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離婚後15年以上婚氏を称した者の改氏認容平成26年10月2日東京高裁決定紹介

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平成28年 3月 2日:初稿
○離婚後15年以上婚氏を称した者について,婚姻前の氏に変更する「やむを得ない事由」があるとした平成26年10月2日東京高裁決定(判タ1419号177頁、判時2278号66頁)を紹介します。
戸籍法第107条
 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

 この規定の趣旨は、個人の識別手段である氏が安易に変更されると社会が混乱するので、呼称秩序を維持するため安易な変更は認めず、「やむを得ない事由」が必要としたものです。

 名の変更については
第107条の2 正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
と規定され、「やむを得ない事由」から少々緩やかに感じられる「正当な事由」になっています。

○離婚の際、以下の規定により婚氏続称の届出をした後、再び婚姻前の届出に戻りたいとして氏変更の許可を求める例は多いとのことです。
民法第767条(離婚による復氏等)
 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
戸籍法第77条の2
 民法第767条第2項(同法第771条において準用する場合を含む。)の規定によつて離婚の際に称していた氏を称しようとする者は、離婚の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。


○これは離婚直後は、旧姓に戻すと特に親権を取得して同居する子供達も旧姓にせざるを得ないのが面倒だと言うことで、婚氏続称しても、何年か経て、子供達も独立するなどした場合、両親と同じ旧姓に戻したくなることがあるようです。この続称した婚氏から旧姓に戻る場合は、「離婚をして婚氏の続称を選択した者が、その後婚前の氏への変更を求める場合には、戸籍法107条所定の『やむを得ない事由』の存在については、これを一般の場合程厳格に解する必要はない」とする後記平成3年9月4日大阪高裁決定の考え方が裁判例の流れのようです。

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平成26年10月2日東京高裁決定

主   文
1 原審判を取り消す。
2 抗告人の氏「○○」を「△△」に変更することを許可する。
3 手続費用は,第1,2審を通じ,抗告人の負担とする。 

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

 抗告の趣旨及び理由は別紙「即時抗告申立書」(写し)に記載のとおりである。

第2 事案の概要
 本件は,抗告人が,その氏「○○」を婚姻前の姓である「△△」に変更することの許可を求めた事案である。
 原審は,抗告人が,その氏「○○」を「△△」に変更することにつき,戸籍法107条1項に定める「やむを得ない事由」があると認めることはできないことを理由に,抗告人の申立てを却下した(原審判)。
 これを不服とする抗告人は,原審判を取り消し,抗告人の氏「○○」を「△△」に変更することを許可する旨の審判に代わる裁判を求めて抗告した。

第3 当裁判所の判断
1 前提事実

 前提事実は,次のとおり補正するほかは,原審判の「理由」中の2に記載するとおりであるから,原審判の「申立人」を「抗告人」と読み替えた上で,これを引用する。
 (原審判の補正)〈省略〉

2 検討
 上記1記載の前提事実によれば,抗告人は,離婚後15年以上,婚姻中の氏である「○○」を称してきたのであるから,その氏は社会的に定着しているものと認められる。
 しかし,
①一件記録によれば,抗告人が,離婚に際して離婚の際に称していた氏である「○○」の続称を選択したのは,当時9歳であった長男が学生であったためであることが認められるところ,前提事実によれば,長男は,平成24年3月に大学を卒業したこと,
②抗告人は,平成17年,抗告人の婚姻前の氏である「△△」姓の両親と同居し,その後,9年にわたり,両親とともに,△△桶屋という屋号で近所付き合いをしてきたこと,
③抗告人には,妹が2人いるが,いずれも婚姻しており,両親と同居している抗告人が,両親を継ぐものと認識されていること,
④長男は,抗告人が氏を「△△」に変更することの許可を求めることについて同意していること
からすれば,本件申立てには,戸籍法107条Ⅰ項の「やむを得ない事由」があるものと認めるのが相当である。

第4 結論
 以上のとおり,抗告人の本件申立ては理由があるから,抗告人の氏「○○」を「△△」に変更することを許可すべきところ,これと異なる原審判は失当であり,本件抗告は理由がある。よって,原審判を取り消し,抗告人の本件申立てを認容することとし,主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 林道晴 裁判官 江原健志 裁判官 朝倉佳秀)
 

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平成3年9月4日大阪高裁決定

主   文
1 原審判を取り消す。

理   由
1 一件記録によれば、本件抗告の趣旨は、「1 原審判を取り消す。2本件を大阪家庭裁判所に差し戻す。」との裁判を求めるというのであり、その理由は、「抗告人は、昭和55年4月26日、甲野太郎と離婚したが、同人との離婚後も婚氏続称により、婚姻中の甲野姓を名乗ることにしたところ、社会生活上、なにかと支障が生じるので、婚姻前の氏である乙山姓に復氏することの許可を求める。」というのである。

2 《証拠略》によれば、抗告人は、昭和52年5月28日、甲野太郎と夫の氏を称する婚姻をしたが、同55年4月26日、同人と協議離婚が成立し、抗告人は、右離婚届出とともに婚氏続称の届出(戸籍法77条の2)をしたことにより、抗告人を戸籍筆頭者甲野花子とする新戸籍が編製されたこと、抗告人の婚氏続称は、上記甲野太郎との離婚に際し、抗告人が、選択したものであるが、抗告人は、父乙山松夫及び母乙山竹子と同居しているのに、抗告人だけが甲野姓であることにより、なにか特別の理由があるのではないかとの疑いをもたれて、その都度理由の説明等に煩わしい思いをさせられていること、また、抗告人は、上記のようにその両親と同居し、外観上、独立の世帯をもっているとは認められないために、抗告人宛の郵便物が近くに住む「甲野」姓の別人の家に配達されることがしばしばあることが、それぞれ認められる。

3 以上の事実からは、甲野太郎との離婚に際し、婚氏続称により生ずるであろう抗告人の主張するような日常生活の煩わしさを顧慮することなく、婚氏続称を選択した抗告人の軽率さもさることながら、離婚以来10年以上の日時の経過により、婚氏「甲野」が抗告人の姓として、ある程度、社会生活上定着していることを否定することができない。

 しかしながら、戸籍法107条所定の氏の変更は、民法上の氏の変更をするものではなく、単に、名とともに個人を特定するための呼称上の氏を変更するにとどまるものであって、民法767条2項に基づく戸籍法77条の2の婚氏続称届をした場合も同様であり、離婚によって、民法上の氏は婚姻前の氏に復し、ただ、呼称上婚氏を続称することが許されるに過ぎないものとするのが相当である。

 すなわち、婚姻によって氏を変更した者が、離婚によって婚姻前の氏に復することは、離婚が行われたことを社会的にも明確にし、新たな身分関係の形成を公示しようとする制度の目的を支えるものであって、ただ、上記必要性を上回る婚氏続称の要求がある場合には、例外的にこれを認めることにしたものと見るのが相当である。

4 このような見地からは、離婚をして婚氏の続称を選択した者が、その後婚前の氏への変更を求める場合には、戸籍法107条所定の「やむを得ない事由」の存在については、これを一般の場合程厳格に解する必要はないというべきところ、抗告人が離婚後、婚氏を続称したために、前記認定のような日常生活上の不便・不自由を被っていることの認められる本件においては、抗告人の戸籍法107条1項に基づく、本件氏の変更の申立には、「やむを得ない事由」があるものと解するのが相当である。これと異なる見解のもとに抗告人の本件申立を棄却した原審判は正当とはいえない。
 よって、原審判を取り消し、抗告人の氏変更の申立を認容することとし、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 後藤 勇 裁判官 東條敬 小原卓雄)

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