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面会交流実施誠実協力義務違反理由の弁護士に対する損害賠償請求認容例1

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平成28年 7月 7日:初稿
○夫である原告が、別居中の妻である被告Y1及びその代理人弁護士である被告Y2に対し、被告Y1が監護する二男につき調停により月2回程度の面会交流が認められたにもかかわらず、被告らが不当に面会交流を拒否した等と主張して、被告らに対し、不法行為に基づき、慰謝料等の支払を求めました。

○これに対し、第一審平成27年3月27日熊本地裁判決(判時2260号85頁)は、当事者は、調停での取り決めに従って面会交流を実施するため日時等の詳細について誠実に協議すべき条理上の注意義務を負担していると解するのが相当であり、一方当事者が、正当な理由なく一切の協議を拒否した場合や、社会通念に照らし事実上協議を拒否したと評価される行為をした場合には、誠実協議義務に反し相手方当事者のいわゆる面会交流権を侵害するものとして不法行為を構成するとし、代理人の弁護士にまで20万円の慰謝料請求を認めました。

○判決当時話題となってニュース等に取り上げられたのですが、平成28年1月20日福岡高裁判決では覆されて損害賠償請求は棄却されました。しかし、面会交流実施に誠実協力義務があることは間違いなく、弁護士としては注意しなければなりません。先ず弁護士の不法行為を認めた一審熊本地裁判決の主文と事案の概要です。

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主  文
一 被告らは、原告に対し、連帯して20万円及びこれに対する被告Y1は平成25年12月21日から、被告Y2は同月20日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用はこれを25分し、その一を被告らの連帯負担とし、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、主文第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求の趣旨

 被告らは、原告に対し、連帯して500万円及びこれに対する被告Y1は平成25年12月21日から、被告Y2は同月20日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
一 本件は、夫である原告が、別居中の妻である被告Y1及びその代理人弁護士である被告Y2に対し、被告Y1が監護する二男につき調停により月二回程度の面会交流が認められたにもかかわらず、被告らが不当に面会交流を拒否したなどと主張して、不法行為に基づき、慰謝料500万円及びこれに対する各訴状送達の日の翌日(被告Y1は平成25年12月21日、被告Y2は同月20日)から支払済みまで民法所定年5%の割合による遅延損害金を請求する事案である。

二 前提事実
 当事者間に争いがない事実並びに各項に掲げた証拠〈省略〉により容易に認定できる事実は、次のとおりである。
(1) 原告と被告Y1は、平成19年3月15日に婚姻した夫婦であり、その間には長男A(以下「長男」という。)及び二男B(以下「二男」という。)がある。

(2) 原告と被告Y1は、平成24年10月29日以降別居しており、現在に至るまで、原告が○○市内に居住して長男を監護し、被告Y1が△△市内に居住して二男を監護する状態が継続している。

(3) 被告Y1は、平成24年11月、○○家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停を申し立てた(以下「第一調停事件」という。)。その際、原告は代理人弁護士を選任していたが、被告Y1は代理人弁護士を選任していなかった。

(4) 平成25年4月15日、第一調停事件において、要旨次のとおり調停が成立した(以下「本件調停」という。)。なお、以下、平成25年は適宜省略する。
ア 当事者双方は、当分の間、別居を継続する。
イ 当事者双方は、婚姻解消又は同居するまでの間、長男の監護者を原告、二男の監護者を被告Y1と定める。
ウ 当事者双方は、被告Y1が長男と、原告が二男とそれぞれ月二回程度(原則として第二、第四土曜日)の面会交流をすることを認め、その具体的日時、場所、方法等については子の福祉を慎重に配慮して、当事者間で事前に協議して定める。

(5) 4月中旬及び6月15日に、○○市内で面会交流が行われたが、7月6日に予定されていた面会交流については、被告Y2が面会交流はできない旨断ったため、実施されなかった。

(6) 被告Y2は、8月2日、△△県弁護士会に所属する弁護士である被告Y2に対し、夫婦関係調整(離婚)調停の申立てにつき委任した。
 被告Y2は、8月5日、被告Y1の代理人として、○○家庭裁判所に対し、夫婦関係調整(離婚)調停の申立てをした(以下「第二調停事件」という。)。

(7) 原告は、8月12日までに、○○家庭裁判所に対し、本件調停に基づく面会交流を実施するよう履行勧告の申立てをし、同月25日までにその旨の勧告がされた。

(8) 被告Y2は、8月9日、被告Y1の代理人として原告に対して電話し、被告Y1の体調不良により同月10日の面会交流は実施できないことを伝えた。また、被告Y2は、同月12日付けで、原告に対して受任通知を送付した。

(9) △△家庭裁判所は、10月1日、第二調停事件につき○○家庭裁判所に移送する旨の審判をし、現在、○○家庭裁判所において調停手続が行われている。

三 本件の争点及び争点に関する当事者の主張
 本件の主な争点は、面会交流が実施されなかったことについて、被告らに不法行為が成立するか否かである。
(原告の主張)
(1) 原告の主張する事実経過の要旨

ア 平成24年10月29日の別居以降、原告は被告Y1に対し二男との面会交流を求めたが、被告Y1は平成25年2月まで約3カ月にわたりこれに応じなかった。
イ 原告と被告Y1は、7月6日に○○県の□□動物園で面会交流を予定していたが、被告Y1は来なかった。その後、原告は被告Y1に対し振替日を求めてメールを出したが、返答はなかった。
ウ 7月19日、被告Y1から、翌日の面会交流は被告Y1と二男の風邪のため中止したい旨のメールがあったため、原告はこれを承諾して、後日、風邪の様子や振替日を尋ねるメールを出したが、返答はなかった。
エ 被告Y2は、8月9日、被告Y1の代理人として原告に電話をかけ、翌日の○○市内での面会交流は被告Y1の体調不良により中止すること及び第二調停事件の申立てをしたことを伝えた。原告は、自分が□□に行くので二男と面会交流させてほしい旨申し出、被告Y2はこれを被告Y1に伝えたが、返答はなかった。
オ 原告は、9月24日、被告Y2に対し、面会交流を実施するよう求め、被告Y2は事前協議に応じる旨を明らかにしたが、同月30日、被告Y2は面会交流については第二調停事件の中で検討することが適切であるとし、その後、連絡手段をメールから書面郵送に変更して、迅速な協議を求める原告の要望を無視した。
カ 被告Y2は、9月30日以降、原告に対し、①場所は△△市とする、②試行的面会交流を実施する、③子の受け渡しは原告と被告Y1が直接顔を合わさない方法で行うことを提案したが、原告がその必要性を問うと、説明なく①と②を撤回した。なお、③は原告が承諾した。
キ 原告は、10月21日以降被告Y2からの連絡が途絶えたため、同月31日、○○家庭裁判所に対し履行勧告の申立てをした。

(2) 被告らの不法行為
 民法766条の趣旨からすれば、子の福祉のため、監護親には面会交流をできるように努力する義務があり、非監護親は子と面会交流をする権利があるというべきであり、面会交流が制限されるのは面会交流が子の福祉に反するという例外的な場合に限られる。したがって、被告らの次の各行為は不法行為に該当する。
ア 被告Y1において、平成24年10月29日から平成25年2月2日までの間、面会交流を実施しなかった行為
イ 被告Y1において、7月6日から9月30日まで、面会交流及びその協議をしなかった行為
ウ 被告Y1において、9月30日から10月11日まで虚偽の主張により協議を遅延させた行為
エ 被告Y2において、8月9日から9月30日まで面会交流への対応について被告Y1に対し適切な関わりをしなかった行為
オ 被告らにおいて、10月1日から同月16日まで、協議を遅延した行為
カ 被告らにおいて、10月21日から11月12日まで、協議を遅延した行為
キ 被告らにおいて、10月21日以降、協議を中断している行為
ク 被告らにおいて、10月4日以降、第二調停事件の手続を遅滞させている行為

(被告らの主張)
(1) 被告らの主張する事実経過の要旨

ア 被告Y1は、同居期間中、原告から暴力や暴言を受け、「性格を直せ」と言われて□□に連れて行かれるなど人格を否定するようなことがあった。
 被告Y1は、子供にまで危害が及ぶのではないかと不安になり、平成24年10月29日、二男を連れて実家に帰り別居した。
イ 被告Y1は、第一調停事件において代理人弁護士を依頼しておらず、自分自身の意思や状況を適切に説明することができず、また、原告の主張を受け入れなければ原告が立腹してまた暴言を吐き怖い思いをするのではないかという恐怖心を払しょくできないまま原告に押し切られて本件調停を成立させてしまった。
ウ 平成25年4月中旬に○○市内で面会交流が実施された後、5月11日に○○市内で面会交流が予定されていたが、原告は約束の場所に現れなかった。原告は、後で□□へ行っていたと述べていた。そのため、被告Y2は、5月13日に履行勧告の申立てをした。
エ 6月15日、○○市内で面会交流が実施されたが、その際、原告は長男と二男の荷物を全部被告Y1に持たせた上、被告Y1をつけ回し、二男の面倒を見ようとしなかったため、被告Y1は恐怖感を抱いた。
オ 7月6日に○○市内で面会交流が予定されていたが、原告は、前日の7月5日、被告Y1の父が以前の面会交流の際、長男に対し「すまんな、守ってやれんで」と発言したことが虐待であるとして謝罪の動画を送信するように求め、これに応じない限り被告の父の同席を認めないとしたため、被告Y1は父の同席がなければ面会交流はできないとして面会交流の延期を求めた。
カ 被告Y1は、7月16日、被告Y2に相談し、8月2日に委任契約を締結して同月5日に△△家庭裁判所に第二調停事件を申し立てた。
キ この間、原告から7月19日に面会交流をする旨の希望が出されたが、その頃被告Y1と二男は風邪気味であったので、被告Y1は面会交流を実施できないとして断った。
ク 原告は○○家庭裁判所に対して履行勧告申立てをし、これに対して被告Y1は第二調停事件のなかで改めて面会交流について話し合うことを求めた。
ケ 原告は△△家庭裁判所に対し第二調停事件を○○家庭裁判所に移送するよう申し立てたが、△△家庭裁判所において移送に関する審判がなかなか出されなかった。
コ 原告は、9月24日、改めて面会交流をしたい旨提案し、被告Y1も同月30日に○○市内において原告と被告Y1が直接会わない方法であれば面会交流可能である旨の返答をした。
 その後、原告と被告Y2との間で、面会交流の場所や方法について調整が試みられたが、原告が面会交流拒否に被告Y2が関与したのかの確認にこだわったため、具体的な面会交流の方法の合意に至らなかった。
サ 10月1日、△△家庭裁判所は第二調停事件を○○家庭裁判所に移送する旨の審判をした。ところが、移送審判が原告に送達できず、被告Y2が原告の住所調査をするために時間を要し、11月17日にようやく送達がされた。

(2) 不法行為の成否
ア 被告Y1は、本件調停を遵守する意思はあったが、原告が面会交流場所に現れなかったり、荷物を全部被告Y1に持たせた上、被告Y1をつけ回すなどしたため、原告の面会交流の目的に不信感を持ち、恐怖を覚えた。
 そのため、被告Y1は被告Y2に委任し第二調停事件の申立てをした上で、調停期日で面会交流についての調整を試みるつもりであった。しかし、第二調停事件の移送審判やその送達に時間がかかったため、早期に面会交流をすることができなかった。
イ 被告は早期に離婚ができると思って本件調停を成立させたが、案に相違して紛争が長期化しその間に当事者間に葛藤状態が増したこと、○○から△△に片道4時間半かけて通うことが予想以上に二男の負担であったことが事情変更に当たる。
ウ 以上の事情により面会交流をすることができなかったものであるから、被告らに故意過失はなく、不法行為は成立しない。


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