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別居2年未成熟子2名の有責配偶者離婚を認めた東京高裁判決全文紹介2

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平成27年 2月16日:初稿
○「別居2年未成熟子2名の有責配偶者離婚を認めた東京高裁判決全文紹介1」を続けます。



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(3) 有責配偶者からの離婚請求について
ア 本件では、上記のとおり、控訴人と被控訴人との婚姻関係は既に破綻しており、民法770条1項5号所定の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するというべきであるが、被控訴人は、控訴人は夫以外の男性と交際しており、そのために被控訴人との離婚を求めているものであって、いわゆる有責配偶者に該当するから、控訴人からの離婚請求は信義則に反するものとして認められるべきではないと主張しているので、この点について検討する。

イ まず、控訴人は、被控訴人との婚姻関係は平成21年8月又は平成23年9月には既に破綻していたと主張している。しかし、上記認定のとおり、控訴人は、平成23年3月11日の東日本大震災の後、その被害を恐れて未成年者らを連れてフランスの控訴人の実家に避難していたのであるが、同年5月には、被控訴人は、控訴人と未成年者らに会うためにフランスに出向き、その際、控訴人と被控訴人は、未成年者らを控訴人の両親に預けて二人でバルセロナ旅行に行くなどしていたのであるから、その時点では、まだ婚姻関係が修復される可能性が残っていたことは明らかである。

 しかも、その後も控訴人と被控訴人の婚姻関係はギクシャクしていたものの、亀裂が決定的というほどではなかったのであって、控訴人は平成24年5月30日に別居を開始しているから、その直前に婚姻関係を破綻に導くような出来事があったと考えるのが自然であるところ、控訴人は、平成23年10月から12月頃にCと交際し、さらに平成24年3月頃にはDと交際するようになって、被控訴人に対して離婚してほしいと伝えているのであるから、控訴人と被控訴人の婚姻関係が決定的に破綻したのは、主に控訴人がCやDと不貞行為に及んだためであるというべきである。したがって、平成21年8月又は平成23年9月の時点で既に2人の婚姻関係は破綻していたとの控訴人の主張を採用することはできない。その意味で、控訴人は有責配偶者であり、控訴人による本件離婚請求は有責配偶者からの離婚請求ということになる。

ウ ところで、民法770条は、裁判上の離婚原因を制限的に列挙していた旧民法(昭和22年法律第222号による改正前の明治31年法律第九号。以下同じ。)813条を全面的に改め、1項一号ないし四号において主な離婚原因を具体的に示すとともに、五号において「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」との抽象的な事由を掲げているところ、同条二項は、法定の離婚原因がある場合でも離婚の訴えを提起することができない事由を定めていた旧民法814条ないし817条の規定の趣旨の一部を取り入れて、1項一号ないし四号に基づく離婚請求については、各号所定の事由が認められる場合であっても、2項の要件が充足されるときは離婚請求を棄却することができるとしているのであるが、1項五号に基づく請求についてはかかる制限は及ばないものとしているのであって、民法770条の立法経緯及び規定の文言からみる限り、同条1項五号は、夫婦が婚姻の目的である共同生活を達成し得なくなり、その回復の見込みがなくなった場合には、夫婦の一方は他方に対して、訴えにより離婚を請求することができる旨を定めたものと解されるのであって、同号所定の事由(以下「五号所定の事由」という。)につき何らかの責任のある一方の当事者は、いかなる場合でも離婚を請求することができないとまで定めたものではないというべきである。

 もっとも、五号所定の事由がありさえすれば常に離婚請求が認められるとすると、自らその原因となるべき事実を作出した一方の配偶者において、そのことを自己に有利に利用して一方的に他方の配偶者に対して離婚を求めることができる事態となって、他方の配偶者の立場を著しく不安定なものとして、夫婦間の信義則に反する結果となるから、そのような離婚請求を許容するべきではないことはいうまでもない。そして、憲法24条の趣旨に照らし、婚姻は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことを本質とするものであるから、夫婦の一方又は双方が既にその意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠き、その回復の見込みが全くない状態に至り、もはや社会生活上の実質的基礎を失っている場合においてまで、なお戸籍上の婚姻を存続させることは不自然であり、不合理であるといわざるを得ないが、それと同時に、婚姻関係が法律秩序の一環である以上、その離婚請求が正義や公平の観念、社会的倫理の観念に反し、信義誠実の原則に反するものであるときは、これを許容することは相当ではないというべきである。

 そして、五号所定の事由による離婚請求が、その事由につき専ら責任のある一方の当事者(有責配偶者)からなされた場合において、その請求が信義誠実の原則に照らして許容されるか否かを判断するに当たっては、有責配偶者の責任の態様・程度はもとより、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、特に未成熟子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係等が斟酌されるべきである(最高裁昭和61年(オ)第260号同62年9月2日大法廷判決(民集41巻6号1423頁)。

 そして、これまでそのような有責配偶者からの離婚請求が否定されてきた実質的な理由の一つには、一家の収入を支えている夫が、妻以外の女性と不倫や不貞の関係に及んで別居状態となり、そのような身勝手な夫からの離婚請求をそのまま認めてしまうことは、残された妻子が安定的な収入を断たれて経済的に不安定な状態に追い込まれてしまい、著しく社会正義に反する結果となるため、そのような事態を回避するという目的があったものと解されるから、仮に、形式的には有責配偶者からの離婚請求であっても、実質的にそのような著しく社会正義に反するような結果がもたらされる場合でなければ、その離婚請求をどうしても否定しなければならないものではないというべきである。

エ そこで、上記のところを踏まえて本件について検討すると、本件で離婚を望んでいるのは、妻である控訴人であり、控訴人と被控訴人の婚姻関係が決定的に破綻したのは、主に控訴人がCやDと不貞行為に及んだことが直接の原因ではあるものの、上記認定のとおり、最初に離婚を切り出したのは被控訴人であり、しかも、控訴人に被控訴人の言うことを聞かせようとして、被控訴人が控訴人の携帯電話やメールやクレジットカードを使えなくするなど実力行使に出て、控訴人の人格を否定するような行動をとったため、控訴人において被控訴人に対する信頼を失い、夫婦としての亀裂が急速に拡大していったものであって、控訴人がもはや被控訴人と婚姻関係を継続することはできないと考えるようになり、CやDと交際するようになったことについては、フランス人として個人の自由や権利を尊重することを当然のこととする控訴人の気持ちや人格に対する十分な理解や配慮を欠き、控訴人を追い詰めていった被控訴人にも相応の原因があるというべきであり、控訴人と被控訴人との婚姻関係が破綻した責任の一端が被控訴人にもあることは、明らかというべきである。

 そして、控訴人と被控訴人の間には、現在6歳の長男と4歳の長女がいるが、控訴人としては、働きながら両名を養育監護していく覚悟であることが認められるところ(証拠〈省略〉)、後記認定のとおり、控訴人による養育監護の状況等に特に問題もないことを考慮すれば、控訴人の本件離婚請求を認容したとしても、未成年者の福祉が殊更害されるものとは認め難いというべきである。また、本件では、被控訴人は、もともと控訴人との離婚を求めていた経緯があるだけではなく、後記認定のとおり、平成25年度において約961万円の年収があり、本件離婚請求を認めたとしても、精神的・社会的・経済的に著しく不利益な状態に立ち至るわけでもないと考えられる。

 そうすると、本件については、確かに、形式的には有責配偶者からの離婚請求ではあるものの、これまでに述べた有責配偶者である控訴人の責任の態様・程度はもとより、相手方配偶者である被控訴人の婚姻継続についての意思及び控訴人に対する感情、離婚を認めた場合における被控訴人の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子である未成年者らの監護・教育・福祉の状況、別居後に形成されている相互の生活関係等を勘案しても、控訴人が求めている離婚請求は、社会正義に照らして到底許容することができないというものではなく、夫婦としての信義則に反するものではないというべきである。したがって、本件離婚請求は理由があり、認容するのが相当である。

四 附帯処分について
(1) 親権者の指定

 上記認定の事実及び証拠〈省略〉によれば、長男は現在6歳で、平成26年4月に小学校に入学し、英語教室と空手教室に通っていること、長女は現在4歳で保育園に行きながら、空手教室に通っていること、控訴人が被控訴人と別居してから約2年が経過しているところ、未成年者らはいずれも健康体で、心身ともに特段の問題もなく控訴人と一緒に生活していること、他方、被控訴人は、仕事が忙しく、海外出張もあるなど、継続的かつ安定的に未成年者らの養育監護をすることは困難であることなどの事情が認められるのであって、これまでも主に控訴人が未成年者らの養育監護に当たってきたことや、現在の控訴人による養育監護の状況が未成年者らの福祉に反することを具体的にうかがわせる事情はなく、これを変更する特段の理由がないこと、未成年者らがまだ幼く、母である控訴人を愛着の対象として必要としていることなど、諸般の事情を考慮すると、本件では、未成年者らの親権者をいずれも控訴人と定めるのが相当である。そし

、被控訴人と未成年者らとの父子関係は、面会交流を充実させることによって維持発展させるのが相当であり、未成年者らの福祉にとっても必要なものであるから、控訴人は、被控訴人と未成年者との今後の面会交流については、できるだけ寛容な態度で臨み、未成年者らの福祉に反することのないよう十分に配慮すべきである。

(2) 養育費
 証拠〈省略〉によれば、控訴人は、フランス語教師や私立高校教師等として稼働し、平成25年分の確定申告書(証拠〈省略〉)によれば、その収入金額は、営業等が32万7000円、給与が72万2880円の合計104万9880円であるが、課税される所得金額は0円であること、被控訴人は、丁原株式会社に勤務し、平成25年分の給与所得の源泉徴収票によれば、その支払金額は961万3500円であることが認められるから、控訴人の総収入を給与相当額の72万2880円とし、被控訴人の総収入を961万3500円として、いわゆる算定表(「簡易迅速な養育費等の算定を目指して」(判例タイムズ1111号285頁以下参照)の「表三 養育費・子二人表(第一子及び第二子0~14歳)」)により、養育費を算定すると、12~14万円の範囲内となるので、被控訴人が控訴人に対して支払うべき養育費の額は、長男及び長女がそれぞれ成人に達する日の属する月まで、1人当たり月額6万円ずつとするのが相当である。

五 結論
 よって、以上のところと異なる原判決は相当ではないから、これを取り消した上、控訴人の離婚請求を認容するとともに、付随的処分として、未成年者らの親権者をいずれも控訴人と定め、被控訴人に対し、その養育費として1人当たり月額6万円の支払を命ずることとして、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 須藤典明 裁判官 小川浩 小濱浩庸)



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