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共有不動産の分割-全面的価格賠償の方法5

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平成20年12月28日(日):初稿 平成21年 1月12日(月):更新
「共有不動産の分割-全面的価格賠償の方法4」を続けます。
繰り返しますが、共有物分割方法には
現物分割-これが大原則で100坪の甲土地を33と3分の1坪ずつに分けます。
代金分割-共有物を分割して代金を分割します。
価格賠償-B・Cの持分をAが買い取りAの単独所有とします。
の3つがあり、
このうち③価格賠償でも共有者一部が他の共有者持分を強制的に買い取ることの出来る全面的価格賠償の方法による分割も認められその要件は、
①(相当性)当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であること
②(適正価格)その価格が適正に評価されること
③(支払能力)当該共有物を取得する者に支払能力があること
④(実質的公平)他の共有者にはその持分の価格を取得させても共有者間の実質的公平を害しないこと
とされています(平成8年10月31日最高裁判決、判時1592号59頁)

○そこで「共有不動産の分割-全面的価格賠償の方法2」で述べた「各持分3分の1でのA、B、C3名の共有土地(100坪、甲地)の賃貸についてAが自ら社長となって乙株式会社を設立して賃貸ビルと建築して、乙株式会社とA・B・C3名が建物所有を目的とした甲土地賃貸借契約を締結し、地代としてA・B・C各100万円ずつの300万円を甲株式会社が支払っているところ、不動産不況のため乙株式会社所有ビルのテナントが減り、賃料収入が減ったので300万円の地代を支払うのが困難になりAは地代の値下げをしたいと思っていますが、Cがこれに応じない場合」、Cの持分をAが全面的価格賠償によって買い取ることが出来るかどうかを検討します。

○先ず簡単な要件からいくと支払能力ですが、Aの資産が特に預貯金等流動資産を全面的価格賠償の適正価格を優に上回ることを証明すればこの要件をクリアできます。次に適正価格も不動産鑑定士の鑑定等によってさほどその証明は難しくないと思われます。

○最大の難問である要件は、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であることとの相当性です。平成8年10月31日最高裁判決(判時1592号59頁)の事案は、全面的価格賠償を求める側持分が土地12分の11、建物4分の3、これに対し価格賠償を受ける側の持分が土地12分の1、建物4分の1であり、求める側の持分割合が相当大きいものです。全面的価格賠償の方法での共有物分割を認めた原審名古屋高裁事案は全面的価格賠償を求める方の持分割合が228分の8,受ける方が228分の1と求める方の持分割合が圧倒的に大きいものです。

○設例事案は、共有持分割合がいずれも3分の1の同じ割合で、しかも土地の利用状況はA経営会社の賃貸ビルが建築されているもので、その持分がC以外の第3者に移転されたとしてもAの土地賃借権がその第3者に対抗出来てビル経営は可能であり、Cが持分を有してもC以外の第3者が有しても事態はさほど変わりがありません。

○しかもAが土地賃料を値下げしたい場合は借地借家法に基づき賃料減額請求手続を取れば良く、必ずしも土地持分権を取得しなければAのビル経営が支障を来すことにもなりません。このように考えると設例の事案で、相当性の要件をクリアできず全面的価格賠償が認められるのは難しいと思われます。全面的価格賠償が認められるには,更に他の共有者にはその持分の価格を取得させても共有者間の実質的公平を害しないこととの実質的公平の要件もクリアしなければならず、全面的価格賠償が認められるのは相当困難と判断せざるを得ませんが,尚、検討を継続していきます。
以上:1,468文字

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