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婚姻費用算定に参考になる平成27年9月28日東京家裁審判全文紹介

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平成27年11月19日:初稿
○先日、当HPを見たという方から、養育費についての細かい質問を受けました。細かいところは電話質問では曖昧な答えにならざるを得ませんでした。河原崎法律事務所HPの婚姻費用算定表に基づいた計算機なんてサイトもありますが、通常、東京・大阪の裁判官の共同研究の結果,作成された「養育費・婚姻費用算定表」で算定します。

○この「養育費・婚姻費用算定表」の利用の仕方は、大阪家庭裁判所「養育費・婚姻費用算定表についての解説」に懇切丁寧に解説がなされています。ですから、婚姻費用・養育費についても、弁護士に相談しなくてもネットを見るとおおよそ見当がつきます。婚姻費用・養育費の計算方法は、、先ず、税込収入から「公租公課」、「職業費」および「特別経費」を控除した金額である「婚姻費用・養育費を捻出する基礎となる収入」を算出し、この「基礎収入」を前提に一定の計算式で計算するのが原則です。

○しかし、「養育費・婚姻費用算定表」は、「基礎収入」算定、計算式挿入等の面倒な手間を省いて、現実の給与収入・事業所得収入が判れば一定範囲の婚姻費用・養育費の目処がつくようになり、実際、家裁実務ではこの「養育費・婚姻費用算定表」を利用して、婚姻費用・養育費が算定されています。しかし、審判になると単に「養育費・婚姻費用算定表」によればでは、理由づけとしては不十分で、「基礎収入」算定、計算式挿入をしなければなりません。その参考になる平成27年9月28日東京家裁審判全文(ウエストロー・ジャパン)を紹介します。

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主  文
1 相手方は,申立人に対し,平成26年12月から平成27年8月までの未払婚姻費用として180万円を支払え。
2 相手方は,申立人に対し,平成27年9月から,当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで,毎月末日限り,月額20万円を支払え。
3 手続費用は,各自の負担とする。

理  由
第1 申立ての趣旨

相手方は,申立人に対し,婚姻期間中の生活費として,毎月18万円(なお,請求額は後に増額されている。)を支払え。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 本件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1) 申立人(昭和42年○月○日生)と相手方(昭和43年○月○日生)は,平成15年4月8日に婚姻した夫婦である。

(2) 申立人と相手方は,申立人住所地で同居していたが,平成25年2月頃に別居し,以後,別居状態が続いている。

(3) 申立人は,平成26年12月26日,相手方に対し,婚姻費用の支払を求めて調停を申し立てた(当庁平成26年(家イ)第10898号婚姻費用分担調停事件。以下「本件調停」という。)が,平成27年4月28日,調停不成立となり,本件審判に移行した。

(4) 申立人は,平成15年頃から株式会社a(以下「a社」という。甲3)の代表取締役を務めており,役員報酬として,平成25年に1200万円を(甲48),平成26年1月から同年3月まで300万円を得たが(甲47),同年4月12日に解任された(甲4,乙21)。同解任後,相手方がa社の代表取締役に就任した(甲4,乙21)。

(5) 相手方は,平成26年にa社から360万円の給与収入を得た(乙1)ほか,相手方の父から相続した不動産の賃料として2333万3685円(青色申告特別控除額10万円の控除前の所得金額)の収入を得た(乙8)。
 相手方の平成26年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書B(乙8)によれば,「所得から差し引かれる金額」のうち「社会保険料控除」額は262万3150円(同申告書⑫)であり,不動産収入5163万0163円から必要経費として控除されている費目のうち,減価償却費は1085万3470円(乙8・損益計算書⑧),借入金利子は467万4138円(乙8・損益計算書⑨)である。
 また,相手方は,上記不動産取得に係る借入金債務の弁済として,平成26年に元利金合計4051万1976円を支払った(乙3の1から8まで)。

(6) 相手方は,本件調停申立て以降,申立人に対し,婚姻費用の支払をしていない。

2 判断
(1) 夫婦は,互いに協力し扶助しなければならないところ(民法752条),別居した場合でも,自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務を負う。そして,本件の経緯等に照らすと,本審判において形成すべき婚姻費用分担金は,申立人が本件調停を申し立てた平成26年12月分からと認めるのが相当である。この点について,申立人は,相手方の有責性が著しく,相手方によって一方的に無収入とされた申立人の経済的保護の必要性が極めて高いことなどを理由として,本件における婚姻費用分担の始期は,別居を開始した平成25年2月とすべきであると主張する。しかし,当事者間の公平の見地からは,請求時を始期とするのが相当であり,申立人の指摘する各事情を考慮しても,請求時以前に遡って相手方に婚姻費用を分担させることが相当であるとまではいえない。

 次に,婚姻費用分担額の算定方法について検討すると,同算定に当たっては,申立人と相手方との総収入を基礎として,公租公課を税法等で理論的に算出される標準的な割合により算出し,職業費及び特別経費を統計資料に基づいて推計される標準的な割合により算出してそれぞれ控除して基礎収入の額を定め,その上で,申立人と相手方とが同居しているものと仮定すれば,権利者である申立人のために充てられたはずの生活費の額を,生活保護基準等から導き出される標準的な生活費指数によって算出し,これから申立人の基礎収入を控除して,義務者である相手方の分担額を算出するのが相当である。

 このような考え方に基づいて東京・大阪養育費等研究会が作成した算定表(「簡易迅速な養育費等の算定を目指して」判例タイムズ1111号285頁以下参照。以下「算定表」という。)が公表され,実務において広く利用されているところ,本件においても,上記の考え方に基づいて婚姻費用の分担額を算定するのが相当である。

(2) 以上を前提として相手方の婚姻費用の分担額を算定すると,まず,前記1(4)のとおり,申立人は,平成26年の給与収入として300万円を得ていることから,基礎収入割合を38パーセントとすると,その基礎収入は,114万円となる(300万円×0.38)。
 他方,前記1(5)のとおり,相手方は,平成26年に,給与収入として360万円を得ているほか,事業所得として2333万3685円(青色申告特別控除額10万円の控除前の所得金額)の不動産収入を得ていることが認められるため,上記給与所得を事業所得に換算すると,算定表上,260万円程度となる。

 また,平成26年中の不動産収入から控除されている必要経費のうち減価償却費1085万3470円は,時の経過又は使用により価値の損耗又は減耗を生じる建物等についてその取得費用を徐々に費用化して配分するものであって,現実の支出を伴うものではないから,婚姻費用の前提となる収入を算定するに当たって,これを控除するのは相当でないというべきであり,同様の観点から,青色申告特別控除額10万円を控除するのも相当でないというべきである。他方,税務上必要経費とされていない不動産取得のための借入金の元本分の返済については,現実に支出されていることから,少なくとも同返済額の一部については不動産収入から控除するのが相当である。

 そうすると,本件において,相手方の不動産賃料収入5163万0163円から必要経費及び青色申告特別控除額を控除した金額は2323万3685円であるが(乙8),これに減価償却費1085万3470円及び青色申告特別控除額10万円を加算すると,3418万7155円となる。

 そして,相手方は,平成26年に元利金合計4051万1976円の借入金債務を弁済しているところ,同弁済額から,必要経費として控除されている借入金利子467万4138円を控除した3583万7838円については,現実に支出されているものであるから,その約6割に相当する2150万2702円については,上記不動産収入から控除するのが相当である。

 以上によれば,相手方の不動産収入は1268万4453円(3418万7155円-2150万2702円)となり,これから社会保険料262万3150円を控除すると,1006万1303円となる。
 以上得られた金額に,a社からの給与所得を事業所得に換算した結果である260万円を加算すると,相手方の事業収入は,1266万1303円(1006万1303円+260万円)となる。そして,その基礎収入割合を47パーセントとすると,相手方の基礎収入は,595万0812円となる(1266万1303円×0.47)。

(3) 以上を踏まえて,申立人の基礎収入を114万円,相手方の基礎収入を595万0812円とし,申立人及び相手方の生活費指数をそれぞれ100として,相手方の婚姻費用分担額を算出すると,以下のとおり,月額20万円となる。
 (計算式)(114万円+595万0812)×100÷(100+100)=354万5406
 (354万5406-114万)÷12≒20万0450

(4) 相手方は,相手方の不動産収入は,相手方の父から相続した不動産から生じているものであるから,相手方の特有財産であり,婚姻費用分担額の算定に当たって相手方の総収入に算入すべきでないと主張する。しかしながら,婚姻費用分担額は,夫婦である当事者双方の継続的収入に基づいて算定するものであって,その収入が特有財産から得られるものであるからといって,これを除外して分担額を算定するのは相当でないというべきである。
 したがって,相手方の上記主張は理由がない。

3 結論
 以上によれば,相手方は,申立人に対し,平成26年12月から平成27年8月までの未払の婚姻費用として合計180万円(20万円×9か月)及び同年9月から当事者が離婚又は別居状態の解消に至るまでの婚姻費用として毎月20万円をそれぞれ支払うべきこととなる。
 よって,主文のとおり審判する。
 (裁判官 小堀瑠生子)

 
以上:4,182文字

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