ、同時に字画が組み合わされて文字が形成されるのあって、字画形態や字画構成には常に運筆が関与しており、それらは切り離して考えることが出来ないものである。
①運筆状態(筆運び)
②字画形態(運筆によって描かれる線や点の形)

始筆部・送筆部・転折部・終筆部
③字画構成(複数の字画の組立て方)
複数の字画相互間の字画構成と部首などの部分相互間の字画構成:字画相互間の長さ比・複数の字画の間隔、あるいは複数の字画がつくる角度も含まれる。

2 筆跡鑑定検査項目(乙25P126~185)
 通常の筆跡鑑定の検査項目は大きく分けると以下のとおりとなっている(乙25の3)。
①文書を形成する物(筆記具や用紙)に関する検査
②文書の形式(文書の種類や書式)に関する検査
③文書上の文字全体(文字群)に関する検査
④行や文字列(配字や整列)に関する検査
⑤一文字(個々の文字及び字画構成)に関する検査
⑥一字画(運筆状態や字画形態)に関する検査
⑦その他

また、個々の検体筆跡の検査には、以下のものがある(同P126、127)
①質的検査
字画の特徴を直視的に判断する定性的な検査
②量的検査
字画の相互の角度、長さの比、字画相互間の間隔、文字全体又は“へん”や“つくり”などの文字の部分の縦横比、あるいは部分相互間の位置関係等などの計測的な評価を判断する。

3 鑑定を行う上での留意点
①書体
(乙25P83~86)
書体が違うと運筆状態・字画形態・字画構成のすべてが変わる。多くの人は楷書で書いているつもりでも、どこかに続け書きがある行書で書いていることが少なくない。
楷書:一画一画が単独でかかれた文字
行書:字画が続けて書かれた文字
②個人内変動(乙25P182~185)
同じ人が同じ字体の文字を書いても、書き表される文字の字形は書く度に少しずつ違っており、個人内変動が生ずるのは避けられない。
個人内変動が少ないと個人内変動が大きい又は個人変動の領域を逸脱すえうような筆者が存在することを認識しながら客観的に検証しなければならない
相違性の中には筆跡の個人内変動に伴う相違もあるからである(乙25P190)

4 字画形態の検査における注意点
一字画に関する検査は、下記①~⑤の局部について検査を行い、それらを総合して1本の字画の運筆状態、字画形態を判断するものであって、局部的には差異があっても、それらの検査成績を総合した場合では一字画全体が類似することが少なくなく、それは局部的な状態が個人内変動を伴うからである。
局部検査においける注意点は以下のとおりである。
①入筆部:他の字画の影響を受けているか否かも検査の対象とする。改まって書いた文字と早書きの文字とでは異なることを認識しなければならない。
②始筆部:前字画からの影響も考慮しなければならない。
③始筆位置:検体筆跡以外の筆跡についても検査が必要。
④送筆部:送筆部の字画形態の差異はその筆者の筆者個性となっていることが多いため検体筆跡以外の筆跡についても検査が必要である。
③終筆部:とめるか跳ねるかは個人内変動が著しいものと、筆者に固定化されるものとがあり、早書きや丁寧に書く場合による変動も生じる。次の字画の運筆を考慮した検査も行う。
④点画:個人内変動が大きい筆者については、その範囲を検討するために検体筆以外の筆跡の点画についての検査も行う。
⑤転折部:異なる筆者相互間で幾つかのグループを形成している。

4 筆跡個性・特異的特徴となりうるもの
①逆送筆

一字画が常用漢字字体と反対の方向に運筆されている状態(乙25P166)
運筆方向の違いは、字画構成に影響を与える。
本件においては「橋」の第5画の「ノ」がそれに該当する。
②筆順:筆順の違いは字画構成に影響を与える。
本件においては「田」の第3、4画目の「十」が、本体縦が第3画のところ、横が第3画、縦が第4画となっている。
③誤字(乙25P154、155、乙94~96)
誤字に恒常性があるのは、その筆者が文字を誤って覚えているからで、それは筆者の筆跡個性又は特異的特徴となる。
本件においては「渡」の二水

以上:2,686文字

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