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元夫生前11年間男女関係継続女性に対する慰謝料請求が否認された判決紹介

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平成28年 2月 2日:初稿
○協議離婚した元夫の死後、被告が元夫とその生前11年間男女関係を継続したことを知った原告が、元夫が原告と協議離婚するに至った主たる理由が被告との不貞関係にあり、これにより原告の妻としての権利、元夫との婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益が侵害され、原告の被った精神的苦痛は、原告が本件不貞関係を知ったことにより顕在化したとして、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料の支払を求めた事案において、原告と元夫の協議離婚と本件不貞関係との間に因果関係があるとは認められないなどとして、請求を棄却した平成24年5月8日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)全文を紹介します。

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主  文 
1 原告の請求を棄却する。 
2 訴訟費用は原告の負担とする。 

事実及び理由
第1 請求
 
 被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成22年12月30日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 

第2 事案の概要等 
 本件は,原告が,原告とその亡夫であるA(以下「A」という。)の婚姻中,被告がAと不貞関係を持ったことが原因で,原告のAの妻としての権利,原告のAとの婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益が侵害され,Aと協議離婚するに至ったが,被告とA間に不貞関係があったことをAと協議離婚した後のA死亡後に知り,多大な精神的苦痛を被ったとして,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として慰謝料1000万円及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日(平成22年12月30日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 

1 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) 
(1) 原告(昭和15年○月○日生)は,亡夫であるA(昭和13年○月○日生)と昭和41年6月9日に婚姻し,Aとの間に長男B(昭和44年○月○日生)と二男C(昭和47年○月○日生)の二人の子をもうけたが,平成20年10月20日にAと協議離婚した(甲1,弁論の全趣旨)。 

(2) 被告(昭和28年○月○日生)は,昭和51年4月にa社に入社し,客室乗務員,チーフパーサーとして稼働してきたが,平成10年,肩書住所地にある料亭「b亭」を継ぐためにa社を退職し,以後,割烹「b亭」の女将として活動する傍ら,接遇企業研修の講師等の仕事をしている(乙1,弁論の全趣旨)。 

(3) Aは,日本大学経済学部卒業後,原告の兄が経営する会社に入社したが,昭和40年8月,原告の協力を得て株式会社c音楽事務所(以下「c音楽事務所」という。)を設立し,同社の代表取締役に就任した。c音楽事務所は,いわゆるタレント,歌手等が所属する芸能プロダクションであり,有名歌手,タレントを多く輩出した。Aは,c音楽事務所を拠点に事業を拡大し,種々の会社を立ち上げ,多くの事業を行ってきたが,平成21年11月ころより入院し,平成22年3月13日死亡した。(甲1,弁論の全趣旨) 

(4) 被告は,平成17年3月8日,コンサート及び音楽会の開催並びにそれらの引受仲介に関する業務等を目的とする有限会社d(以下「d社」という。)を設立し,被告が同社の代表取締役に,Aが同社の取締役にそれぞれ就任した(甲2,被告本人)。 

(5) 被告は,原告とAの婚姻中に,Aと肉体関係を持った。しかし,原告は,Aとの協議離婚後,Aが死亡した後に,Aが生前に被告と肉体関係を持っていたことを知った。(甲7,乙1) 

2 争点 
(1) 被告がAと不貞関係を結んだことが原告に対する不法行為に当たるか,原告のAとの婚姻共同生活平和維持の権利を侵害したといえるか。 

(2) 原告が被った損害。 

3 争点に関する当事者の主張 
(1) 争点(1)(被告がAと不貞関係を結んだことが原告に対する不法行為に当たるか等)について
 
ア 原告の主張 
 原告・A夫婦の一方配偶者であるAと肉体関係を持った第三者である被告は,故意又は過失がある限り,他方の配偶者である原告の妻としての権利を侵害し,その行為は違法性を帯び,他方の配偶者である原告が被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである(最高裁昭和54年3月30日第二小法廷判決・民集33巻2号303頁)。そして,この理は,第三者と一方配偶者との不貞関係が夫婦配偶者間の婚姻関係の破綻後のものといえない限り妥当するものである(最高裁平成8年3月26日第三小法廷判決・民集50巻4号993頁)。本件では,原告は,被告とAとの不貞関係について,Aとの婚姻中は知ることがなく,Aと協議離婚した後のAの死亡後にこれを知ることとなったものであるが,被告がAと不貞関係を有するに至ったのが原告・A間の婚姻関係の破綻後ではない以上,被告において原告の精神的苦痛を慰謝すべき義務が否定されることはない。 

 原告は,被告とAとの不貞関係を知らないうちに,Aと協議離婚しているが,被告とAの不貞関係は,相当長期間に及び,不貞の程度も深かったのであるから,Aが原告と協議離婚するに至った主たる理由が被告との不貞関係にあったことは明らかというべきであり,かかる被告とAとの不貞関係により原告の妻としての権利,Aとの婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益が侵害されたものである。そして,これにより原告が被った精神的苦痛は,原告がAと被告との不貞関係について知るに至った現時点において顕在化したということができる。このように,原告は,被告がAと不貞行為に及んだことにより,Aの妻としての権利が侵害され,遂にはAと協議離婚するに至り,Aの死亡後にこのことを知ったことにより精神的苦痛が顕在化したのであるから,被告に対し不法行為責任を追及することができる。 

イ 被告の主張 
 第三者が一方の配偶者と肉体関係を持つことが他方の配偶者に対する不法行為となるのは,それが他方の配偶者の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって,夫婦間の婚姻関係が既に破綻していた場合には,原則として,他方の配偶者にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえない(最高裁平成8年3月26日第三小法廷判決・民集50巻4号993頁)。この判例の考え方に立脚すれば,たとえ第三者が一方の配偶者と不貞関係を有するに至っても,その不貞関係が原因となって夫婦配偶者間の婚姻共同生活の平和が破壊されるという関係になければ,一方の配偶者との不貞関係は他方配偶者に対する不法行為には該当しないことになる。第三者と一方配偶者との合意による不貞行為は,それが原因となって夫婦婚姻共同生活の破綻という法益の侵害を招来した場合にのみ不法行為を構成するというべきである。 

 本件では,原告は,Aとはかねてより円満な婚姻関係にあったが,平成20年10月20日にAと協議離婚し,Aが平成22年3月13日死亡した後に,Aが被告と不貞関係を有していたことを知ったものであり,また,原告は,Aとの協議離婚後も,数か月間にわたりAと同居し,Aとの別居後もAの住居に家事のために通い,Aの死亡後も,Aの住居に居住していたというのであるから,原告とAが協議離婚するに至ったのは,夫婦間の婚姻関係が破綻したことが理由ではないことが明らかである上,その協議離婚の原因についても,被告とAの不貞関係とは何ら因果関係がないということができる。したがって,被告がAと不貞行為に及んだことは,原告に対する不法行為とはならないから,被告は原告に対して不法行為責任を負わない。 

(2) 争点(2)(原告が被った損害)について 
ア 原告の主張 
 被告がAと不貞関係を結んだことにより,原告とAとの婚姻共同生活の平和維持の権利が侵害され,原告とAは協議離婚するに至り,Aの死亡後にこのことを知った原告は多大な精神的苦痛を被ったものであり,かかる原告の精神的苦痛を金銭的に評価すると,慰謝料1000万円を下らない。 

イ 被告の主張 
 原告の上記主張は否認ないし争う。 

第3 当裁判所の判断 
1 前記第2の1の前提事実に各証拠(文中掲記)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 
(1) Aは,昭和40年8月,原告の貯金80万円を元手にc音楽事務所を設立し,Aが同社の代表取締役に,原告が同社の取締役にそれぞれ就任した。原告は,同社の経理,雑務,電話番,運転手など数多くの仕事をこなし,Aとの婚姻後は,これに加えて,家事も行っていた。Aがc音楽事務所の仕事に精を出し,同社の経営が軌道に乗り始めたころ,Aは,銀座のクラブに足繁く通ったり,自宅に頻繁に客を呼んでは食事を振る舞い,徹夜で麻雀を行うなど,収支を顧みない派手な生活を送るようになった。(甲7,原告本人) 

(2) 被告は,昭和51年4月にa社に入社し,客室乗務員等として稼働してきたが,遅くとも昭和60年ころに友人を通じてAと知り合い,Aと交際するようになり,Aから,c音楽事務所主催のコンサートに招待されたり,食事の誘いを受けたり,あるいは被告の海外へのフライトの際に,海外のアーティストのCD等の購入を依頼されるなど交際を続けていた(乙1,被告本人)。 

(3) 被告は,遅くとも昭和62年10月ころには,Aと肉体関係を持つようになり,昭和63年ころにはAに妻子がいることも承知するに至ったのに,平成10年7月ころまでAとの肉体関係を継続した。被告とAは,二人で食事をしたり,東京都新宿区四谷の被告の自宅で密会したり,ハワイやヨーロッパを旅行して逢瀬を重ねるなど親密な交際を続けていた。被告は,たびたびAからアクセサリーや時計などをプレゼントされたり,Aの経営するe社を経由して平成10年から約2年間にわたり毎月40万円の金員支給を受けるなど経済的に贅沢な交際をしていた。(甲5の1・2,6,被告本人[一部],弁論の全趣旨) 

(4) 被告の母親は,長野県飯田市内で甲山家の家業の割烹「b亭」を切り盛りしていたが,平成9年6月に死亡した。そこで,被告は,家業を継ぐため,平成10年9月にa社を退職して帰飯し,平成11年秋に「b亭」の建物を取り壊して新築し,同年12月に割烹「b亭」の女将として披露と新築オープンの催しをした。被告は,平成13年10月下旬ころから,再雇用制度でf社にて名古屋とホノルルの間を月2回乗務していた。(乙1,被告本人) 

(5) Aが経営するc音楽事務所は,東京都世田谷区野毛にある原告・A夫婦の自宅(以下「野毛の自宅」という。)を担保に供し,Aの連帯保証のもとで金融機関等から借入れをしていたが,平成13年ころ以降,業績がかなり悪化し,多額の負債を抱えるようになった。Aは,平成15年ころには,肝臓癌,糖尿病,高血圧,心臓病など多くの病気を抱え,手術を受けたり,原告の協力を得て病院に入通院するなどしていた。被告は,Aから懇願されて,平成15年12月下旬ころ,c音楽事務所に対し,1640万円を貸し付け,その後も,少なくとも数回にわたりc音楽事務所に金員を貸し付け,Aはこれらの貸金債務の連帯保証人になった。また,被告が経営するd社も,Aから懇願されて,平成19年2月下旬ころ,c音楽事務所に対し,3000万円を貸し付け,Aがこの貸金債務の連帯保証人になった。(甲1,7,乙1ないし3,原告本人,被告本人) 

(6) c音楽事務所は,平成19年ころには,1億円を超える多額の負債を抱え,資金繰りに窮し,借入金の返済の目途も全く立っていなかったため,原告・A夫婦の野毛の自宅が競売にかけられる可能性が高くなった。原告は,Aとの二人の生活を何とか維持していくため,原告とAの必要最小限の生活費を確保しなければならないと考えたが,他方で,原告自身はc音楽事務所の金融機関等に対する債務について連帯保証人になっていないものの,Aと法律上夫婦の関係を続けていけば,Aの妻として道義的にAの連帯保証債務を弁済していく必要に迫られ,原告とAの必要最小限の生活費すら維持確保できなくなるおそれがあると考えた。そこで,原告は,Aの債権者からの借入金返済請求に対し,道義的にもこれを拒絶するため,法律上もAとの婚姻関係を解消するのが良いと考え,Aと話合いの上,平成20年10月20日にAと協議離婚した。(甲7,原告本人,弁論の全趣旨) 

(7) 原告は,Aと協議離婚した後も,暫くの間は,離婚前と同様に,従前暮らしていた野毛の自宅でAと共に居住し,Aの食事の準備や病院への送迎などAの身の回りの世話を行い,自宅の掃除や後片付けをするなど,実質的には夫婦同然の生活を行っていた。その後,原告は,Aから野毛の自宅を出て行くよう告げられ,Aと別居したが,別居後もAの食事の準備や身の回りの世話をするため,野毛の自宅に通っていた。Aは,病気のため平成21年11月ころから病院に入院したが,この入院後も,原告は,Aの身の回りの世話をするため,同病院に通っていた。そして,原告は,Aが死亡してから平成23年10月ころまで,野毛の自宅に居住していた。(甲1,7,原告本人,弁論の全趣旨) 

(8) 原告は,Aとの婚姻中,被告とAが不貞関係を結んでいることを知らず,Aが死亡した後に,被告から生前のA宛に送られた手紙等を発見し,被告とAとの間に不貞関係があったことを知り,愕然とした(甲5の1・2,6,7,原告本人)。 

2 争点(1)(被告がAと不貞関係を結んだことが原告に対する不法行為に当たるか等)について 
(1) 前記認定事実によれば,被告とAは,遅くとも昭和62年10月ころから平成10年7月ころまで10年以上の長期間にわたり,親密でかつ経済的にも贅沢な不貞関係を継続していたことが認められる。そこで,上記のとおり10年以上の長期間にわたって続いた被告とAの不貞行為が原因となって,原告とAが平成20年10月20日に協議離婚するに至ったといえるか,すなわち,原告・Aの協議離婚と被告・Aの不貞関係との間に因果関係があるといえるかについて検討する。 

 前記認定事実によれば,原告とAの生活実態は,協議離婚の前後において実質的には何ら変化がなく,両名が共に野毛の自宅に居住し,原告がAの食事の準備を含めてAの身の回りの世話をするというものであったこと,原告とAが協議離婚をした理由は,原告とAが法的に婚姻関係を解消することにより,原告がAの債権者からの支払請求に対しもはや法律上も夫婦ですらないとして道義的にもこれを拒絶することにより,原告とAの二人の必要最小限の生活費を確保することにあったこと,被告とAが平成10年7月以降も不貞関係を継続していたと認めるに足りる証拠はないこと,以上のとおり認められる。

 このように,原告とAが協議離婚をするに至ったのは,原告とAの夫婦としての婚姻実態が破綻したからではなく,原告がAの債権者からの支払請求に対し道義的にもこれを拒絶することによって,原告とAの二人の共同生活のための費用を何とか維持確保していくためであったことが認められる。 
 上記認定事実によれば,原告・Aの協議離婚と被告・Aの不貞関係との間に因果関係があるとは認められない。 

(2) 原告は,第三者である被告が一方配偶者であるAと相当長期間にわたり深く不貞関係を結んでいたことから,他方配偶者である原告のAの妻としての権利,原告のAとの婚姻共同生活平和維持の権利が害されたことは明らかであると主張する。
 しかしながら,前記認定事実及び証拠(甲7,原告本人)によれば,原告とAは,多額の借財の問題はあったものの,協議離婚をするまでは,夫婦として婚姻実態のある家庭共同生活を営み,また,協議離婚後もAが死亡するまでは,原告が病弱なAを気遣いAの身の回りの世話を積極的に行うなど実質的に夫婦同然の生活を送り,さらに,原告は,A死亡後も平成23年10月ころまでは,かつてAと共同生活をしていた野毛の自宅に居住していたと認めることができるのであって,かかる原告とAの二人の生活状況あるいは原告の生活実態等に照らせば,被告とAとの不貞行為によって,原告の妻としての権利,原告のAとの婚姻共同生活平和維持の権利が大きく害されたとか,原告のAの元妻としての法的保護に値する利益が著しく害されたとは認められない。 

(3) したがって,被告がAと不貞関係を結んだことが原告に対する不法行為を構成するとはいえない。 

3 なお,本件において,原告は,Aの死亡後に,原告とAが婚姻中に,被告とAが長期間にわたり不貞関係にあったことを知ったこと自体によって精神的苦痛を被ったとして,かかる精神的損害に対する慰謝料を被告に対して請求する趣旨であると考えることもできる。しかしながら,この場合に,原告のいかなる権利が侵害されたといえるのかが明らかではなく,また,原告の精神的苦痛の具体的な内容も明らかではなく,かかる精神的苦痛を法的保護に値する損害として位置付けることも困難というべきである。 

4 結論 
 以上によれば,争点(2)(原告が被った損害)について判断するまでもなく,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 
 (裁判官 飯野里朗) 
以上:7,186文字

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