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合意による性関係後妊娠・中絶した女性の保護程度1

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平成23年 6月24日:初稿
○「男女関係の類型と法的保護程度雑感」で、男女関係が継続した後に関係を解消した場合、一方に損害賠償請求権が発生する即ち法的保護の対象となるかを、男女関係程度を10類型に分けて私なりに検討しました。そのうち性関係を伴う友人(いわゆる非限定セックスフレンド)としての関係は法的保護に値せず、性関係を伴う恋人同士(限定された性関係)としての関係はケースバイケースであると説明しておりました。

○上記記事では、関係解消に伴う損害賠償の問題を検討しましたが、男女関係が性関係を伴うと当然妊娠の可能性が生じます。妊娠しても関係が進展せず解消した場合、中絶に至る例が殆どですが、この合意による性関係によって妊娠・中絶した場合、妊娠・中絶当事者である女性が、この妊娠・中絶自体についてどの程度法的に保護されるかは、単なる男女関係解消による法的保護の問題とは別に考える必要があります。

○男性と交際中に妊娠・中絶し、交際が解消した場合、女性が男性に損害賠償請求出来ませんかとの相談は日常茶飯事的にあります。この場合、結婚の約束があった、或いは明確な約束はなくても結婚を前提としていたから、それを理由無く解消することで精神的苦痛を受けた、更に、交際中に妊娠・中絶も経験したのでその精神的苦痛はより大きいと、関係解消に伴う損害賠償請求が出来ないかとの相談が大部分で、妊娠・中絶自体で損害賠償請求出来ないかとの相談は余りありませんでした。

○ところが、平成21年10月15日東京高裁判決(判時2108号57頁)では、妊娠・中絶自体で、それに伴う損害賠償請求として女性が男性に対し治療費・慰謝料等合計905万円を請求し、114万円の請求が認められた一審平成21年5月27日東京地裁判決が維持され、控訴が棄却されました。男女関係の法的保護如何の問題を考える参考になりますので、以下に事案等を紹介します。

A女(昭和49年生まれ)とB男(昭和44年生まれ)は、結婚相談所の紹介で平成19年2月3日初めて会って交際を決め、同月12日初デートをして、B男宅でA女が贈ったチョコレートを食べ、同月16日と23日に夕食後、B男宅に宿泊し合意の上性行為をしたが、いずれの際もB男は避妊具を使用せず膣外射精をし、3月10日夜にB男宅に宿泊したA女は洗濯機内部屋着からB男の二股交際を疑い、性行為はせず、同月11日にはA女は他の男性と見合いをしB男は、同月12日結婚相談所にA女との交際終了を報告した。

Aは、同年5月24日病院で妊娠を確認し、Bに連絡し同月26日A・B面談して連名の人工妊娠中絶同意書を作成し、BはAに30万円を手渡し、Aは同月29日中絶手術を受け、9月16日に中絶した子の納骨をした。この間、Aは度々Bに対し連絡メールを送ったがBは無視することが多かった。

訴えを提起したAのBに対する請求は以下の通りでした。
Aの被った損害
中絶選択経過における精神的苦痛慰謝料200万円
中絶手術に伴う肉体的苦痛慰謝料200万円
中絶手術に伴う精神的苦痛慰謝料200万円
後遺症による損害300万円(Aは中絶手術によって心身症を発症し,不眠・うつ状態、適応障害等通院中)
診療等による損害約68万円
逸失利益約155万円
弁護士費用約83万円
の損害の内B負担部分は905万円

これらの損害をAがBに請求する根拠としては、
①妊娠は男女の性行為によって生じるもので,その結果について男女共同責任がある
②妊娠・中絶で女性の身体・精神に打撃を与えるところ、B男は確実な避妊方法をとらず性行為をして、且つ、妊娠判明後、Aと真摯な協議を行わなかったこと
③男性が妊娠・出産にたいする周到な配慮と準備をしないまま避妊せず性行為を行うことは男性の女性に対する暴力に等しいこと
④性行為を行う際男性は、原則として女性が妊娠を望んでいないことを前提に避妊義務があるところその義務を怠ったこと
等々を上げました。

これに対しBは、
①中絶はあくまでA自らの意思で決めたことで、男性は意思は介在する余地が無い
②Aは自ら妊娠可能時期を知っているのにBに対し避妊を求めなかったのでBを非難する資格はない
③合意に基づく性行為が暴力になることはありえない
等々の理由で、損害賠償義務はないと主張しました。

以上:1,743文字

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