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不貞行為損害賠償請求事件の地裁から家裁への移送認めた高裁決定紹介

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令和 1年10月13日(日):初稿
○「不貞行為損害賠償請求事件の地裁から家裁への移送認めた地裁決定紹介」の続きで、その抗告審である平成30年6月6日東京高裁決定全文を紹介します。
 妻Aが原告となってから離婚訴訟を提起されている抗告人が、自分が原告として妻の間男を被告として損害賠償請求をしている事件と、自分が被告になっている離婚訴訟事件を併合して審理することを頑強に拒もうとしたのですが、東京高裁も、訴訟経済に適うとして、抗告人の主張を退けました。

○妻からの離婚請求を有責配偶者として争うこと、また、妻の間男に対する損害賠償請求、いずれも日本特有の紛争であり、文明国家としての世界的レベルからは、いずれも認められない事案であり、そもそも訴訟にならない事案です。せめて訴訟は訴訟経済に適う合理的方法で行うのは当然です。

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主   文
1 本件抗告をいずれも棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

 別紙「抗告状」及び「抗告理由書」に記載のとおりである。

第2 事案の概要
1 基本事件は,抗告人が相手方に対して抗告人の妻であるA(以下「A」という。)との不貞行為に基づく損害賠償を求める事案であり,横浜家庭裁判所には,Aが抗告人を被告として提訴した離婚等を求める訴訟(同裁判所平成29年(家ホ)第341号,以下「別件訴訟」という。)が係属しており,別件訴訟において,抗告人は,Aが相手方と不貞行為を行ったことなどから,有責配偶者に当たり,離婚は認められないと主張して争っている。

2 本件は,相手方が,基本事件と別件訴訟においては,抗告人とAの婚姻関係及び相手方とAの不貞の有無がともに重要な争点になると思われ,訴訟経済,判断の矛盾の防止,当事者の負担の軽減等を考慮すれば,基本事件を横浜家庭裁判所に移送し,別件訴訟と併合審理をすることが適切であるとして,移送を求めた事案である。

3 原決定は,基本事件を横浜家庭裁判所に移送する旨の決定をしたことから,これを不服とする抗告人が抗告した。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,原審と同様,基本事件は横浜家庭裁判所に移送されるべきであると判断する。その理由は,次項のとおり,抗告理由に対する判断を補足的に示すほかは,原決定の「理由」(原決定1頁19行目から2頁16行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


(1)抗告人は,別件訴訟においては,相手方とAの不貞の有無が請求原因事実になっておらず,人事訴訟法8条1項に該当しないと主張する。
 しかしながら,一件記録によれば,抗告人はAが有責配偶者に当たり,離婚は認められないと主張して争っていることが認められるから,別件訴訟においても,既に相手方とAの不貞の有無が争点の1つとなっており,その点について,別件訴訟の判断と基本事件の判断が矛盾する危険性が顕在化している。

 そして,こうした事実に加え,人証等の取調べ等の訴訟経済の観点からしても,人事訴訟法8条1項が制定された趣旨に照らせば,本件は,同項に該当し,そうでないとしても類推適用できる事案であるというべきである。したがって,この点についての抗告人の主張は理由がない。

(2)抗告人は,本件については,移送の相当性が認められないと主張する。
 基本事件においては,抗告人とAの婚姻関係及び相手方とAの不貞の有無が争点になるものと思料されるところ,一件記録によれば,別件訴訟においても,同様な点が争点となっていると認められる。そして,その解明のためには,抗告人,相手方及びAを人証として尋問をすることが想定されるところ,基本事件及び別件訴訟を併合して審理を行うことが訴訟経済に適うことはいうまでもなく,各人証の代理人弁護士が任に当たっている以上,訴訟に参画して,主尋問,反対尋問の機会を得ることが各当事者の権利擁護のために相当であるというべきである(もっとも,この点の不利益については,A,相手方の代理人弁護士が基本事件,別件訴訟に補助参加人の代理人として関与することで,その問題は解消されないでもないが,手続として却って煩瑣になり,また,訴訟経済にも適わなくなるので,相当でない。)。

 そして,一件記録によれば,別件訴訟においては,既に抗告人とAの各陳述書が提出され,人証申請もなされている状況にあり,別件訴訟のその余の争点についての判断のために基本事件の審理が著しく遅延するという状況にない。
 そうすると,この点についての抗告人の主張も理由がない。

第4 結論
 以上のとおり,原決定は相当であり,本件抗告は理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり決定する。
(東京高等裁判所第1民事部)

別紙
抗告理由書


 抗告人が主張する原決定の取消事由は以下の通りである。
第1 原決定は人事訴訟方8条1項の解釈及び適用を誤っていること
1 原決定の判断

 原決定は、抗告人と抗告人の妻との間の離婚等請求訴訟(以下「本件離婚訴訟」と言う。)が横浜家庭裁判所に係属しており、同訴訟において、有責配偶者からの離婚請求として信義則上許されないかどうかが離婚原因の存否に直結する主要な争点となっていることを理由に、「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求」に当たると判断している。
 しかし、上記原決定の判断は、人事訴訟法8条1項の解釈及び適用を誤っているものである。

2 人事訴訟法8条1項の趣旨
 人事訴訟法8条1項は、関連損害賠償請求が人事訴訟の請求原因事実を基礎とするものである場合に、当事者の立証の便宜及び訴訟経済に合致し、人事訴訟の審理に別段の錯綜遅延を生ずるおそれがないことから、同種の訴訟手続きによる請求相互間の併合のみを認める民事訴訟法136条の特例として管轄を認める規定である。
 以上の法の趣旨から、人事訴訟法8条1項に基づいて移送をするか否かを判断する際には、関連損害賠償請求が人事訴訟における請求原因事実を基礎とするものであるか否かを慎重に検討する必要がある。

3 本件では、関連損害賠償請求が請求原因事実を基礎とするものではないこと
 原決定は、主たる争点と離婚原因である請求原因事実との関係性に基づき、人事訴訟法8条1項に該当すると判断している。
 しかし、有責配偶者に該当するか否か、本件においては不貞行為が存在するか否かという点は、婚姻関係が破綻していることを前提として、その有責性がいずれにあるかというものであり、請求原因事実そのものではなく、また、請求原因事実に直結するものでもない。
 また、本件離婚訴訟における請求原因事実である婚姻関係破綻を基礎付ける事実に基づいて、本件における基本事件である損害賠償請求の主張がなされているわけでもない。

 さらに、原決定の判断を肯定した場合、有責配偶者(であると主張されている夫または妻)から他方配偶者に対する離婚等請求訴訟が提起されており、かつ、有責性を主張している他方配偶者から不貞相手に対する慰謝料請求訴訟が提起されている事案では、常に移送及び併合が認められることになりかねない。

 このように広く移送及び併合が認められる事態は、人事訴訟法8条1項が民事訴訟法136条の特例として例外的に管轄を認める趣旨に反するものである。
 以上からすると、原決定は、主たる争点の共通性のみに基づき人事訴訟8条1項の該当性を判断しており、同条項の解釈及び適用を安易に行っているものであって、取り消されるべきである。

第2 本件における移送には相当性が認められないこと
1 人事訴訟法8条1項の「相当と認めるとき」の解釈
 前述したように、人事訴訟法8条1項は民事訴訟法136条の特例として例外的に管轄を認める条項である。
 そして、特例であるが故に、当事者の管轄の利益や審理の錯綜遅延のおそれを十分に考慮する必要があるため、同条項は、「相当と認めるとき」のみ移送をすることができると規定している。
 したがって,「相当と認めるとき」の判断は、一層慎重になされるべきである。

2 原決定の判断が不適切であること
 原決定は、本件における基本事件が「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求」に該当することを前提として、「横浜家庭裁判所における審理経過その他一件記録に現れた一切の事情を考慮しても、移送の相当性に関する上記判断を左右するものはない。」と判示している。 

 しかし、原決定の上記判断は、本件における基本事件が本件離婚訴訟に併合された場合の審理の錯綜及び遅延の検討をしておらず、不適切なものである。
 主たる争点が共通であることのみをもって、審理の錯綜及び遅延が生じないと即断することはできないため、原決定は安易に相当性を認めているというべきであり、取り消されるべきである。

3 仮に移送及び併合がされた場合について
 本件では、本件離婚訴訟において、抗告人は抗告人妻に対して慰謝料請求等の反訴を提起していない。
 抗告人が反訴を提起していない以上、仮に本件における基本事件を移送したとしても、相手方は本件離婚訴訟の共同原告にも共同被告にもなり得ない。
 そうすると、本件における基本事件を本件離婚訴訟に併合する場合、三面訴訟の形態にならざるを得ず、三面訴訟にするための手続上の問題を含め、本件離婚訴訟の進行が相当程度遅延し、審理の錯綜が生じることは明らかである。
 したがって、原決定は取り消されるべきである。
 なお、人事訴訟法8条に基づき移送及び併合がされた場合に、抗告人から抗告人妻に対する反訴の提起が強制されるような事態はあり得ないことを付言する。

第3 総括
 以上のように、原決定には、人事訴訟方8条1項の解釈・適用を誤っており、かつ、本件では移送の相当性が認められない。
 したがって、本件では移送が認められるべきではなく、原決定は取り消されるべきである。

以上:4,088文字

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