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過去5年間扶養料求償を認めた昭和61年9月10日東京高裁決定全文紹介

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平成26年12月19日:初稿
○扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が他の扶養義務者に対し過去の扶養料の求償を求めた事案において、調停申立時から5年前に遡った時点以降の求償を認めた昭和61年9月10日東京高裁決定(判タ637号189頁、判時1210号56頁、昭60(ラ)292号)全文を紹介します。

○事案は、兄弟姉妹間の過去の扶養料の求償請求の扶養審判事件の抗告審決定であり、当事者はいずれも成人の兄弟姉妹で、扶養権利者が事件本人のA女(○○市内の精神病院入院中)、扶養義務者がX1女(一審申立人、二審相手方、○○市居住)、X2女(一審申立人、二審相手方、△△市居住)及びY男(一審相手方、二審抗告人、□□市居住)である。X1、X2が昭和36年7月からAの国民年金掛金の分担支払いという方法でAに扶養料を支払ってきたとして、Yに対し過去の扶養料の求償を求め、さらにX1はAの保護義務者としてYに対し将来の扶養料の支払いを求め、原審の浦和家裁がこれを一部認容したので、Yが本件の即時抗告を申し立てたものです。

○昭和61年9月10日東京高裁決定は、Aの生活費用については、X1が本件調停の申立てをした時点から5年前に遡った時点以降の分について各当事者の費用の負担額を定め、X1らが既に支出したAの生活費用のうちYが負担すべき部分について、X1らからYに対する求償を認め、将来の生活費用についても、X1がすべて現実の支弁を担当することを前提として、Yに同様の給付を命ずるのが相当であると判示しました。

○過去の扶養料の請求時期については、扶養要件具備時説、請求時説、調停又は審判申立時説、審判時説、審判確定時説などがあります。生活保持義務である未成熟子扶養とか婚姻費用分担については扶養要件具備時説が有力ですが、本件のような親族扶養の場合には、一般に生活扶助義務の性質を有すると解されていることもあり、請求時説が通説と言われています(島津一郎編著・判例コンメンタール6民法Ⅳ親族948頁以下、958頁以下等参照)。

○なお、扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が他の扶養義務者に対して過去の扶養料を求償する場合でも、各自の扶養分担額は、協議が調わない限り家庭裁判所が審判で定めるべきで、通常裁判所が判決手続で定めることはできないとするのが判例です(昭和42年2月17日最高裁判決、判タ205号86頁、判時477号12頁、民集21巻1号133頁)。

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主   文
一 原審判中相手方乙野春子に対する金員の支払を命じた部分を次のとおり変更する。
 1 抗告人は、相手方乙野春子に対し139万7000円を支払え。
 2 抗告人は相手方乙野春子に対し、事件本人の扶養料として昭和59年1月から毎月末日限り各2万1000円を支払え。
二 相手方甲野夏子に対する本件抗告を棄却する。 

理   由
一 抗告人の抗告の趣旨及び理由は別紙抗告状記載のとおりであるが、その理由の要旨は、次のとおりである。
1 原審の手続において丙原一郎弁護士は、昭和57年(家)第1737号事件については相手方春子を代理し相手方夏子及び抗告人を相手方として扶養の審判を申立て、昭和59年(家)第427号事件については相手方夏子を代理し相手方春子及び抗告人を相手方として扶養の審判を申立てた。右は双方代理であつて、違法である。抗告人は右双方代理の当事者ではないが、右双方代理により相手方春子が不当に利益を得る結果、抗告人に対しても不利な影響を与えたものと考えられる。したがつて、これを看過してなされた原審判は違法である。

2 抗告人と相手方夏子とは、昭和30年抗告人が結婚するに際し母フユ及び事件本人の扶養について協議し、母は抗告人が、事件本人は相手方夏子がそれぞれ扶養することを合意し、抗告人はこの合意に従い母を昭和37年6月6日同人が死亡するまで扶養した。相手方春子は相手方夏子から前記の合意のことを聞いてこれを了承していたものである。したがつて、抗告人は事件本人を扶養する義務がない。

3 審判手続において過去の扶養料の求償請求ができるのは、請求時以後の分に限られるというべきである。したがつて、相手方春子から抗告人に対する扶養料の求償が認められるとしても、それは第一回審判期日である昭和59年1月12日以降の分に限られるべきであり、また、抗告人は相手方夏子の申立があつたことを原審判書が送達されるまで知らなかつたのであるから、相手方夏子から抗告人に対する扶養料の求償は認められるべきではない。しかるに、原審が相手方春子が本件扶養調停の申立をしたときから5年も遡つて相手方らの扶養料の求償請求を認容したのは、違法である。

4 抗告人に事件本人を扶養する義務があるとしても、各当事者が負担すべき費用の額を決定するに当たつては、抗告人が前記合意に従い母を扶養したこと、一時期事件本人の扶養料を相手方春子に送金していること、事件本人は昭和57年7月6日以降国民年金(老齢年金)を受給していることなどを考慮すべきであるのに、原審がこれらの点を考慮せずに、抗告人に対し相手方らの負担額と均衡を失した高額な費用の負担を命じたのは違法である。

5 事件本人は、遅くとも昭和65年3月以降は老人保健法に基づく医療給付を受けることができるから、それ以降は健康保険自己負担部分は不要となる。したがつて、抗告人が事件本人の健康保険自己負担部分の一部を負担しなければならないとしても、それは遅くとも昭和65年2月までに限られるべきである。しかるに、原審は終期を付すことなく抗告人に対し将来の扶養料の負担を命じたものであつて、違法である。

二 そこで、判断するに、まず、抗告人は、丙原一郎弁護士が双方代理をしているから、原審判の手続は違法である旨主張する(抗告理由1)。しかしながら、抗告人主張の双方代理関係が生ずるとしても、それは相手方春子と同夏子との間の扶養審判申立事件に関することであり、そのことは直ちに抗告人と相手方らとの間の扶養審判申立事件の審判手続を違法ならしめるものではないのみならず、本件記録によれば、右代理の点につき相手方相互間に異議はなく、更に本件の経過、結果からみても、抗告人に実質的不利益を与えた形跡は認められない(なお後記四参照)。抗告人の右主張は失当である。

三 事実関係について当裁判所が認定したところは、次に付加するほか原審判理由2と同一であるから、これを引用する。
 本件記録及び当審における相手方春子の審尋の結果によれば、次の事実が認められる。
1 抗告人は、昭和30年3月結婚して後その母フユに送金をし、また、昭和33年2月ころから昭和34年8月ころまで同居して面倒をみていたが、それ以降はフユは相手方春子、乙野次郎夫婦方に同居し、同夫婦がフユを昭和37年6月同人が死亡するまで世話をしたものであり、抗告人はフユが乙野方に移つた後数か月毎月5000円程度送金したにとどまつたこと。

2 相手方らは、昭和36年7月から昭和55年1月まで事件本人のため国民年金の掛金を半額ずつ負担して支払つており、その金額は、昭和52年4月から昭和53年3月までの分3万1200円(一か月当たり2600円)、同年4月から昭和54年3月までの分3万7560円、同年4月から昭和55年1月までの分3万7000円であること。

3 事件本人は昭和57年7月から国民年金(老齢年金)の支払を受けており、その額は昭和57年中20万3466円(七か月分、月平均約2万9066円)、昭和58年中35万4500円、昭和59年中35万8408円(月平均約2万9867円)、昭和60年中36万8141円(月平均約3万0678円)であること。

4 事件本人の医療費のうちの健康保険自己負担額は、昭和59年の国民健康保険法の改正に伴い同年10月分から減額になり、月平均約3万8000円となつているが、他方入院雑費の額は月平均約1万5000円に増えていること。

5 相手方春子は、宇都宮市に居住し、一か月に一回程度手土産を持つて同市内の○○病院に在院する事件本人に面会に行き、必要な衣類等を整え、病院との関係を処理するなど世話を見てやつており、それらの費用は最近では平均すると一か月8000円程度になること。

四 以上認定の事実に基づき判断するに、事件本人は扶養を必要とするものであり、その実際の世話は今後も相手方春子が行うのが相当であるが、事件本人の医療費等の生活費用はその兄弟姉妹である各当事者が共同で負担すべきものと考えられる。
 抗告人は、昭和30年ころ各当事者間で、抗告人が母を扶養する、事件本人の扶養義務を負わないという協議が整つているかのごとく主張し(抗告理由2)、原審における審問において抗告人はこれに沿う供述をし、その提出した陳述書にもその旨の記載がされているが、これらは書面等の裏付けがあるわけではなく、原審における相手方らの審問の結果等に照らしてにわかに信用することができず、他に右抗告人主張事実を認めるに足りる資料はない。

五 当裁判所も、前記事件本人の生活費用については、相手方春子が本件調停の申立をした昭和57年6月から5年前に遡つた昭和52年6月以降の分について各当事者の費用の負担額を定め、相手方らが既に支出した事件本人の生活費用のうち抗告人が負担すべき部分について、相手方らから抗告人に対する求償を認め、将来の生活費用についても、相手方春子がすべて現実の支弁を担当することを前提として、抗告人に同様の給付を命ずるのが相当であると判断する。その理由は、次に付加するほか原審判理由3(1)(2)((2)の最後の三行を除く。)と同じであるから、これを引用する。

 抗告人は、審判手続において扶養料の求償ができるのは、請求時以降の分に限られるべきである旨主張する(抗告理由3)。しかしながら、要扶養者の扶養料のうち本来他の扶養義務者が負担すべき額を現実に支出した扶養義務者は、その扶養料を負担すべき扶養義務者に対しこれを求償することができ、この求償請求に関し審判の申立があつた場合どの程度遡つて求償を認めるかは、家庭裁判所が関係当事者間の負担の衡平を図る見地から扶養の期間、程度、各当事者の出費額、資力等の事情を考慮して定めることができるものと解するのが相当であつて、抗告人の右主張は理由がない。なお、抗告人は、相手方夏子の申立を知らなかつたというが、家事審判手続では申立書等を送達する必要がないから手続上違法の問題を生じないうえ、記録によれば、抗告人は審判期日に第一回を除き出頭しなかつたことが認められ(第三回以降夏子の申立を併合)、更に事案の性質上及び本件調査の進行により、抗告人は夏子の意向を把握していたことがうかがわれるから、夏子との関係で問題はない。

六 そこで、事件本人の扶養料として各当事者が負担すべき額いかんについて検討するに(抗告理由4)、相手方春子が事実上の保護義務者として事件本人の世話をしていること、相手方春子の夫次郎、相手方夏子、抗告人の各収入、それぞれの家庭の事情その他前記認定の諸般の事情をしんしやくし、かつ、事件本人の国民年金及びその掛金の点を合わせ検討すれば、事件本人の生活費用について各当事者に次のとおり負担させるのが相当である。

1 昭和52年6月から事件本人が国民年金の支払を受けるようになる前の昭和57年6月まで(61か月)
(1)健康保険自己負担額各月分3万9000円(相手方らの各支払額1万9500円)のうち三分の二に当たる2万6000円を抗告人が、その余の1万3000円を相手方夏子が分担する。(2)昭和52年6月から昭和55年1月までの国民年金掛金(後記事件本人の国民年金を差引く関係上、その掛金を費用と見るべきである。)合計10万0560円(相手方らの各支払額5万0280円)のうち3分の2に当たる6万7040円を抗告人が分担し、その余の3万3520円を相手方らが各二分の一(1万6760円)ずつ分担する。(3)その余の生活費用はすべて相手方春子が負担する。

 したがつて、抗告人が右期間中の事件本人の扶養料として相手方春子に支払うべき金額は合計122万3020円(健康保険自己負担額の春子支出分一か月当たり1万9500円の61か月分118万9500円と、国民年金掛金の春子支出分から同人負担額を差引いた3万3520円との合計)、相手方夏子に支払うべき金額は合計43万0020円(健康保険自己負担額の夏子支出分から同人負担額を差引いた一か月当たり6500円の61か月分39万6500円と、国民年金掛金について春子の場合と同様に算出した3万3520円との合計)となる。

2 事件本人が国民年金の支払を受けるようになつた昭和57年7月以降事件本人の生活費用から国民年金の受領額を差引いた生活資金の不足額のうち三分の二を抗告人が、その余の各二分の一を相手方らが分担する。

 ところで、前記認定の事実によれば、健康保険自己負担額及び雑費等を合わせた事件本人の一か月分の生活費用の額は、おおむね、昭和57年7、8月は4万9000円、同年9月から同年12月までは5万5000円、昭和58年1月以降は6万1000円と見ることができ、そのうち昭和58年12月までの分について相手方らはおおよそその各二分の一の金額を支出しているものと認めるのが相当である。そうすると、各当事者の分担額及び抗告人が相手方らに対し支払うべき金額は以下のとおりになる。

(1) 昭和57年7、8月分(二か月)
生活費用の額 合計9万8000円
年金額 合計5万8132円
不足額 3万9868円
抗告人の分担額 2万6578円
相手方らの分担額 各6645円
抗告人が相手方らに支払うべき金額 各1万3289円

(2) 昭和57年9月から同年12月まで分(四か月)
生活費用の額 合計22万円
年金額 合計11万6264円
不足額 10万3736円
抗告人の分担額 6万9157円
相手方らの分担額 各1万7289円
抗告人が相手方らに支払うべき金額 各3万4578円

(3) 昭和58年1月から同年12月までの分(12か月)
生活費用の額 合計73万2000円
年金額 合計35万4500円
不足額 37万7500円
抗告人の分担額 25万1666円
相手方らの分担額 各6万2917円
抗告人が相手方らに支払うべき金額 各12万5833円

(4) 昭和59年1月以降の各月分(一か月当たりの額)
生活費用の額 約6万1000円
年金額 約3万円
不足額 約3万1000円
抗告人の分担額 2万0666円
相手方らの分担額 各5167円
抗告人が相手方春子に支払うべき金額 2万0666円

七 以上により、抗告人は昭和52年6月から昭和58年12月までの扶養料分担額の償還として、相手方春子に対し139万7000円(1000円未満四捨五入、以下同じ)を、相手方夏子に対し60万4000円を、また、昭和59年1月以降扶養料の分担として相手方春子に対し毎月2万1000円をそれぞれ月末に支払うべきものとする。

 抗告人は、将来の扶養料の給付を命ずる部分について終期を付すべきである旨主張するが(抗告理由5)、前記認定のとおり近い将来事件本人の要扶養状態が解消する見込みはないのであつて、抗告人らの扶養義務がいつ消滅するかということは不確定であるといわなければならず、仮に事情の変化(老人医療給付を含む。)が生じれば各当事者は必要に応じその段階で家庭裁判所に審判の取消又は変更を求めることができるのであるから(民法第880条)、本件の給付命令に終期を付すのは相当でない。したがつて、抗告人の右主張は理由がない。

八 以上によれば、相手方らの本件申立は、前記六の金員の支払を求める限度で相当として認容すべきであるから、原審判のうち相手方春子に対する金員の支払を命じた部分に対する抗告は一部理由があり、原審判はこの部分において変更を免れないが、相手方夏子については、原審判の金額は前認定を下回るから抗告人の本件抗告は理由がない。なお、抗告人は、本件を浦和家庭裁判所に差し戻すよう求めているが、事案の内容と資料からみて、家事審判規則第19条第2項に則り当裁判所において審判に代わる裁判をするのが相当であると認める。
 よつて、原審判のうち相手方春子に対する金員の支払を命じた部分を右のとおり変更し、相手方夏子に対する本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官小堀 勇 裁判官山崎健二 裁判官青栁 馨)
以上:6,783文字

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