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扶養的財産分与として妻にマンション賃貸を命じた例4

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平成22年 5月31日(月):初稿
○平成21年5月28日名古屋高裁判決(判時2069号50頁)の論点は多岐に渡りますが、平成11年12月に代金約2800万円、諸経費約280万円の合計約3080万円を費やして購入したマンションの妻Aの持分1000分の117の帰属が問題になりました。一審では、夫婦共有と認め、住宅ローン、管理費・光熱費を全て夫Bが負担していたので夫Bに分与を認めていました。

○妻Aは控訴審では、以下の理由で、この妻A名義持分はAの特有財産と主張しました。
・購入代金の内350万円以上は、結婚以前からの妻の預金、平成8年6月退職後の失業保険、厚生年金基金の一時金など妻の特有財産から支出されている
・妻名義持分1000分の117はその対価として妻の特有財産として取得したものである


○これに対し夫Bは、以下の理由で、夫婦共有財産であると主張しました。
・平成6年10月婚姻しその後平成8年6月に退職するまでにその給料により形成された預金、厚生年金一時金は妻の特有財産ではない
・失業保険も婚姻後に支給されているので妻の特有財産ではない
・仮に婚姻以前の妻Aの預金等がマンション購入資金に充てられたとしても、その預金等が購入時まで残存したのは夫Bの給料によって妻の生活が維持された結果に過ぎないから妻の特有財産には該当しない
・別居時のマンション時価は2000万円のところ住宅ローン残高は2465万円でその評価額はマイナス465万円でその半額の約232万円は夫から妻に分与される他の財産から控除されるべき


○この両者の主張に対し、平成21年5月28日名古屋高裁判決は次のようにのべ妻に軍配を挙げました。
・妻Aは昭和56年3月にD社に入社し,婚姻後の平成8年6月に退職し,退職金約303万円を得、そのほか同社から受給した賞与約200万円、厚生年金基金約62万円、財形貯蓄解約金約188万円等の大半を定額貯金にしていた
・マンション購入総費用3080万円の内2680万円は夫Bの住宅ローンで、その余の約400万円の殆どは妻Aの定額貯金を解約したまかない、妻B持分1000分の117として登記した
・妻AのD社入社が昭和56年、退職時平成8年で勤務期間の大半は同居前の時期であること、婚姻後取得した失業保険金も同居以前の妻Aの就労に対する対価であること、家事・育児はもっぱら妻Aが行い、妻の就労に対する夫の貢献は極めて僅かであったことから妻名義財産で取得した妻持分はその特有財産に当たる


○夫は妻の婚姻前からの預貯金が婚姻後維持されたのは夫の給料で生活して手をつける必要がなかったからで、共有財産と評価出来る主張したが認められませんでした。判決は、婚姻以前の労働の対価に相当するものは全て特有財産と評価すべきとしていますが、これは当然のことと思われます。退職金にしても失業保険金にしても厳密には、婚姻以前の期間と婚姻後の期間に按分比例して婚姻後期間の対価相当額は共有財産にしても良さそうなものです。

しかし本件では家事・育児を夫が殆ど協力していないと認定し、婚姻後の妻の就労対価も特有財産と認めているところが注目されます。この論理では、共稼ぎ夫婦は、夫が家事も平等に分担しないと、婚姻期間中でも妻の就労対価が共有財産にならなくなります。家事を殆ど妻が行う場合、妻の稼ぎには、夫の貢献がないとのことで、妻の特有財産になります。これまでの共稼ぎ夫婦では、夫の家事分担率は大変低いものが多く、夫が家事分担をシッカリこなしていないと妻の稼ぎを共有財産と主張できず,妻の稼ぎによる預金は財産分与の対象にされない可能性も出て来ます。
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