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時効取得が判決で認められた土地の分筆登記手続

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平成19年10月30日(火):初稿
○「筆界特定制度の活用例-時効取得した土地の筆界確定」で以下のように説明しました。
<境界争い>
甲さん所有6番の土地と乙さん所有5番の土地の境界について、甲さんはイ~ロ、乙さんはA~Bが筆界だと主張
<所有権争い>
甲さんは、仮に筆界がA~Bだとした場合は、イ、ロ、B、A、イの各点を直線で結んだ範囲内の部分(以下、係争地と言います)は、時効取得が成立し、その所有権は甲さんにあると主張
<判決の結論>
5番の土地と6番の土地の境界は、乙さんの主張通りA~B
係争地は甲さんの主張通り時効によって甲さんが所有権を有するので、乙さんは5番の土地の内係争地部分について乙さんから甲さんに所有権移転登記手続をせよ
<問題点>
判決書で係争地が甲さんの所有地と認められているからこれだけで分筆登記手続が出来そうなものですが、この分筆登記手続を行うためには5番の土地についての正確な測量図面が必要で且つその測量図に記載された筆界について周辺土地所有者から同意を貰わなければならず、乙さんが5番の土地についての測量に協力することはあり得ず、必要な測量図面を作ることが出来ないため、結局、いくら判決を取っても所有権移転登記手続が出来ないことが殆どでした。
<筆界特定制度利用>
「筆界特定制度」を利用し係争地と5番の土地の筆界を定める申立をすることによって、法務局の職権で5番の土地の分筆登記手続に必要な正確な図面を作ることが出来るようになり、分筆登記手続も可能になりました。

○今般、上記問題点を抱えた事案について、この5番の土地全体の測量について乙さんの協力を貰う代わりに係争地と乙さん所有地の境界について「筆界特定制度」によって境界を確定すべく、法務局に事前相談したところ、現在は「筆界特定制度」を経ることなく分筆登記が可能になったとのことで、その根拠として登記研究709号(平成19年3月号)掲載の法務省民事局民事第2課補佐官秦愼也氏の「不動産登記法の全面改正に伴う地積測量図の取り扱いに関する一考察」と題する論文を説明していただきました。

○これによると5番の土地の一部を分筆登記する場合は、平成16年の不動産登記法全面改正後、原則として5番の土地全体の正確な測量図が必要でとなったが、「分筆前の土地が広大な土地であって、分筆後の土地の一方がわずかであるなどの特別な事情があるときに限り、分筆後の土地のうち一筆について規則77条1項5号から7号までに掲げる事項(同項第5号の地積を除く)を記録することを便宜上省略して差し支えない」ことになったからです。これは不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日民第456号民事局長通達)72条2項によるものです。

○ここでの「特別な事情」の一例として上記秦愼也氏論文27頁に「また、土地の一部について所有権を取得した者が元の所有者を被告として訴えを提起し、その勝訴判決を得た場合において、確定判決又は理由中において、勝訴判決に係る土地の一部の範囲が明確に特定されているときには、後々の境界に係る紛争が生ずるおそれは少ないものと考えられることから、例外的に『特別の事情』として取り扱っても差し支えないものと考える。」と述べておられます。

○そこで現時点での法務局の見解は、上記5番の土地全体についての測量図を添付しなくても、特定された係争地部分のみの正確な測量図を添付すれば「筆界特定制度」を経ることなく係争地についての分筆登記が出来るとのことでした。結局、係争地を特定して確定判決を取れば、後は係争地についての精確な測量図を添付すれば分筆登記が出来ることになり、裁判所で判決を取っても法務局で登記できないとの矛盾が一つ解決されました。
以上:1,519文字

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