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妻の不貞行為を原因として夫が別居した場合の夫の婚姻費用分担義務1

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平成26年 3月18日:初稿
○「別居中の婚姻費用分担義務」に、「別居に至った原因について夫婦双方に責任がある場合は、同居中の生活程度を保持しうるに足る金額を基準として、これに双方の責任の度合いに応じて増減修正した金額が負担額になります(大阪家審昭和54.11.5家裁月報32-6-38)。この責任の度合いを決めるのは大変難しいところですが、別居に至った原因として妻にも半分責任があれば同居中の金額の半分しか請求できないことになります。」と記載していました。

○現在、妻の不貞行為を原因として夫が別居した場合の夫の婚姻費用分担義務が問題になっている事案があり、裁判例を調べていますが、「婚姻費用分担請求において,別居の主な原因が申立人(妻)の不貞行為にある場合には,婚姻費用として,自身の生活費に当たる部分を相手方(夫)に対して請求することは権利の濫用として許されず,同居の未成年子の監護費用に当たる部分を請求しうるにとどまるものと解するのが相当」とする平成20年7月31日東京家庭裁判所審判(家裁月61巻2号257頁)が見つかりましたので、先ず判例全文を紹介します。

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主  文
1 相手方は,申立人に対し,5万円を支払え。
2 相手方は,申立人に対し,平成20年7月1日以降当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで,毎月末日限り,2万5000円を支払え。

理  由
第1 申立ての趣旨

 相手方は,申立人に対し,婚姻費用として,毎月10万円を支払え。

第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば,次の事実が認められる。
(1) 申立人と相手方は,平成6年×月×日に婚姻した夫婦であり,平成7年×月×日,長女Cが生まれた。
(2) 申立人は,平成19年×月×日,単身家を出て相手方と別居した。
(3) 申立人は,平成20年×月から,住所地の賃貸マンションに居住し,同年5月には,Cが同マンションに転居してきた。Cは,同マンションから○○区内の中学校に通学している。
(4) 申立人は,平成20年×月から正社員として勤務し,月額17万6000円の基本給と3万円の職能給を得ている(年額247万2000円)。相手方は,会社員として稼働し,平成18年度は351万4400円の給与収入を得ている。

2 申立人は,相手方に対し,婚姻費用として,毎月10万円を支払う旨の審判を求めているところ,相手方は,申立人は不倫をして勝手に出ていって,不倫相手と同居しているのであるから,婚姻費用は支払わないと主張する。

 よって検討するに,一件記録によれば,申立人が平成18年×月から勤務していた会社には,同僚としてDがいたこと,申立人は,平成19年×月×日,Dと二人でプリクラを撮影しているが,その中には申立人がDの肩に手を回して抱き合うポーズをとっているものや,口吻を交わしているものがあること,申立人は,平成19年×月×日に家を出た後,同月×日ころから,Dが賃借しているアパートで暮らすようになったこと,申立人は自分の衣類ばかりでなくDの衣類も一緒に洗濯して上記アパートのベランダに干すことをしていたことが認められ,これらによれば,申立人は,遅くとも平成19年×月にはDと不貞関係を結んでいて,別居後はDと暮らしていたものと認められる。

 申立人は,プリクラの写真は,Dを含めた会社の仲間4人と飲みに出かけ,罰ゲーム的なものとしてふざけて撮ったものであると供述するが,他の同僚の目の前で異性である同僚と口吻を交わすことなど,罰ゲームとしてでも考えられないことというべく,申立人の上記供述は信用できない。申立人は,相手方の行動が常軌を逸していて困り果てて会社の同僚に相談したところ,Dのアパートに避難する方法を同僚が考えてくれて,Dもこれを快諾し,アパートを出て知人宅に移ってくれたと供述するが,職場の元同僚のために自分のアパートを明け渡して自分は知人宅に泊まることを半年以上にもわたってすることなど考えられないから,不合理な内容であるというほかなく,到底信用できないものである。

 以上によれば,別居の原因は主として申立人である妻の不貞行為にあるというベきところ,申立人は別居を強行し別居生活が継続しているのであって,このような場合にあっては,申立人は,自身の生活費に当たる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず,ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるものと解するのが相当である。

3 未成年の子の実質的監護費用額を算定するに当たっては,申立人と相手方の総収入を元に,公租公課を税法等で理論的に算出される標準的な割合により算出し,職業費及び特別経費を統計資料に基づいて推計された標準的な割合により算出してそれぞれ控除して基礎収入の額を定め,その上で,相手方と子が同居しているものと仮定すれば子のために充てられていたはずの生活費の額を生活保護基準及び養育費に関する統計から導き出される標準的な生活費指数によって算出し,これを申立人と相手方の基礎収入割合で按分し,相手方の分担額を算出するのが相当である。

 まず,双方の基礎収入についてみるに,義務者である相手方は351万4400円の給与・賞与所得を得ていて,その所得額に照らし,控除すべき公租公課,職業費及び特別経費の割合を総収入の60%として算出すると,相手方の基礎収入は140万5760円となる。権利者である申立人は,247万2000円の給与所得を得ることができるとみることができるから,その所得額に照らし,控除すべき公租公課,職業費及び特別経費の割合を60%として算出すると,申立人の基礎収入は98万8800円となる。

 次に,Cは14歳以下の子であることからその標準的な生活指数は親を100とした場合55とするのが相当であり,相手方がCと同居しているものと仮定してCに充てられたはずの生活費の額を算定すると,以下の計算式のとおり49万8818円となる。
(計算式)
 140万5760円×{55÷(100+55)}=49万8818円

 そして,上記の金額を,申立人及び相手方の基礎収入の割合により按分して相手方の養育費分担額を算定すると,以下の計算式のとおり29万2836円となり,これを月額にすると2万4403円となる。
(計算式)
 49万8818円×{140万5760円÷(140万5760円+98万8800円)}=29万2836円
 したがって,相手方の負担すべきCの実質的監護費用は,本件に現れた一切の事情を勘案して,月額2万5000円とするのが相当である。

4 以上の次第であって,相手方は,申立人に対し,婚姻費用の分担として,Cが申立人と同居した平成20年5月から,申立人と同居又は婚姻解消に至るまで毎月2万5000円の支払をなすべき義務があるというベきである。

5 よって,主文のとおり審判する。(家事審判官 齋藤大巳)
以上:2,860文字

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