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別居中父母の一方が他方から違法に子を奪取した場合の監護者指定判例紹介

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平成28年 1月21日:初稿
○調停委員等からの事前の警告に反して周到な計画の下に行われた相手方及びその両親による子の奪取は、極めて違法性の高い行為であるといわざるを得ず、子の監護者を相手方に指定することは、そのような違法行為をあたかも追認することになるのであるから、そのようなことが許される場合は、特にそれをしなければ子の福祉が害されることが明らかといえるような特段の状況が認められる場合に限られるとした平成17年6月28日東京高裁決定(家月58巻4号105頁)全文を紹介します。

○夫婦関係が悪化して別居に至った場合、子の監護は、夫婦交替で行うことは先ず無理で、いずれか一方が行うのが通常です。妻が7歳の子を連れて別居したところ、妻が子と共に、子が通園していた幼稚園の通園バスを待っていたところ、夫が両親と共に自動車で待ち伏せをし、子を夫が強引に抱きかかえて、同車に乗せ奪取した事案で、妻が監護者と認められた例です。

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主  文
1 原審判を取り消す。
2 甲乙事件本人の監護者を甲乙事件抗告人と定める。
3 甲乙事件相手方の甲事件についての申立てを却下する。

理  由
第1 抗告の趣旨及び理由

 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告状(写し)及び即時抗告理由書(写し)記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 記録によれば次の事実が認められる。

(1) 甲乙事件抗告人(以下「抗告人」という。)は、前夫と同せい中の平成元年ころ甲乙事件相手方(以下「相手方」という。)と知り合い、前夫と平成2年2月に婚姻したが、同年5月ころには相手方と同せいし、平成4年に前夫と離婚した後、平成5年11月18日、相手方と婚姻した。

(2) 抗告人と相手方は、婚姻当初千葉県の○○○所在のマンションで同居していたが、平成7年6月に相手方の実家が改築されて以降、そこで、相手方の両親と共に4人で暮らすようになり、平成10年×月×日、長男である甲乙事件本人(以下「事件本人」という。)をもうけた。

(3) 抗告人は、事件本人を出産後1年間は育児休暇を取得し、事件本人の育児に専念した。抗告人は、その後には職場復帰したが、事件本人の育児を実妹に9箇月程度依頼し、事件本人が2歳になってからは同人を保育園に通園させ、その送迎は、朝抗告人が送っていき、夕方は相手方の両親に迎えを依頼していた。また、その間の日常の家事や事件本人の体の具合が悪いときの病院通いへの付き添い、保育園との連絡等事件本人の監護養育を主体的に行っていたのは抗告人である。

(4) 抗告人と相手方との間には、事件本人が2歳になって保育園に通うようになったころ以降特に、抗告人は相手方が家事や育児に非協力的であるとの不満を抱くようになり、他方、相手方は抗告人の異性関係についてさい疑心が強くなり、その異性関係をせん索する言動をひんぱんにするようになったこと等からたびたび口論を繰り返す等の不和状態を生じるようになった。抗告人は、相手方が抗告人の異性関係をせん索し、暴言、精神的暴力で抗告人を威圧することに耐えられないとして、平成16年11月8日、事件本人を連れて抗告人の実家(抗告人の両親の自宅)に行き、以後、相手方と別居するに至った(以下、この別居を「本件別居」という。)。

(5) その後、相手方は、抗告人の実家を訪れる等して抗告人に帰宅を促し、事件本人と面会しようとしたが、いずれも抗告人に拒否されたこと等から、平成16年11月19日、東京家庭裁判所に抗告人との夫婦関係を円満に調整することを求める調停の申立て(平成16年(家イ)第○○××号)をし、同月24日に本件審判(平成16年(家)第10225号「甲事件」)及び審判前の保全処分(平成16年(家ロ)第×××○号)の申立てをした。

(6) 抗告人は、実家に帰ってから主に抗告人の実母の協力の下に事件本人を実家近くの幼稚園に入園させ、バス通園をさせる一方、実家から勤務先会社に通勤しており、平穏な生活を営んでいた。ところが、平成16年12月20日朝、事件本人は、抗告人の実母と共に通園バスを待っていたところ、相手方が両親と共に自動車で待ち伏せをし、事件本人を相手方が強引に抱きかかえて、同車に乗せ奪取した。この事件本人の奪取という相手方の行動は、前記のとおり、調停、審判での解決を求めて申立てをし、調停委員会等から自力救済を禁止するように指導を受けている状況の下で行われたものである。相手方は、それ以降、相手方の自宅で、その両親の協力の下に事件本人を監護養育し、地元の保育園に通園させた後、平成17年4月5日に地元の□□小学校に入学させた。事件本人は、現在同小学校に通学している。相手方は、前記事件本人の奪取後、自ら申し立てた審判前の保全処分の申立てを取り下げた。

(7) そこで、抗告人は、東京家庭裁判所に平成16年12月20日本件審判(平成16年(家)第11185号「乙事件」)及び審判前の保全処分の申立て(平成16年(家ロ)第××○×号)をし、平成17年2月4日、相手方との離婚等を求める調停の申立て(平成17年(家イ)第×××号)をした。

 以上の各調停のほか、以上の本件審判事件も調停に付されたが、抗告人は、離婚、親権者を自己に指定すること、養育費、慰謝料の支払を請求し、事件本人の引渡しを求めたのに対し、相手方は、夫婦関係円満調整、監護者を自己に指定することを求めて相互に譲らず、平成17年2月23日、これらの調停はいずれも不成立で終了した。

(8) 抗告人の平成16年の収入は税込みで788万円余であり、その実父(64歳)は自動車運転手として稼働しており、実母(71歳)は無職である。父母はいずれも事件本人の監護養育に積極的に協力する意向である。抗告人の実家は、5階建て公団住宅の1階に住まいを構え、間取りは3DKである。

 これに対し、相手方の平成16年の収入は564万円余であり、その実父母(実父68歳、実母63歳)は無職であり、相手方の監護補助者として、現に事件本人の監護養育をしている。その自宅は4LDKである。

(9) 原審調査官が調査の際に事件本人に面接し、相手方から自力救済されたときの様子を聞き出したとき、事件本人は、当時を思い出すように興奮し、抱きかかえられたときに「ウオー」と叫んだと大声を出し、体を震わせて表現をしたことから、そのときの相手方らの行動が事件本人に相当の衝撃を与えたことがうかがわれる。

2 以上認定の事実に基づき、本件各申立ての当否について検討する。
 事件本人の監護者を抗告人と定めるかそれとも相手方と定めるかについては、いずれに指定するのが事件本人の福祉により適合するかどうかという観点から決定されるべきである。
 そこで、この観点に立って本件について検討するに、事件本人は現在7歳とまだ幼少の年齢であり、出生以来主に実母である抗告人によって監護養育されてきたものであって、本件別居により抗告人の実家に移ったが、相手方らによる事件本人の本件奪取時までの抗告人側の事件本人に対する監護養育状況に特に問題があったことをうかがわせる証拠はない(原審判は、抗告人が職業を有しているから、その勤務の都合上、日常的に事件本人に対し母性を発揮できる状況にないと判示しているが、何ら合理的根拠を有するものではない。

 また、原審判は、抗告人が審問の際、「事件本人が生まれたのは、脅されて関係を持ったからです。」と供述していることを挙げて、抗告人が果たして事件本人に対し母性を発揮することができるか疑わしいと判示しているが、これは相手方に対する思いから出た発言にすぎないとみられ、抗告人が事件本人に対し不当な扱いをしたり、監護養育を軽視している等同人の福祉を害する行為をしているとの事実をうかがわせる証拠はまったくないから、かかる判示も合理的根拠を欠くものといわざるを得ない。)。

 また、抗告人による本件別居を明らかに不当とするまでの事情は見当たらないから、事件本人の年齢やそれまでの監護状況に照らせば、抗告人が別居とともに事件本人を同行することはやむを得ないものであり、これを違法又は不当とする合理的根拠はないといわざるを得ない。そうすると、このような経緯で事件本人の監護養育状況が抗告人側にゆだねられることになったことが事件本人の福祉を害するということはできない。

 ところが、その後にされた相手方及び同人の実父母による事件本人の実力による奪取行為は、調停委員等からの事前の警告に反して周到な計画の下に行われた極めて違法性の高い行為であるといわざるを得ず、この実行行為により事件本人に強い衝撃を与え、同人の心に傷をもたらしたものであることは推認するに難くない。相手方は、前記奪取行為に出た理由について、抗告人が事件本人との面会を求める相手方の申し出を拒否し続け、面会を実現する見込みの立たない状況の下でいわば自力救済的に行われた旨を主張しているものと解せられるが、前記奪取行為がされた時点においては、相手方から抗告人との夫婦関係の調整を求める調停が申し立てられていたのみならず、事件本人の監護者を相手方に定める審判の申立て及び審判前の保全処分の申立てがされており、これらの事件についての調停が続けられていたのであるから、その中で相手方と事件本人との面接交渉についての話合いや検討が可能であり、それを待たずに強引に事件本人に衝撃を与える態様で同人を奪取する行為に出たことには何らの正当性も見い出すことはできない(原審判は、前記奪取行為が違法であることを認めながら、子の福祉を判断する上で必要な諸事情の中の一要素として考慮すべきであると判示するが、それまでの抗告人による監護養育状況に特段の問題が見当たらない状況の下で、これを違法に変更する前記奪取行為がされた場合は、この事実を重視すべきは当然のことであり、諸事情の中の単なる一要素とみるのは相当ではない。)

 そうすると、このような状況の下で事件本人の監護者を相手方と定めることは、前記明らかな違法行為をあたかも追認することになるのであるから、そのようなことが許される場合は、特にそれをしなければ事件本人の福祉が害されることが明らかといえるような特段の状況が認められる場合(たとえば、抗告人に事件本人の監護をゆだねたときには、同人を虐待するがい然性が高いとか、抗告人が事件本人の監護養育を放棄する事態が容易に想定される場合であるとか、抗告人の監護養育環境が相手方のそれと比較して著しく劣悪であるような場合)に限られるというべきである。しかるに、本件においては、このような特段の事情を認めるに足りる証拠はない。

 そうすると、事件本人の監護者は抗告人と定めるのが相当であり、したがって、その監護者を相手方と定める申立ては理由がない。しかるに、甲事件について事件本人の監護者を相手方と定め、乙事件について事件本人の監護者を抗告人と定める抗告人の本件申立てを却下した原審判は不当であり、取消しを免れない。

3 結論
 よって、本件抗告は理由があるからこれに基づき甲乙事件抗告人の乙事件についての申立てを認容し、甲乙事件相手方の甲事件についての申立てを却下することとし、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 秋山壽延 裁判官 堀内明 志田博文)

以上:4,662文字

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