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婚約成立後守操義務違反による結婚式費用等損害認容判例全文紹介2

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平成26年 1月 8日(水):初稿
○「婚約成立後守操義務違反による結婚式費用等損害認容判例全文紹介1」の続きで、裁判所の判断前半です。

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第三 当裁判所の判断
一 前記前提事実並びに《証拠略》によれば、次の事実が認められる。

(1) 原告(昭和63年生)は、歯科医院に勤務していたが、平成19年夏、印刷会社に勤務していた被告(昭和59年生)と知り合い、被告から結婚を考えているから真剣に付き合ってほしいと言われ、結婚を意識しながら被告との交際を続け、平成21年12月には、被告の実家で、被告から「何でも話し合える夫婦になろう。絶対嘘はつかない家庭にしよう。一生大事にする。」との原告に宛てた手紙を被告の実家で読んでもらい、被告から結婚の申し込みを受けたものと受け取った。その後、原告は、被告との間で、結婚式のことや、将来のこと、子供のこと、家族のことなどを話し合った。

(2) 被告は、平成22年始めころ、原告の実家を訪れ、原告とその両親の面前で「結婚させてください」と原告との婚姻を申し入れ、さらに、同年7月にも、原告の実家を訪れ、原告とその両親の面前で、「結婚させて下さい。」「一生大事にします。」と原告との婚姻を申し入れ、原告の両親から婚姻の承諾を得た。

(3) 原告と被告は、平成22年夏ころから、結婚式場を探し、同年8月29日には佐賀市内の結婚式場を予約し、式場の予約金5万円を折半して式場に支払った。原告と被告は、式場の予約後、それぞれ勤務しながら結婚式の準備をしたが、平成23年2月には、双方の両親と共に、佐賀市内の料理店において、結婚に向けた話し合いを持った。

(4) 原告と被告は、同年4月、原告の婚約指輪と二人の結婚指輪を購入した。

(5) 被告は、同年5月22日、結納をし、結納セット等を購入して原告の実家に持参し、結納金100万円を原告の両親に手渡した。

(6) 原告と被告は、結婚後の新居も探し、被告の実家に近いアパートを新居に決めた(アパートの契約費用は被告が負担した。)。原告は、新居が職場から遠いこともあって、同年6月には職場を退職した。

(7) 原告と被告はそれぞれ結婚式や新婚生活の準備をした。原告は、別紙「結婚費用一覧」のとおり家具・電化製品等を購入し、実家から新居へ引越をした。

(8) 原告と被告は、同年7月7日に婚姻届をし、同月24日には100名を超える招待客を迎えて結婚式を挙行し、同月26日から同月29日にかけて新婚旅行に出かけた。なお、新婚旅行費用は被告において負担した。

(9) 原告は、新婚旅行から戻り新婚生活を送っていたが、同年8月22日、被告が仕事に出かけた後、被告が置き忘れていった被告の携帯電話を見たところ、別紙「女性とのメール内容」記載のメールを含む、被告とある女性との間で交わされた多数のメール(その内容は、大半は被告が当該女性をホテルに誘うなど会うことを目的とするものであり、同年6月17日以前のもの、同年8月19日以降のもの、この間の期間のものなど上記別紙のメール以外のものも多くあり、上記別紙のメールは原告において見たメールのうちの携帯電話で写したものにすぎない。)を発見し、この女性との間のメールのほか、被告が別のサイトで女性になりすまして他の女性とメールのやりとりをしたり、さらに、メールは消えているものの履歴だけが残っているものも見つけた。原告は、これらのメールを発見したものの、そのメールの内容は余りにも酷くて読むに耐えず、被告から裏切られたと思い、惨めで悲しくて涙が止まらなかった。

(10) 原告は、前同日、被告の帰宅を待ち、被告に事実関係を確認すると、被告は別紙「女性とのメール内容」のメールをやりとりしていた女性と性的関係のあったことを認めた。原告は、被告が不貞行為について反省するような態度を示さなかったので、不貞の事実を確認すると、その場で、新居を出て、車で熊本に住む兄夫婦方に赴き、上記事情を話した。

(11) 原告は、以後、被告の住む新居で生活することはなく、事実関係を知らない両親に心配させないようにするため、熊本の兄夫婦方と実家を往復する生活を送り、ガソリン代、ビジネスホテル宿泊代、高速道路料金等の費用については被告から生活費のために渡されていた被告名義の預金通帳から金員を引き出して遣ったが、この引き出しについては被告の了解は得ていなかった。原告が同年8月28日から同年10月28日までの計五回にわたり引き出した金額は、合計48万2000円であった。

(12) 原告は、前記のとおり、結婚式後わずか一か月で、被告の不貞が発覚し、被告に裏切られたことを知り、強い精神的衝撃から体調を崩し、全身に蕁麻疹が広がり、不眠状態が継続したため、同年9月12日に病院を受診したところ、精神的なストレスが誘因であるとの診断を受け、治療を受けている。

(13) 原告は、被告の背信行為を知り、被告との婚姻生活を継続することは不可能と判断し、被告に離婚届出用紙を送付したところ、被告がこれに応じたため、同年11月11日、被告との協議離婚が成立した。

(14) 原告は、同年11月7日、被告から前記家具等の引き取りを求められたため、これを実家で預かってもらった後、これらについては被告との交際や結婚生活を思い出し嫌悪感を抱いてしまうので将来において使用することはとてもできなかったため、上記家具等を一括して引き取ってくれる業者等を探し、平成24年2月12日、最も高値で買い取ってくれた業者に50万円で売却した。

二 婚約の成立時期について
 婚約は、原告と被告との間に将来結婚しようという合意があれば成立し、その成立要件として結納や婚約指輪の交換などの儀式までは必要でないと解すべきところ、前記一で認定した事実によれば、被告が原告の両親に対し原告との結婚の承認を得た後の平成22年8月29日には、原告と被告は結婚式場の予約をしたのであるから、この時点で、原告と被告との間で将来結婚しようとの合意が客観的・外部的にも明確になったということができる。
 そうすると、原告と被告との間の婚約は、遅くとも平成22年8月29日には成立したとみることが相当である。

三 被告の原告以外の女性との性的関係について
 前記一の認定事実によれば、被告は、婚約成立後の平成23年6月17日から同月21日にかけて、松子という名前の女性に対し、性的関係を持つことを執拗に誘っていることが認められ、別紙「女性とのメール内容」のメールのやり取りの内容によれば、被告と当該女性との間に、このメールのやり取り時期よりも前に性的関係があること、しかも、性的関係を持った回数は、被告の自認する平成23年5月上旬の一回に止まらず、相当な回数であることが十分推認される。そうすると、被告は、原告との婚約成立後に当該女性との間で相当な回数の性的関係を持ったことが認められる。

以上:2,869文字

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