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1500万円支払による認知請求権放棄も無効判決-結論

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平成24年 5月30日:初稿
○「1500万円支払による認知請求権放棄も無効判決-母主張」を続けます。今回は、判決の理由です。
末尾に、「A子が前訴及び本訴を提起した目的が控訴人とその家族を困惑に陥らせ多額の金員を取り上げることにあつたことを認むべき証拠のない本件においては、A子は信義に反する本訴提起によつて控訴人とその家族に迷惑を蒙らせることになる(しかし、それはことの性質上やむを得ない)けれども、これを目して被控訴人の認知請求権ないし、A子の法定代理人たる地位の濫用とするには至らない。」とあります.

○「信義に反する本訴提起」と述べ、これによって「控訴人とその家族に迷惑を蒙らせることになる」ことを認めながら、それでも認知請求は権利の濫用にはならないとのことで、如何に多くの金員を支払っても、認知請求権は放棄できないとの裁判所の確固たる意思を感じさせる判決です。
私としては腑に落ちないところもありますが,これに対する感想等は、別コンテンツで述べます。

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理由
一 当裁判所も、被控訴人の認知請求を正当と認めるものであるが、その理由は次のとおり付加訂正する他、原判決理由説示と同一であるから、これをここに引用する。〈付加訂正部分略〉

 (控訴人の当審における主張について)
 まず、控訴人は、A子が被控訴人の法定代理人として控訴人と「被控訴人の認知請求を放棄する」あるいは少くとも「法定代理人としてA子が被控訴人を養育監護している間は再び認知請求をしない」旨の合意をしながら、右合意に反する本訴請求は失当であると主張するので、この点について判断する。

 〈証拠〉を総合すると次の事実が認められ右認定を左右するに足る証拠はない。
 被控訴人の法定代理人A子は、被控訴人を出産後控訴人との情交関係が続いている(会社役員であつた控訴人はその間A子をマンシヨンに住まわせ、月々20万円位の生活費を支給していた)は、控訴人に対し被控訴人の認知を積極的に求めたことがなかつたのに、昭和44年11月頃の右A子による控訴人方放火未遂事件を契機に、控訴人との右関係が断たれるに至ると、被控訴人の認知を求めて、名古屋家庭裁判所へ調停の申し立てをし、これが不調となるや、同年12月名古屋地方裁判所へ認知請求の訴(昭和45年(タ)第155号事件)を提起した。

 控訴人はA子との関係が家族に知れたことや、社会的地位、信用等を慮つて、これ以上A子と関りを持ちたくない気持から、訴訟代理人を通じて和解の勧告を求め、双方訴訟代理人間で折衝の結果、昭和46年11月控訴人は被控訴人に対し金1500万円を支払い、A子は控訴人に対し「私自身、私の当時の状況からして私の主張の誤りであることを認め、この際訴訟を取り下げ、被控訴人の成年に至るまでは勿論、その後においても再び迷惑をかけないよう処理することを確約する」との記載のある訴訟の取り下げについてと題する書面及び、「被控訴人が控訴人の子であると認知されることがあつても、控訴人につき相続が開始された場合、相続遺留分を放棄する」との記載のある遺留分放棄書と題する書面を差し入れ、右訴は取り下げられ終了した(この訴を以下前訴という)。しかるに特別事情の変化があつたわけではないのに3年を経ない間に再び本訴が提起されるに至つた。

 右認定の事実によれば、A子は控訴人と被控訴人の認知請求権を放棄する旨の合意をしたとみるべきであるが、子の父に対する認知請求権は身分法上の権利であり、民法がかかる権利を認めたのは非嫡の子に父に対し法律上の親子関係を確定することを得させてその利益を図ろうとしたことにあるのであるから、これを放棄することはできず、放棄しても無効である(最高裁判所昭和37年4月10日判決民集16巻4号693頁参照)。

 よつて、被控訴人が認知請求権を放棄したとの主張は採用できない。また、認知請求権の性質ならびにこれを認めた民法の法意が右のごとく解せられるべきものである以上、被控訴人の法定代理人たる母A子が認知請求の相手方たる控訴人と認知請求権の行使に制限を加える合意をしたからといつてその合意によつて子たる被控訴人が拘束されるものと解することはできないから、上記合意をA子が被控訴人を監護養育している間は認知請求をしない旨の合意と解してもこれを有効と解することはできない。この点の控訴人の主張も採用できない。

 しかるところ、控訴人はさらにA子のした上記示談は、「A子において被控訴人の法定代理人として再び認知の訴を提起しない」趣旨で、A子が実質上は本人として控訴人と合意したものと解せられると主張するので、さらにこの点の検討を加える。

 なるほど、上記示談はA子は法定代理人といいながらも実質的には本人として契約したものであり、控訴人主張の趣旨の合意とみる余地があるけれども子の認知請求権がその母のした合意によつて喪失し或いはその行使に制限を加えられることがないと解する以上右合意はその母の法定代理人としての権限行使を制限することにはならないと解すべきである。

 そう解しなければ、任意の合意のみによつて親権者としての法定代理権の範囲を限定し、或いはその行使に自ら制約を加えひいては子の認知請求権の行使を制限することになり、親権の制度を認めた趣旨に反することとなるからである。右と異なる見解に立脚する控訴人の前記主張は採用できない。

 次に、本訴提起は権利濫用であるとの控訴人の主張について判断する。
 たしかに、A子が前記の合意をして1500万円という多額の金員を受領して、これを自ら管理している(このことは弁論の全趣旨により明らかである)のに、それより3年も経ないで、本件訴を被控訴人の法定代理人として提起したのは信義にもとる嫌いのあることは否めないが、認知請求権の性質が前示のごときものであることに照らし、そのことだけで直ちに本訴提起を権利の濫用と断ずべきではない。

 よつて、さらに右示談時の事情をさらに仔細に検討するに、〈証拠略〉によると、前訴における控訴人の訴訟代理人は認知請求権の放棄は無効とするのが従前の判例であることを認識したうえで、示談により被控訴人に訴を取り下げさせることで事件を早期に解決することが控訴人のために得策であるとの判断から、被控訴人の訴訟代理人と折衝したところ、被控訴人の訴訟代理人もA子が生活費にも不如意である実情を察して、A子には将来の認知請求の妨げにはならないと説明して控訴人側の提案に同調するよう助言し、A子もその説明に納得して応諾し、その結果控訴人主張の合意ができた。

 以上のとおり認められるのであつて、右認定の事実及び前認定の当時における控訴人の社会的地位、経済力、A子に対する生活費支給の実情を併せ考えれば、A子が前訴及び本訴を提起した目的が控訴人とその家族を困惑に陥らせ多額の金員を取り上げることにあつたことを認むべき証拠のない本件においては、A子は信義に反する本訴提起によつて控訴人とその家族に迷惑を蒙らせることになる(しかし、それはことの性質上やむを得ない)けれども、これを目して被控訴人の認知請求権ないし、A子の法定代理人たる地位の濫用とするには至らない。
 よつて、この点の控訴人の主張も採用できない。

二 そうすると被控訴人の本訴請求を認容した原判決は相当であつて本件控訴は理由がないので棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法95条89条を適用して主文のとおり判決する。
(綿引末男 高橋爽一郎 福田晧一)

以上:3,112文字

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