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妻から不貞行為第三者ではなく夫への損害賠償請額を増額した高裁判例紹介

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平成29年 9月20日:初稿
○「妻から不貞行為第三者ではなく夫への損害賠償請求を認めた地裁判例紹介」の続きで、その控訴審の平成29年8月10日仙台高裁判決(LEX/DB)の判断部分全文を紹介します。
夫の妻への夫経営会社への出社拒否等妻が主張する不法行為について全部を一審地裁判断同様に不法行為に該当しないとしながら、妻が,自殺未遂,パニック障害,神経性不眠症と診断され、これらの精神的苦痛の程度,その他本件に顕れた諸般の事情を考慮し、妻が被った精神的苦痛を慰謝するには,200万円の支払をもってするのが相当としました。妻としては、僅かの金額である50万円の増額です。

○婚姻中に妻が夫の不貞行為を理由に夫の不貞行為相手方である女性に請求する裁判例は相当数ありますが、不貞行為第三者への請求はせず、夫だけに損害賠償請求をする裁判例は、余り見つけられません。この例は夫が憎たらしくて堪らず、形式的には婚姻中に夫に請求したようです。いっそ離婚請求も合わせてした方が、婚姻破綻に到ったとの理由が加わり、損害賠償認容額は増額される可能性があるのですが、離婚は求めていません。

○夫から妻へ離婚請求は、有責配偶者として棄却される可能性が高いためしておらず、妻としては、妻の地位にある限り、相続権と婚姻費用請求権があるため離婚請求はせず、損害賠償のみの請求になったと思われます。


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第3 当裁判所の判断
 当裁判所は,控訴人の請求のうち200万円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分は理由があり,その余の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。

1 不貞行為及びその後の被控訴人の控訴人に対する対応について
(1)被控訴人が,平成22年8月頃以降,Cと性交渉を持つようになり,平成23年1月1日,控訴人と生活していた自宅を出て,その後,Cのマンションで同人と同棲するようになり,同人との間に3人の子供をもうけた事実は当事者間に争いがない。

(2)被控訴人は,平成20年頃には控訴人との間の婚姻関係は破綻していた旨主張する。
 しかしながら,被控訴人の供述によっても遅くとも平成22年初め頃まで,控訴人の供述によれば平成23年1月まで,両者の間には性交渉があったというのであるし,平成22年10月には,被控訴人の両親や妹らが出席する食事会に控訴人及び被控訴人がともに出席しており,平成23年1月にも花巻温泉に二人で出かけていたこと,また,花巻温泉に旅行に行った際,控訴人は被控訴人との婚姻関係を維持する意思を有していたこと(甲26,控訴人本人,被控訴人本人)などに照らせば,被控訴人が主張する平成20年頃はもとより,被控訴人とCが性交渉を持つようになった平成22年8月頃においても,控訴人と被控訴人の間の婚姻関係が破綻していたとは認められない。

(3)なお,控訴人は,〔1〕不貞行為(前記第2の3(控訴人の主張)(1)ア)と,〔2〕その後控訴人が,平成22年9月,被控訴人に対して問い質したところ,被控訴人は,不貞行為に及んでいることを認め,控訴人に対し,他の女性と不貞行為に及ばない旨を約束したにもかかわらず,被控訴人はCとの不貞行為を継続し,控訴人が,同年12月,Cの経営する飲食店に行き,同人に対して被控訴人との不貞行為の有無を問い質した際,同人は被控訴人と共謀して不貞行為があることを否定し,また,被控訴人は,このことに関し,Cの飲食店に損害を与えたとして,100万円を賠償するように要求した上,平成23年1月頃には自宅を出てCのマンションで同人と同棲し始めた行為(同(2)ア)とは,それぞれ別個の不法行為である旨主張する。

 しかしながら,上記〔1〕において控訴人が主張する不貞行為が上記〔2〕の平成22年9月以降も継続された不貞行為及び控訴人と生活を共にした自宅を出てCと同棲するようになったことを含んでいることは,その主張事実自体から明らかであって,これを別個の不法行為とみることは相当ではない。
 そして,上記〔2〕の主張事実のうち,被控訴人とCが共謀の上,控訴人に対して不貞行為の継続を否認したことについては,被控訴人が控訴人に対して不貞行為の継続を自白すべき不法行為上の注意義務があったとはいえない以上,不法行為の成立を認めることはできない。また,上記〔2〕の主張事実のうち,被控訴人が,控訴人に対し,Cの飲食店に損害を与えたとして100万円の賠償を要求したことについては,それが被控訴人の控訴人に対する法律関係に関する意見表明の域を超えて,社会的に不相当な手段又は方法によってされたものと認めるに足りる証拠がない以上,これも不法行為の成立を認めることはできない。

2 訴外会社への出社拒絶等について
 控訴人は,平成23年3月まで訴外会社に出社して主に経理事務等を行っていたが,被控訴人が,〔1〕控訴人が取締役として保管していた訴外会社の代表印及び銀行預金通帳を控訴人の承諾なく奪い取った上,〔2〕訴外会社が新事務所に移転した際,控訴人に対し,「おまえなんか,必要ない。会社に来なくていい。」などと罵詈雑言を浴びせて訴外会社への出社を拒絶し,〔3〕控訴人の印鑑を冒用して控訴人名義の辞任届を偽造し,控訴人の取締役辞任登記という内容虚偽の役員変更登記をして,控訴人を訴外会社から追い出そうとしたことが不法行為に当たる旨主張する。

 しかしながら,上記〔1〕の主張事実については,被控訴人は訴外会社の代表者である以上,訴外会社の代表印及び銀行預金通帳の保持権限を有しているというべきであり,しかも上記代表印及び銀行預金通帳を現実に保持するに当たって社会的に相当でない手段又は方法を用いたと認めるに足りる証拠がないから,この点につき不法行為の成立を認めることはできない。

 上記〔2〕の主張事実については,控訴人の主張を前提としても,被控訴人が脅迫的な言辞を用いるなどしていたものといえないから,被控訴人の上記発言をもって不法行為の成立を認めることはできない。
 上記〔3〕の主張事実については,被控訴人が控訴人名義の辞任届を偽造したことや控訴人の取締役辞任登記が内容虚偽のものであることを認めるに足りる客観的証拠はない。
 したがって,被控訴人が違法な目的を有していたか否かを検討するまでもなく,この点に関する控訴人の主張は理由がない。

3 生活費の減額について
 控訴人は,被控訴人との間に,控訴人の生活費として被控訴人が控訴人に月額40万円を支払う旨の合意があったにもかかわらず,平成23年7月以降は上記支払額を減額し,平成24年1月以降は月額20万円しか支払わなかったことが控訴人に対する不法行為に当たる旨主張する。また,控訴人は,上記合意の存在を裏付ける証拠として授受金額一覧表(甲19,25の7)を提出しているほか,少なくとも平成23年1月及び同年2月に関しては,被控訴人が控訴人に対して生活費として各40万円を支払ったことが認められる。

 しかしながら,上記認定事実及び書証を踏まえた上でも,控訴人と被控訴人の間に,被控訴人が控訴人の生活費として月額40万円を将来にわたっても継続的に支払う旨の合意が成立していたことを認めるには足りないし,他に上記合意を認めるに足りる証拠はない。
 また,仮に,被控訴人が控訴人に対して生活費として一定額を支払うべき義務を負っていたとしても,その支払をしない旨の控訴人の主張は,結局のところ,被控訴人の金銭債務の不履行を述べるものに過ぎないのであって,約定又は法定の利率以上の損害賠償を求めることはできないというべきである(最高裁昭和48年10月11日第一小法廷判決・裁判集民事110号231頁参照)し,その不払自体が債務不履行を超えて不法行為に当たるとまで認めるに足りる証拠はない。
 したがって,この点に関する控訴人の主張は理由がない。

4 自宅を補修せず放置したことについて
 控訴人は,その居住する自宅が東日本大震災により損壊したところ,被控訴人は,控訴人に対し,上記自宅を補修すると約束をし,また補修のための補助金等の交付を受けたにもかかわらず,その補修工事をせず,放置したものであり,これは,控訴人を傾いた自宅に居住させ続けるとともに,Cとの不貞行為を維持したいという違法な目的によるものである旨主張する。そして,控訴人の上記主張に沿う証拠(甲25の7,32,33,控訴人本人)もある。

 しかしながら,被控訴人が控訴人に対して自宅の補修を約束したという事実については,被控訴人はこれを否認している上,上記証拠によっても,上記主張に係る約束をした日時や約束に係る具体的な文言も明らかでないことに照らせば,上記事実を認めることはできない。その他,被控訴人が自宅の補修をすべき不法行為上の注意義務を負っていたと評価するに足りる事実はない。
 そうすると,被控訴人に違法な目的があったか否かを検討するまでもなく,自宅を修理せず放置したことについて被控訴人の不法行為が成立すると解すべき余地はない。

5 慰謝料額について
 上記1から4までの検討によれば,控訴人が主張するもののうち,被控訴人がCと不貞行為をしたことは不法行為と認められる。そして,控訴人が平成23年1月に自宅を出て控訴人と一方的に別居し,その後,Cと同棲し,その間に3人の子をもうけたという不貞行為の態様,その結果,控訴人が,平成28年5月に自殺未遂に及び,パニック障害,神経性不眠症と診断されたこと(甲5の1,21,22,25の2,32,控訴人本人,弁論の全趣旨)から窺われる控訴人の精神的苦痛の程度,その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると,上記不法行為により控訴人が被った精神的苦痛を慰謝するには,200万円の支払をもってするのが相当というべきである。

6 まとめ
 以上によれば,控訴人の請求は,200万円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由がないから棄却すべきであるから,これと異なる原判決を上記のとおり変更して,主文のとおり判決する。
仙台高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官 古久保正人 裁判官 杉浦正典 裁判官 坂本浩志
以上:4,253文字

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