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公判整理手続の意義と概要1

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平成20年 4月14日:初稿
○最近、刑事事件受任は務めて避け、私選の相談等があると若手弁護士を紹介して、自ら受けることは殆どなくなりました。「国選弁護人は辛いよ-被告人の無茶な言い分に従うとき」の様な事案に会うと益々刑事事件から遠ざかります。

○しかし法テラスの国選弁護人契約をしているため、数ヶ月に1回は国選事件が廻ってきて、職員に懇請されると断ることは出来ず受任せざるを得ません。先日、受任した国選事件は事実関係には全く争いがない傷害致死事件でしたが、思いがけず公判前整理手続に付され、初めてこの手続に弁護人として参加しました。

○公判前整理手続は、平成16年5月に成立した改正刑事訴訟法で導入され、平成17年11月から施行されているもので、第1回公判期日前に「争点及び証拠の整理」を行う準備手続で、この手続に付された場合,手続の進行は現在と大きく異なったものとなり,この手続の適正な運用は,平成21年5月までに実施される裁判員裁判の重要な前提となるものです。

○公判前整理手続での公判期日指定で、午前10時から午後5時まで丸一日取るように指定され、面食らって裁判長に従前の感覚だと2時間もあれば十分な事件ですがと質問すると、審理時間を長く取り、証拠書類はこれまでのように要約ではなく全文朗読を原則として、その日の内に心証を取り、翌日を判決期日にするもので、裁判員制度に備えてのものとのことでした。この辺りを全く不勉強であったため法廷では恥をかきました。

○そこで公判前整理手続の意義と概要について、日弁連「改正刑訴法・刑訴規則Q&A」からの引用を中心に備忘録として残します。

公判前整理手続の目的
公判前整理手続とは,「充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため必要」があるときに行われる,「事件の争点及び証拠の整理」のための公判準備です(第316条の2)。具体的な目標は「審理予定の策定」とされています(改正刑訴規則第217条の2)。
【改正刑訴規則】第217条の2(審理予定の策定)
1 裁判所は,公判前整理手続においては,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うことができるように公判の審理予定を定めなければならない。
2 訴訟関係人は,法及び規則に定める義務を履行することにより,1の審理予定の策定に協力しなければならない。

「審理予定の策定」の意義
審理予定の策定(改正刑訴規則第217条の2)とは,証拠調べの範囲・順序・方法及び公判期日が決定され,さらに一期日に要する時間や審理日数等について予定されることを意味します。
審理予定の策定は,公判前整理手続の目的である「継続的,計画的かつ迅速」な審理(第316条の2)を実施するために必要とされるものです。そして,改正刑訴法は,「審理に二日以上を要する事件」については「できる限り,連日開廷し,継続して」審理を行うべきとしていますから(第281条の6),公判前整理手続によって実現すべき「継続的,計画的かつ迅速」な審理とは,連日的開廷による審理ということになります。
「争点及び証拠の整理」手続の概要
公判前整理手続における「争点と証拠の整理」は,概略,次のように進行します。
・検察官「証明予定事実記載書面」提出-証拠調べ請求と請求証拠等の開示
・被告人側検察官手持ち証拠開示請求①=類型証拠開示請求
・被告人側検察官請求証拠に対する意見表明

予定主張の明示
証拠調べ請求,請求証拠の開示
・被告人側検察官手持ち証拠開示請求②=主張関連証拠開示請求
・両当事者主張の追加・変更,証拠調べ請求の追加
・審理予定の策定証拠調べ決定,及び取調べの順序・方法の決定

「証拠の整理」の意義
「証拠の整理」とは,証拠調べ請求を受けて,証拠決定と取調べの順序・方法を定めることを意味します。具体的には,まず,検察官及び被告人側から証拠調べ請求が行われ(第316条の13,第316条の17),反対当事者の意見をふまえて(第316条の16,第316条の19),裁判所による証拠決定が行われます(第316条の5第7号)。

証拠決定のために必要がある場合は,「事実の取調べ」がなされます(第43条3項)。ただし,例えば,自白の任意性判断は,通常は,その信用性判断と不可分ですから,そのための事実取調べを公判前整理手続で行うことはないと考えられます。また,違法収集証拠排除が主張された場合の証拠能力判断は,同様に信用性判断と不可分な場合があり,また,信用性判断と可分といえる場合においても,証拠能力の判断が有罪か無罪かを決することになることが多いと考えられ,そのための事実取調べは,公判中心主義の要請からも公判で行われるべきと考えられます。

「争点の整理」の意義
まず,「争点」といった場合,民事裁判と刑事裁判で意味を異にすることを確認しておく必要があります。すなわち,民事裁判では,当事者間で争いのない主要事実は証拠調べすることなく当然に裁判の基礎にしなければならないことから(民事訴訟法第179条),「争点」とは,主要事実のレベルでいうと「証拠調べを必要とする範囲」を意味します。これに対し,刑事裁判では,「争いのない事実」についても検察官は立証責任を免れませんから,「争点」とは,立証及び審理の重点がおかれる範囲を意味することになります。

公判前整理手続では,検察官から「証明予定事実」を記載した書面が提出され(第316条の13),被告人側が「証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるとき」に明示し(第316条の17),さらに,両当事者において主張の追加・変更(第316条の21,同条の22)が行われることで,「争点の整理」が行われることとされています。

公判前整理手続での「争点の整理」は,「審理予定の策定」という目標のために行われるものですから,整理されるべき「争点」の範囲も,この目標から検討されることになります。

「争点と証拠の整理」と被告人の防御
従来の手続では,被告人側の防御方針(主張・立証方針)は,公判進行の過程で策定していくことが可能であり,実際上も,被告人側の証拠調べ請求は検察官立証がなされた後で行われることが一般的です。
これに対し,公判前整理手続に付された場合,被告人側は,公判開始前に「予定主張」明示と証拠調べ請求を行わなければならず(第316条の17),証拠調べ請求については「やむを得ない事由」で公判前整理手続で請求することができなかったものを除き公判で新たな請求を行えなくなります(第316条の32)。

これにより,被告人側は,検察官の公判立証を待たずに防御方針を策定して明らかにすることを求められることになります。
この点についての改正刑事訴訟法の立場は,新たな証拠開示制度により,検察官請求証拠の開示だけでなく,①証人予定者の証言予定内容の開示,②防御準備に必要な検察官手持ち証拠開示がなされるならば,公判立証を待たずに防御方針の策定は可能であるとするものといえます。そのうえで,仮に開示証拠の内容と検察官公判立証の内容がずれたとき等は「やむを得ない事由」があることになり新たな証拠調べ請求を行えることとするのが用意された枠組みです。
そこで,新たな証拠開示制度が改正法の趣旨にそって運用されることが,公判前整理手続における「争点及び証拠の整理」を支える基盤であることになります。

以上:3,012文字

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