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妻の不貞行為を原因として夫が別居した場合の夫の婚姻費用分担義務4

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平成26年 3月25日:初稿
○「妻の不貞行為を原因として夫が別居した場合の夫の婚姻費用分担義務3」の続きで、昭和42年9月9日大阪家裁堺支部審判(家月20巻6号29頁、判タ232号239頁)の結論部分を紹介します。
 50年近く前の判例で、一部文語体が混じっていますが、「婚姻費用分担義務にもとづく金銭給付と、配偶者の協力義務特にその一部たる貞操義務の誠実な遂行とは、表裏一体をなす性質のものであつて、妻の不貞が夫婦別居の動機と無縁であつたとしても、分担額の決定にあたつては、貞操義務上有責の妻の受くべき額は、無責の妻の受くべき額より削減されることを免れない」との記述が重要です。

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三 結論
(一) 先ず、「妻は同居不貞行為をなし、自ら家出したものであり且つ家出に際し3万5000円の手持金を持去つているので、夫はかかる妻に対し扶助料を支払う義務を負わない。」という夫の主張が正しいかどうかを検討する。

1 夫が妻の不貞行為であると指摘する前記各事実が果した不貞行為なりや否やの問題は、本訴たる離婚請求の訴訟手続により確定さるべき事項に属するが、訴の提起後の日事及び当該手続の各経過状況並びに生活費請求審判事件の特質及び本件当事者の性格を考慮し且つ同問題は本訴請求認定の不可欠的前提事項にして、しかも審判可能事項であるとの純理的且つ実利的観点に立脚して、前記判決の言渡確定を俟たず、敢えてここに裁定することにした。

2 審判の結果、妻と夫の父Aとの間に姦通の事実があつたと認定されたこと、妻と被用者Bとの間に不貞行為がなかつたと認定されたことは前記のとおりである。

3 夫は、妻が自ら家出して同居義務違反したというが、事実はこれに反する。却つて妻が家出をなした理由は前記認定のとおり、夫の単なる妄想にもとづき、被用者との不貞行為ありと断続的に責め苛み、更に暴力をもつて妻をして精神的にも身体的にも同居に堪えざるに至らしめたことこれである。さすれば、妻の家出の動機の生成の発端にこそ妻の軽卒な挙措はあるが、同家出の有責性は夫の側に存するというべきである。

4 認定にかかる妻と舅との姦通事実は、妻家出前に発生し、家出後に偶同父の告白により露見したもので、同父の死後始めてS誹謗の武器とされたものでTにとつて糟糠の妻ともいうべきものの生活費その他の請求を全部的に斥けんとの意図にでた藉口の事実にすぎない。さすれば、同姦通の事実は、離婚の訴提起の原因となりえても本件妻の生活費請求の全部的阻却のはなり能わないと断ずべきである。

5 しかしながら、妻と舅との姦通は、同女の家出の動機とは無縁であるにせよ、それ自体いささかも本件に消長を来さない事項ではない。夫の妻に対する生活保持義務にもとづく扶助料といい、婚姻費用分担金といい、そのいずれにせよかかる金銭給付は、配偶者の全幅的協力義務特にその一部なる貞操義務の誠実なる遂行と表裏一体をなすものである性質に徴し、扶助料額決定に当つては、貞操義務上有責の妻は具体的事情に即した相当一定額が、無責の妻の場合受くべき金額から削減されるを免れえないことは自明の事理であつて、本件の実情を勘案した結果、Sは無責の妻ならば受けるべき扶助料の3分の1を受けるを以て相当と解する。

6 TはSが家出に際し、金3万5000円(銀行預金2万円、郵便貯金1万5000円)を持出したと主張するが、銀行との取引なく、また後者のような低額預金の持出は、4同様生活費請求阻却の原因とはならない。

(二) 次に、「夫は二人の子を自分の手で養育するから引渡せと要求するにもかかわらず、妻が頑強にこれを拒み、その過失により子の一人を病死せしめるに至るような監護をなしたものであるから、夫はかかる妻に対し子の養育料を支払う義務を負わない」という夫の主張は正しいかどうかを検討する。

1 Tが真に、心から子の引取りを熱望し、愛情を以て養育監護を遂行しうる父として適格者でないことは、前件(一(二))における利己主義的冷酷な態度、本日までTが自ら進んで子等に金銭または物品を交付したことはなく、前記認定のように健康保険証不貸与の事実等を総合してこれを認定することができる。

2 長女がSの監護上の過失により病死するに至つたと認定すべき資料は存しない。

3 真にやむをえざる事由にもとづき夫婦が別居し、その一方が子の扶養しおる場合において、その以後において同人に事の監護者として不適格なる特段の事由の存しない限り、他の一方は扶養者たる他方に対し子の養育料を支払う義務を有するものであつて、本件Sには前記の不適格事由は存しないから、他の一方たるTはSに対し養育料支払義務あること明かである。

(三) 以上の次第により、TはSの扶助料及びその子等の養育費を含めた「婚姻から生ずる費用」につき分担せねばならない。そこで如何なる限度において負担すべきかについて検討する。
1 負債以外の婚姻費用負担限度の算定方式については、当裁判所は昭和39年以来「妻と夫の収入合計額を生活保護法による生活基準額の比率により按分し、妻に配分された金額からその実収入額を控除した残額を夫の分担額と定める。」との方式を採用し来つた。

2 ところで、上記方式は、本件の場合にあつては、三(一)のような特殊事情の存在により、その方式内容に修正を加えたうえ適用されなければならない。即ち、配偶者一方が有責な他方に対し負担する必要ある場合の婚姻費用分担額は、配偶者双方の収入合計を生活保護法による生活基準額の比率による按分して算出した有責配偶者の収入配分額を一定削減した結果たる金額から実収額を控除した残額である。

3 さてこの方式の適用にあたりTの収入については、その所得決定額にその20パーセントを加算した金額によることとした。Tの所得税法上の申告または調査回答と同人の所得実体との間に違算の存すべき蓋然性に着眼斟酌し、過少申告の誤謬に陥つた少数者の場合に準拠して算出するのが相当と思料したからである。而してTの昭和39年中の所得はマイナスであるから収入配分額の生ずる余地なく婚姻費用分担の義務は存しないこと論をまたない。40年1月以降の同人の事業所得はプラスとなつているので、前記修正方式に則り年次的に異る生活保護基準改定表に準拠して計算するとTの婚姻費用の分担額は次のとおりである。
 昭和40年1月から同5月まで○、同6月から41年3月まで毎日1909円、同4月から42年4月まで毎月1万3008円、42年5月以降毎月1万3743円

4 当事者が現に有する負債中、Tの大口取引先の倒産・工員賃金等の負債(約150万円)については、「家事債務に属しない夫の債務は対外関係においては夫だけがその責めを負うべきであり、夫婦関係(内部関係)においては、婚姻費用の範囲に属し、妻もまた同責めを分かち負うべきである。」との当裁判所の論がこの場合にも適用されるべきかどうかは、Tの本件審理に対する不誠実な態度により、事件の真実発見の審理が尽されなかつた現審理段階においては、にわかに断定し能わないところである。

 二の(五)2のSの負債については、本裁判官がつぶさに実見したSの生活状況から観て、同債務が右と異り、日常家事に関する法律行為により生じたものなること明でかあるからTも対債権者関係において連帯の責を免れない。

5 ところで、既に履行期の到来した婚姻費用分担債務(24万3000円余)は、申立人をして一時金の受領によりその貧窮状態の中で一息入れしめ、他面相手方をして全額ないし過重金額の支払によりその経済情況に打撃を蒙らしめないようとの顧慮から分割支払方法を採択した。而して昭和42年9月から別居期間中金1万3743円を毎月末日持参または送金して支払うべきである。(井上松治郎)

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