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面会拒否母への慰謝料請求が棄却され逆に慰謝料支払を命じられた事案紹介1

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平成29年 5月31日:初稿
○離婚した父が、子を監護する母が子との面会交流を認めないことについて、不法行為を理由に慰謝料を請求したところ、母と子が父に対し、父が面会交流審判事件の記録等を第三者に開示したことについて、プライバシー権侵害や名誉毀損に該当する不法行為として慰謝料請求をした事案について判断した東京地方裁判所立川支部平成28年2月5日判決(判例時報2323号130頁)全部を2回に分けて紹介します。

○「面会を拒否した母に対する慰謝料請求を認めた横浜地裁判決全文紹介1」等で紹介したとおり、面会を拒否した母に慰謝料支払を命じる判決は、結構出されています。本件では、東京家裁で面会交流の審判が出されましたが、父がその条件を不満として、東京高裁に抗告して審理中であり、面会交流に審判が確定していない時点での提訴でした。母は、不当提訴として争い、また、母・子(平成20年生まれ)が、面会交流事件記録を第三者に開示したこと等を理由に父に対し、慰謝料請求をしましたが、判決は母子側に軍配を上げています。

○父は、平成26年に子の母と離婚後、同じ年に別の女性との間の子供をもうけ、その女性と結婚していました。それでも離婚した前妻との子との面会に強くこだわっています。父としては、別れても子供は愛おしむ気持が強くこの点同情できるのですが、面会交流審判記録を子の担任の小学校教諭に送りつけたりした行動が、やり過ぎとして裁判官に悪印象を与えたようです。

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主   文
一 原告の第一事件請求を棄却する。
二 原告は、東京家庭裁判所平成27年(家)第2682号面会交流申立事件の事件記録の写し及び同事件記録を謄写した文書のうち、離婚に至る経緯及び被告及び原告Cの精神的健康状態等、被告及び原告Cのプライバシーに関する内容の文書を、裁判手続以外で、第三者に配布し又は引き渡す等の行為をしてはならない。
三 原告は、被告に対し33万円及びこれに対する平成27年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
四 被告のその余の第二事件請求を棄却する。
五 訴訟費用は、第一事件・第二事件を通じ、原告の負担とする。
六 この判決は、第三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求
一 第一事件請求

 被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する平成27年11月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

二 第二事件請求
(1)主文第二項同旨
(2)原告は、被告に対し、100万円及びこれに対する平成27年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、元夫婦の夫である原告が、妻である被告に対し、原告・被告間の子で被告が親権者となった原告Cと原告との面会交流に被告が応じないなどとして、不法行為に基づき、慰謝料及び弁護士費用合計550万円及びこれに対する第一事件訴状送達日の翌日である平成27年11月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(第一事件)ところ、被告及び原告Cが、原告に対し、面会交流審判事件の記録等を第三者に開示することの禁止を求めるとともに、被告が、原告に対し、第一事件請求が不当訴訟である、上記第三者への開示がプライバシー権侵害や名誉毀損に該当する、原告には調停・審判における誠実義務違反があるなどとして不法行為に基づき慰謝料及び弁護士費用合計330万円のうち100万円及びこれに対する第二事件訴状送達日の翌日である平成27年12月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(第二事件)事案である。

一 前提事実
(なお、証拠番号については、以下、第一事件のものについては「〔1〕甲一」などと、第二事件のものについては「〔2〕甲一」などと記載する。)
(1)原告と被告は、平成17年××月××日に婚姻届をし、平成20年××月××日に原告Cをもうけたが、平成26年××月××日、原告Cの親権者を被告と定めて調停離婚(東京家庭裁判所平成27年(家イ)第5995号)した。なお、離婚調停において、原告と原告Cとの面会交流についても協議がされたが、合意には至らず、調停条項には面会交流については何ら記載されていない。

(2)原告は、平成27年××月××日に、P1と婚姻し、P1との間に平成26年××月××日、長女P2をもうけた。

(3)原告は、平成26年××月××日、原告Cとの面会交流を求める調停を申し立てた(東京家庭裁判所平成26年(家イ)第10213号。以下「面会交流調停」という。)が、平成27年××月××日不成立となり、審判手続に移行した(東京家庭裁判所平成27年(家)第2682号。以下「面会交流審判」という。)。

(4)東京家庭裁判所は、平成27年××月××日、面会交流審判において以下の内容を主文とする審判(以下「本件審判」という。)を行った。
ア 被告は、原告に対し、本件審判確定日の属する月の翌月から、2か月に1回、土曜日又は日曜日に、初回は1時間、2回目以降は3時間として、面会交流の実施を援助する第三者機関立会の下、原告が、原告Cと面会交流することを許さなければならない。

イ 当事者双方は、前項の面会交流の日時、場所、方法、同交流の際の留意事項、禁止事項について、第三者機関の指示に従わなければならない。

ウ 原告は、第一項の面会交流に関し、第三者機関に支払うべき費用を負担しなければならない。

エ 手続費用は各自の負担とする。

(5)原告は、同月××日、本件審判に対し、原告Cとの毎月2回の宿泊を伴う面会や原告の長期休暇期間の5泊6日の宿泊を伴う面会等を求めて、東京高等裁判所に即時抗告をし、現在抗告審に係属中である。なお、被告は、本件審判に対して、即時抗告はしていない。

(6)原告は、平成27年7月××日、面会交流審判の記録のうち、原告CについてのDクリニック発行の平成27年4月××日付医師意見書、被告についての同クリニック発行の平成27年6月××日付診断書、被告の平成27年5月××日付陳述書、原告の平成27年7月××日付主張書面(1)、原告の平成27年6月××日付陳述書を、被告及び原告Cが診察を受けたDクリニック及び原告Cが通学するE小学校の担任教諭宛に郵送した。さらに、原告は、平成27年7月××日(送付は同月××日)、E小学校に対し、被告の平成27年7月××日報告書、同月××日付主張書面等の記録を郵送し、被告の親類のP3に対しても、同年8月××日(送付は同月××日)に本件審判の記録を郵送した(以下、原告が送付した記録等を併せて「本件送付記録等」という。)。

(7)被告及び原告Cは、原告を債務者として、面会交流審判の事件記録の写し及び同事件記録を謄写した文書のうち、離婚に至る経緯及び被告及び原告Cの精神的健康状態等、被告及び原告Cのプライバシーに関する内容の文書を、裁判手続以外で、第三者に配布し又は引き渡す等の行為をしてはならないとの仮処分決定(東京地方裁判所立川支部平成27年(ヨ)第161号。以下「本件仮処分」という。)を得た。

二 争点
(1)被告の不法行為の成否

(原告の主張)
 被告は、原告と被告の調停離婚が成立した平成26年××月××日以降は勿論のこと、被告が原告Cを連れて別居した平成25年××月××日から、約3年が経過するも、裁判所での試行面接を除き、原告と原告Cの面会交流を1回も認めておらず、かかる状態は、児童の権利に関する条約第9条3項が謳う「親子不分離の原則」に完全に反する状態であり、しかも、被告には、面会交流を拒否する正当理由はない。
 したがって、被告が、原告と原告Cの面会交流を認めなかったことは、原告の原告Cとの面会交流権を不当に侵害したといえ、不法行為(民法709条、710条)を構成する。
 これにより、原告は、幼少の年代における原告Cとの交流により得られるはずの親としての心理的な安心感を得る機会を失ったことにより、甚大なる精神的損害を被り、これを慰謝するための慰謝料は500万円、これと相当因果関係にある弁護士費用は50万円を下らない。

(被告の主張)
 面会交流は、子の利益に適うことが認められて、当事者の協議や調停・審判でその行使できる面会交流の具体的内容が決まってはじめて権利として承認されるものである。
 本件では、本件審判に対する原告の即時抗告により、面会交流の内容は確定していないのであるから、そもそも権利を侵害しているとはいえない。
 よって、原告の主張する権利は、法律的根拠を欠くものである。

(2)第一事件訴訟の不当性について
(被告の主張)
 原告には、弁護士が代理人についており、自らの権利が法律的根拠を欠くものであることを知りながら第一事件訴訟を提起し、しかも、高額請求であって面会交流の審理係属中に提起されたものであることからすれば、第一事件訴訟の提起は、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くことは明らかであって、被告に対する嫌がらせを目的としたものに他ならず、不当訴訟として、不法行為を構成する。
 これにより、被告が被った精神的損害は100万円、その弁護士費用相当額は10万円を下らない。うち30万円を請求する。

(原告の主張)
 面会交流権は、自然権的な権利であり、児童の権利に関する条約5条、9条3にも定められている極めて重要な権利であり、面会交流の調停や審判以前に、面会交流を妨害された非監護親の救済を図るためにも、面会交流の妨害に対する慰謝料請求は許されなければならない。よって、第一事件訴訟は不当訴訟ではない。

(3)原告によるプライバシー侵害及び名誉毀損
(被告の主張)
 本件送付記録等には、離婚に至る経緯が克明に記載された陳述書や被告及び原告Cの診断書が含まれていた。また、原告は、原告Cの担任やP3に対しても「Cが虐待寸前の不適切な養育環境におかれて、過酷なストレスに曝されている可能性がある」等と何の根拠もなく虚偽の記載をした手紙を送っており、被告が、原告Cに対し、虐待同然に接しているかのような印象を与えるものである。このような、原告の行為は、被告に関する重大なプライバシー侵害及び名誉毀損に該当することは明らかである。
 これにより、被告が被った精神的損害は100万円、その弁護士費用相当額は10万円を下らない。うち50万円を請求する。

(原告の主張)
 原告は、可能性や疑いを指摘しているだけで、虐待同然に接しているというのは飛躍である。原告は、原告Cの健全な発達についての不安から各所に連絡を取ったに過ぎず、プライバシー権を侵害するものでも、名誉を毀損するものでもない。また、調停・審判記録は公開されているものであり、送付を受けた者もそれぞれ守秘義務を負っているのであるから、この点からもプライバシー侵害とはならない。

(4)誠実義務違反
(被告の主張)
 原告は、平成25年××月××日に、被告に対する離婚調停を申し立てているが、これは有責配偶者からの離婚請求であるにもかかわらず、P1との交際や女児誕生が近いことなどを隠匿しながら、離婚調停を進めて慰謝料支払や原告Cの親権を主張し、面会交流調停や面会交流審判においても、何ら合理的な理由もなく、被告を侮辱する主張を行うなど、被告に精神的苦痛を与えているものであり、このような一連の原告の姿勢は、家事事件手続法第二条における「当事者は、信義に従い誠実に家事事件の手続を追行しなければならない」義務に違反するものであり、原告は、これにより被告に生じた精神的苦痛に対する慰謝料支払義務を負う。
 原告の行為により、被告が被った精神的損害は100万円、その弁護士費用相当額は10万円を下らない。うち20万円を請求する。

(原告の主張)
 争う。
 原告にもプライバシー権が存在し、被告に対し、原告が自分自身のプライバシーに係る事実を伝える義務などない。

(5)人格権に基づく差止請求
(被告及び原告Cの主張)
 上記(3)の原告の行為により、被告のプライバシー権の侵害及び名誉毀損が成立しているのみならず、原告Cのプライバシー権侵害が生じている。ところが、原告は、自らの非を認めず、同様の行為を繰り返す可能性が高いため、人格権に基づき、面会交流審判の事件記録の写し及び同事件記録を謄写した文書のうち、離婚に至る経緯及び被告及び原告Cの精神的健康状態等、被告及び原告Cのプライバシーに関する内容の文書を、裁判手続以外で、第三者に配布し又は引き渡す等の行為の差止めを求める。

(原告の主張)
 原告の行為は、プライバシー権侵害にも名誉毀損にも当たらない。本件審判においても、被告の行動は支持されている。


以上:5,245文字

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